いせかいと幻のカリカリ、ついに見つかる?
俺は人間がいう「いせかい」というのを探しに、相棒に乗って、野良仲間である八兵衛と一緒に旅に出た。
旅に出ている間、相棒の充電が切れそうになったり、野良ネコ保護のババアに野良ネコと間違いられ追いかけられて、とっても大変だった。
餌はその辺にあるネコ用の餌を食べて飢えをしのいだ。
「いせかい」という物には、なかなか巡り合わなかった。
結局俺らは、ふりだしに戻ってきてしまった。
仕方なく、八兵衛とは別れて俺は家で寝ていた。
「幻のカリカリ」そんなものは無いのでは?と思うようになり、俺は相棒に乗る事も無くなった。
俺はなんだか元気がなくなり、飼い主である、まるみにも心配をかけて、俺は病院に連れてかれた。
沢山の動物が、病院に来ていて、聞き覚えの無い動物の声が部屋に響いている。
隣に座っている人間が抱えている物の中から、見知らぬ猫が俺に話しかけてきた。
「やあ、見ない顔だな」
「あぁ、あまり病院へは来た事が無くってな、初めて来たんだ、いや、一回だけ連れて来られたな、今の飼い主とは、別の人間が俺を連れて、ここじゃない、別の病院へ行ったんだ、その時俺は、大事な睾丸を取られた記憶がある、寝て起きたら無かったんだ、ショックだったぜ」
「じゃあ、あんさんはここが別名「いせかい」って言われてんの知らねーのか?」
「いせかい?」
「あぁ、いせかいだ、ここは「きずな どうぶつびょういん」だが、別名「いせかい」だ」
「いせかいってここかよ」
確かに見渡すと「いせかい」のような、イヤ、そんなことは無さそうだな。
「で、なんで「いせかい」なんだ?」
「ここがなんで「いせかい」と言われてるかって?、ここは、いせかい…つまり異なる世界へ行く扉が開くと言われている、この病院は「いせ」っていう「せんせい」に当たるか、「かい」っていう「せんせい」に当たるかで、運命が別れるからだ。」
「いせ?かい?」
「人間の呼ばれ方で、「いせせんせい」と「かいせんせい」という呼ばれ方がある、それで運命が二つに別れ…おっと俺が呼ばれちまったな、じゃあ、お先!」
何だったのか分からないまま、隣にいた人間は、猫を連れてどこかへ消えた。
「はぁ、いみわからん」
その後、何分かして、俺の名前が呼ばれ、まるみが立ち上がり、俺をどこかへ連れてった。
「伊勢先生の所へどうぞ、お入り下さい」
まるみは部屋に入り、俺を連れて来た時に入れてた物から俺を出した。
そこで俺は、女性の姿を見た。
「今日はどうしました?」
「うちの猫がご飯を食べなくなってしまって、気になったので連れてきました。」
「そうですか、じゃあちょっと様子見てみますね」
「はい」
俺は黙って二人の会話を聞いていた。
「んー…」
その時だった、目の前に何かが現れた。
それは紛れもない、まるみにもついてるが、まるみより大きい何かだ。
たしか男にはボリュームがない、あれだった。
なるほど、ふみふみしたくなる。
これはなんだ、オスの本能的な何かか?
俺は猫なのに…
そうこうしているうちに、また俺は俺を入れてきた物へと再び入れられた。
もう一度、さっきの部屋へ連れて来られた。
「よう、さっきの新人」
「ん?」
「こっちだ、こっち」
俺は声が聞こえた方を向き、よく見えないが、なんとなく匂いでそいつがいる事に気付いた。
「さっきの」
「いせかいの謎、分かったか?」
「いや」
「おまえは、今誰に見てもらったんだ?「いせせんせい」って方か?俺は「かいせんせい」ってやつだったぞ」
「その違いってなんかあるのか?」
「男か女かの違いだけだ、しかしだな、男か女かで全然違うぞ、扱いとか、ふみふみしたくなるやつがあるか無いかだ、男はボリューム無いからな、やわらかいのは女だけだ」
「あぁ、あれか、たしかにふみふみしたくなるな」
「おま・・・まぁしょうがない、俺は今日、「かいせんせい」ってやつで、扱いは少し雑で、なんだか損をした気分だ」
「俺はべつに」
「いせせんせいは女で、優しくふみふみしたくなる奴が大きいのに対し、かいせんせいは男で、少し雑に扱うし、全然ふみふみしたい気持ちが出てこないんだ、その違いだよ、全く羨ましいな」
「なんだ、そんなことか」
「結構大事だぞ」
「ふーん」
その後そいつは病院から出て行った。
俺はというと、病院でまるみがなにか貰って来た。
「今日は、なんか試供品もらったよ、まるぴ、後で食べてね、あっ!高級品じゃん!」
俺はその言葉が理解できなかったが、「いせかい」に行けた事で満足した。
家に帰り、飯時に出されたのは、とんでもなく美味いカリカリだった。
「まるぴ、今日の餌どう?高級品の試供品らしいよ「幻フーズ」が出してるカリカリって最近出始めた猫用の餌らしいよ、しかし、値段高かった!まるぴは気に入ってるし、餌は変えなくて良いよね」
ん?聞き間違いか?
幻フーズ?なんだそれ
あれ?「いせかい」は病院の「せんせい」ってやつで、そこから貰って来たのが「幻フーズ」だと?
なんだか俺は、ものすごい疲れてきた気がした。
俺が探し求めた「いせかい」と「幻のカリカリ」って「きずな どうぶつびょういん」の「せんせい」っていう男女と「幻フーズ」っていう所のカリカリかよ…。
はぁ、今までの俺って何だったんだ?
もう良い…布団で休もう。
俺はしょんぼりした顔で、哀愁漂う布団へ転がった。
いつの間にか、眠ったらしい。
猫は眠りが浅いんだが…。
なんだ、ここは夢の世界か?
いや、とうとう俺はたどり着いたらしい。
本当の「いせかい」に。
景色がまるで違う…
そこは正真正銘「異世界」だった。
END