第一話:変革と変質の違いを答えなさい。
※異世界トリップとなります。苦手な方はご注意下さい。
人間、誰だって変身願望はある。少なからず。それは時には変革願望とも言い換えられて、「こんな職業につきたいなぁ」から、「こんな世界だったら良いのになぁ」などなど。
人間、誰だって異なるモノへの憧れがある。期間的なものにしろ、継続的なものにしろ。お前等は意思が薄い?中だるみも大概にしろ?真剣に将来を考えろ?
(正直、耳にタコですよ。)
(口で言われたところで間近に迫ってる将来とやらに実感が持てない場合は、どうすりゃ良い
かこそを教えて下さいよ先生。)
なんてことをぶつくさ考えている佐々木樹笹という少女にだって、ある。ちなみに彼女は小学生の頃、『自分の名前の由来を知ろう!』なる授業が大嫌いだった。というか由来を聞かれること自体が嫌いだ。「ささき・きささ」言葉遊びだ。これは両親も笑って認めている。
話は逸れたが、人間、変化への願望がある。変化が無い日常は退屈であるし、ただ生きているという感が否めない。で、あるから。ちょっとした変化にだって気付けば心躍るものだけれど、
「こんな劇的変化は望んでおりません。断じて。決して。一ミリたりとも。」
一息で言い切って樹笹は俯いた。気を落としたというよりは握った拳がブルブル揺れていて、怒りに震えているだろうことが一目で分かる。樹笹は自分の服装を見た。見慣れた、制服。学生は学生という職業なのだということを、痛感するほど足繁く通った校舎があるはずだったのだ。制服を辿って、実用性を重視してローファーを避けた運動靴。その、下に。
あの煤けた廊下は何処へいったのか。(生い茂った草を踏むなんて久しぶりですよ、)
あの埃っぽい空気は何処へいったのか。(緑の匂い。)(ていうか登って来るな蟻!)
「世界丸ごとの変化なんて望んでなーい!!」
声が登った空は薄い緑色だった。雲は白かったけれど、青い空は欠片も見当たらなかった。(私の平凡を返してくれ!)太陽は見慣れた眩しさだったけれど、声が響いた空間は広過ぎた。清々しいほどの野原だった。
「あー…とりあえず。まあ、ようこそ『この世界』へ?」
部活に勤しむ生徒たちの喧騒はなく、樹笹の声につっこみを入れてくれる友人の姿もなく、ただ一人の男だけが苦笑しながら。そう、言った。
一体何年ぶりなんだろうか?と自分でも分からない長編に挑戦です。