2、旧友との再会
雑多群サリューンに入ったルゥ、ミーシャ、マイムの3人は友人を探すため、農作業をしていた犬種族の女性に声を掛けた。
「犬のお姉さん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、今良いかな?」
「……なんですか?」
話しかけた当初は警戒していた女性だが、ルゥの人当たりの良い笑顔を見て一応は話を聞く体勢になった。
ルゥはそれを見て更に笑みを深めてこう訊ねた。
「えっと……ミネットっていう子がここにいると思うんだけど、どこにいるか知ってる?」
雑多群サリューンに住んでいるのが『猫のミネット』だという前情報をミーシャから聞いていたルゥは、不自然にならないように笑ったのだった。
女性はルゥの質問に不審がることなく、「中央の広場で子供達に読み書きを教えている」と教えてくれた。
女性の言っていた中央広場へ行くと、丸太の椅子に座るマイムと年の変わらない動物種族の子供4人と向き合うように切り株へと腰掛けた、見るからに気の強そうな猫種族の女の子が両手を使って簡単な足し算を教えていた。
「──じゃあ、ビット。4足す2は?」
「えっと……6?」
「正解よ。やるじゃない」
「次はオルレン。灰石8枚に3枚足すといくらになる?」
「かいせき11まいだ!」
「惜しいわね。それだと満点は取れないわよ」
「バカですわねオルレンは。答えははくせき1枚とかいせき1枚ですわよ」
「流石はケイティね」
「先生! おれにももんだい出してよ!」
「分かってるわよ。じゃあ、ゼンには引き算の問題を出してあげるわ」
「うげーっ!」
賑やかな授業風景にルゥとミーシャの顔には自然と笑みが浮かんでいた。
特にミーシャは、懐かしい光景を思い出して目に薄っすらと涙をにじませるほどであった。
「だれっ!?」
そんなルゥ達に気付いたのは、動物種族の中でも危険察知能力の高い兎種族の女の子、ビットだった。
ビットの声にいち早く反応したのはやはり子供達を任されているミネットで、彼女は子供達を背に隠すようにルゥと子供達の間に入り、尻尾をピンと伸ばして姿勢を低く取って警戒心満載の様子で睨みつけてきた。
「えっと……ミネット、だよね……?」
「……私の名前を知ってるの? 熊の動物種族……にしては小さい──まさか、あなたミーシャ?」
「うん。久しぶり、だね?」
旧友との再会に笑顔を見せるミーシャ。
驚いた表情のミネットも徐々に笑顔へと変わり、ゆっくりと近付いて手を握って互いが元気にやっていることを喜び合っていた。
「元気だった? あんた、相変わらずおどおどしてるのね」
「うん……。ミネットも、元気そうで良かった……」
「ええ、本当に、元気そうで……」
ミネットの吊り上がった特徴的な目が涙で水気を帯び、涙を見せないように咄嗟に顔を俯けてそっぽを向いてしまった。
繋がれた手や肩が震えていることに気付いたミーシャももらい泣きををして目からポロポロと涙を流していた。
「本当、なんで……あんたはそんなに、元気……なのよ」
「っえ? だ、だって、ミネットが、無事で──」
「無事? シアンが死んだのに? 私が、心から喜べると思うの?」
顔を上げたミネットは確かに泣いていたが、嬉し泣きではなく悲しみと怒りの涙を流していた。
「あの火事でみんなが散り散りになったわ。ミーシャが無事でいたことも確かに嬉しいけど……私はそれだけじゃ、あんたみたいに心から喜べないのよ。なんで? なんであんたは、そんなに生き生きしてるの? ……もしかして、その狼、ルゥ……なの?」
ミーシャに掴み掛かるように、縋り付くように泣いていたミネットが、初めてルゥの方に顔を向けた。
彼女の視線を真正面から受けたルゥは、情けなくもこの場から逃げ出してしまいたい衝動に駆られた。
……彼女の、自分を心底憎悪している目が、表情が、空気が、とても怖かったのである。
昔のルゥを知るもう1人の人物、ミネットの登場です。
これでルゥの友人は狐のルナルド、小熊のミーシャ、猫のミネットの三名になりました。




