5、再会……?
鬱々とした空気のまま大した会話もなく風見達が待つ場所まで戻ってきたルゥ達は、集合している人影が増えていることに気が付いて戸惑った。
カザミ、アーサー、カガリ、シュカの『ゴリアテ』の面々に加え、ネロ、エーテル、モエギの3人。そして、シュカと年の変わらない黄色い髪と瞳をもつ土の精霊種族の女性と、カガリと年の変わらない緑色の髪と瞳を持つ風の精霊種族の少女の2人。ちなみに二人は今のネロと同じく外套を羽織ってはいてもフードを被っていないため精霊種族であると一目で分かる格好をしていたのだ。
そこにルゥ、ミーシャ、マイムの3人を加え、合計12人の大所帯となった。
「ルゥ!!」
驚愕、安堵、激怒。
今まで精霊種族の二人と会話していたにも関わらず、ルゥの姿を視認した途端会話を中断してこちらへ駆け寄ってきたネロの声音は色々な感情が混ざり合い、ルゥの心を切なく締め付けた。
ネロの勢いはそのまま抱き着いて押し倒しそうなほどの速度を出していたが、ルゥの目の前に来る頃にはしっかりと減速をしてなぜか三歩ほど間を開けて立ち止まったのだった。
「……ルゥ。えっと……私が、分かる?」
恐る恐るという言葉では足りないほど、今のネロの抱く恐怖は形容し難いものなのではないか……。それほどまでに彼女の声は震え、顔は青白く、質問したわりには今すぐ目も耳も塞いで蹲ってしまいそうな程ルゥの目には儚げに映った。
「どうしたの、ネロ? そんなに怯えて。なんか怖いことでもあったの?」
「ッルゥ……! ちゃんと、ルゥ……なのね? 私が、分かる……っのね…………」
三歩ほど間を開けていた距離も、飛び付くという表現が相応しい勢いでルゥに抱きついたネロは、そのままボロボロと泣き出してしまった。
ルゥも困惑していたが、それよりも他の面々が呆気に取られていた。
特にエーテルともえぎは、ネロが人前で涙を流す……それも声を上げて泣く事など想像もつかなかったため、互いに間抜けな顔で顔を見合わせてはルゥに説明を求めるような視線を送るのだった。
「えっと……どうすれば良いの?」
ネロを抱きとめたまま戸惑いを隠せないルゥはミーシャに助けを求めたが、ミーシャは幼い女の子が『ようやく会えた。心配した』という感情満載で泣きついているのを見て現状維持を提案したのだった。
「……私も、よく分からないけど……そのままに、しておいてあげよう?」
「分かった」
──うーん? なんでネロと離れて行動してたのか思い出せないから、どう慰めて良いのか分からないや。でも、ミーシャもそのままでって言ってるし、ネロが落ち着くまでこのままで良いかな?
……なんか、変な感じ。
胸の中で湧き上がる、くすぐったいようなモヤモヤした感情に落ち着きなく尻尾を揺らしながら、ルゥはネロが落ち着くまで好きにさせておくことにした。
そこへやって来たのは、やはり先日まで一緒に旅をしてきたという事実があるモエギとエーテルの二人だった。
「うー……。ネロちゃんばっかりずるいです。モエギだって、心配したですよ?」
「まあまあ。ルゥと一番付き合いが長いのはネロなんだし、しばらくはそっとしといてあげるのが良い女ってもんさ」
二人は慰めなのか嫉妬なのかよく分からない事を話しながら、少しでもネロの心と感情がいつも通りに戻るようにと、ぎこちなくも他愛のない事だと笑っていた。
「げっ……エーテル、おばちゃん」
しかし、その二人に反応を示したのはエーテルの甥であるマイムだった。
エーテルもルゥとネロの再会に意識を持っていかれていたのか、ミーシャの影に隠れているマイムに今更ながら気付いた様子だった。
「っあーーー!!! マイム!!! アンタ……なに、クレアに心配かけてんだよ! それと、エリク……義兄さんはどこにいるの?!」
「とうさ……おやじは、ここにはいない。おれは、おやじから逃げてきたんだ」
「はぁ!? なんでそんな事……」
「力をつかうなってうるさいから」
「バカ! 義兄さんはアンタのためを思ってクレアの所からっ……離れたのに……」
感極まって泣きそうになっているエーテルに、マイムは複雑そうな顔をしながらも謝った。
「しんぱいかけて、ごめんなさい……」
渋々とした感じで謝ったマイムに、ミーシャは良くできましたと言うように頭を撫でた。
その光景を見たエーテルは「なんか、色々と悪いね」と苦笑いをしたのだった。
察しのいい二人の事だ。お互いのマイムとの関係性をある程度理解したのだろう。通じ合うものがあると分かって軽く挨拶をして打ち解けたようだった。
そうして少しだけ和やかな雰囲気になっていたところに、爆弾が投下された。
「えっと……この美人なお姉さんは、マイムのお姉さん? ネロも知ってるってことは、ネロの友達なの? 普通の、動物種族だよね?」
うーん。爆弾投下!
ルゥはエーテルさんとモエギを忘れてしまいました。




