ネロの想い 1
ケイナンも随分と様変わりをしたわね。
硝子細工の工房は昔からあったけど、工芸品になるほど有名じゃ無かった。
建物も多くなったし、人も増えた。
エーテルが居た宿も昔はただの空き地だったような気がするけれど、もうずっと前のことだから忘れてしまったわ。
それでも、やっぱりあの子は変わらない……。
昔も、牛串の前から動かなくて随分と困らせられたし。結局、一本買ってあげたんだっけ? 全く、ルゥの事になると甘いんだから……。
まあ、私もだけどね。
「ネロ? まだ起きてるの?」
「もう寝るわ。そういうルゥこそ、まだ寝ないの?」
「うーん。なんだか落ち着かなくて……」
「久し……初めてのベッドだものね。この間まで葉っぱを敷き詰めた自然のベッドだったし、落ち着かないのもわかるわ。けど、もう寝ないと明日起きれなくなるわよ」
記憶をなくしたルゥ。
日常生活に支障はないものの、色々なことを忘れている。
私がそれを忘れて、普通に接してしまいそうになる……。
「ベッドもそうだけど、なんだかエーテルの事が気になって……」
『好きな人ができた』っていう意味じゃないことは分かってる。ルゥに限ってそれはないって……。それでも、違うと分かっていても、私の心は反応してしまう。
「それは、どういう理由で?」
落ち着かない心臓と頭を無理やり鎮めて聞き返す。
「なんだろう? 初めて会った気がしないっていうのかな? 僕、ネロしか知らないはずだよね?」
「そうね。あなたは目覚めてから、私しか知らないわよ」
妙に勘が鋭いところは相変わらずよね。
エーテルが、彼女に似ているから、気になっているのだろうけれど、今はそれも教える事ができない。
「ごめんね……」
「え?」
「なんでもないわ。さあ、もう寝なさい」
はっきりと口にしたわけじゃないけれど、エーテルと旅がしたいと言ったルゥ。
その言葉に私がどれほど驚いたか貴方は知らないでしょう?
エーテルを旅に同行させるなら、それなりに覚悟が必要なのは分かっている。けれども、私ももう一人……欲しいと思ってしまった。特に、エーテル……彼女の面影が……似ているから……。
「……私ももう休もうかしら。久しぶりの宿で、久しぶりの温もりで、心が弱ったんだわ」
そう独り言ちて、布団に入った。
おやすみ、大切な、私達のルゥ……。
今回はネロの独白です。
意味深です。
短いのも意味深感を増すためです……と言っておく(いや、ほんとです)。