2、ライファの裏の商人
多種族都市ライファで、力を使った分の栄養補給を済ませた私達は、食料を買ったことで減った旅費(水の長老から貰った)を補充するために、裏の商人の元へ向かった。
ライファの裏の商人が隠れている場所は昔来たときと変わってなかったけれど、店の外装が変わっていたからきっと経営者も変わっているでしょう。
一体何年前のことだったかしら? もしかしたら、ネロになる前の話かもしれないわね。
……今はそんなことはどうでも良いのよ。
「ここが、裏の商人っていう人がいるところですかー……」
「変な家」
「目立たないけれど、目立つ家って珍しいわね……。とにかく邪魔するわよ」
全体的に年季が入っている店の、更にボロボロの扉を壊さないように静かに開けた。
「誰だい?」
「私は水の精霊種族よ。貴方、裏の商人でしょう? 晶霊石を補充する力を売りに来たわ」
ライファの裏の商人は真っ白な猫の老爺だった。
確か昔来たときも猫だった気がするから、きっと代々裏の商人をやっているのかも知れないわね。
「……ふーん。で、そっちの二人は?」
「土と風の精霊種族だけれど、力を注ぐのは私だけよ」
「風も欲しいんだけどねえ」
「私は構わない」
「えー? ルルもやって見たいですー」
「貴方達は力の加減ができないでしょう。やめておきなさい」
「手加減する」
「ルルも!」
「やる気があるようだがね? どうだい? 試しに力を注いでみるかい?」
「良いんですか?!」
「やめておきなさい! 晶霊石を壊すわよ?」
「それでも私は構やしないよ。どうせこの場所も私の代で終わるだろうからね」
老爺は長いしなやかな尻尾をゆらりと揺らしてなんてこと無いように笑っていた。
「……なら、お言葉に甘えるわ。ただ、晶霊石を壊したとしても弁償はできないわよ?」
「ああ。最近は情報屋ばっかりで晶霊石についての仕事は久しぶりだから、ちょっと楽しくなっているんだ」
「その話、詳しく教えてもらえるかしら?」
「良いとも。賑やかなのは嫌いじゃない」
そう楽しげに笑った老爺が案内した部屋は、どこかの孔雀とは大違いの明るく広い部屋だった。
多種族都市だからなのか、この世界では珍しいソファが四つ置いてあり、机も板硝子が使われている立派なものだった。
「結構儲かっているみたいね」
「なに、ライファは旅人が集まる場所だから、必然的に情報の売買が盛んなだけだ。まあ、適当に寛いでくれて構わないよ。今、入っていない石を持ってくるから」
老爺はそう言って部屋を出て行った。
私達は彼に言われた通り、適当な場所で寛ぐ事にした。
うーん、短い……。小話でも載せておきましょう。
ネロは水の精霊郷ディオネを発つ前に水の長老からお金をむしり──もらいました。
ウンディーネの生まれ変わりであるネロには、水の長老も逆らえません。
ちなみに水の長老に名前がないのは、役職だからという裏話があります。決して名前を考えるのが面倒だったわけではありませんので!




