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前編

   

「タカシ! またあんたは、こんな成績とってきて……。あたしゃ情けないよ」

 母親の小言も鬱陶しいが、悲しそうな表情を見せつけられる方が、タカシには辛かった。

 彼だって、好き好んで成績を悪くしているわけではない。いくら頑張っても良い結果にならないだけだ。


 タカシの高校は中高一貫の私立であり、世間でも名の知れた進学校。年に何回か行われる実力テストで上位百人以内ならば、一流大学に合格できるという。

 大学受験まで一年以上あるが、逆に言えば、もう来年は受験だ。いつも実力テストでは下から百位前後だが、一度くらいは上から百人に入ってみたいとタカシも思う。


「見てごらん。ケンジくん、また上位百番に入ってるわ」

 個々のテスト結果と同時に渡される、成績優秀者百人のリスト。テストの出来は悪くても性格は真面目なので、タカシは素直に、それも一緒に母親に見せていた。

「あんたも昔は、ケンジくんみたいに神童扱いだったのにねえ。一体どこで差がついたのか……」

 母親が言っているのは、小学生時代の進学塾の話だ。タカシとケンジは、小学校は別だが塾は一緒。当時はタカシも成績が良く、『ツートップ』と称されて「君たちは合格間違いなし!」と言われていた。

 今思えば、あの頃がタカシのピークだったのだろう。評判通り二人一緒に、私立の有名中学に進んだのだが……。

 いつのまにかケンジと差がついてしまった。どうしてなのか、タカシ本人が知りたいくらいだった。


「あんた、今でもケンジくんと友達だろ? 勉強のコツ、聞いてきたらどうだい?」

 クラスは違うので特に親しい付き合いはない。それでも中学入学前からの友人ということで、廊下で顔を合わせる機会があれば世間話くらいはする仲だ。つい先日も、ちょうど放映中の深夜アニメの話で盛り上がったものだ。

 とはいえ、学業のレベルが違うのはお互いに感じており、その方面の話題は何となく避けていたのだが……。

「うん、わかった。次に会った時に聞き出してみる」

 タカシは母親の言葉を受け入れて、そう約束するのだった。

   

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