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箱庭の記憶 〜君の記憶は世界の始まり〜  作者: トキモト ウシオ
フォロビノン大陸 名もなき道
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3、疑問

 ルゥが雑多群(リグレ)サリューンに行きたいと言ったことには、自分を知るという理由の他に記憶の片隅にある懐かしい少女がどう成長したのかを単純に見てみたかったという、ルゥにしては珍しい雄の好奇心があったからである。


 ──……もしかして、僕はその子が好きだったのかな? 恋とか愛とか、よく分からないけど……。なんか気になるんだよね。


「サリューンか……。俺らとしちゃ寄り道はあんまりしたくねえけど……」

「身元の割れていないルゥとミーシャが居なければディエチに入るのは不可能だろう。何より、そこのマイムはミーシャと一緒でなければ(がん)として動かないだろうな」


 カザミの懸念をアーサーが明確にし、不承不承という形でカガリとシュカも同意を示した。


 ルゥは自分に向けられるミーシャやカガリからの曖昧な好意や、マイムからの敵意を感じ取りながらも、その感情を向けられる理由がよく分からずに耳と眉を下げた。


「ほんと、混沌としてんなあ……」

「その混沌とした世界を変えるために、俺達『ゴリアテ』は動いているのだろう?」

「異種族間の婚姻と恋愛感情の本能的な忌避(きひ)。その(ことわり)が薄れつつある今がカミサマの力が弱まってる証。みんなが笑うて暮らせる世界を、うちらで作りまひょ」


 カザミがルゥを見て苦笑しながら呟いた言葉に、シュカがにこやかながらも決意の籠った言葉を言った。それに力強く頷いた『ゴリアテ』の面々を見て、ルゥはふとした疑問が頭をよぎった。


 ──この世界を作った神様は、一体何がしたいんだろう?


 動物種族と精霊種族という二つの種族を生み出した神は、第三種族(サード)合成種族(キメラ)という存在を世界の異物としている。

 神の気まぐれか本当に予期せぬことなのか、この世界(プリミール)に生まれてきてしまった第三種族(サード)合成種族(キメラ)。その存在を認めない神は《神の鉄槌》という粛清(しゅくせい)清浄(しょうじょう)によって彼らは殺されていった。

 神が直接手を下さずとも、長くは生きられない種族だというのにも関わらず……。


 ──一体、この世界はなんなんだろう?


「うっし! じゃあ、さっさと寄り道済ませてカミサマをぶっ飛ばしに行こうぜ!!」


 不安を吹き飛ばすようなカガリの笑顔に、ルゥは頭に掛かっていた(もや)が晴れた気がした。


「うん……。うん! 神様をぶっ飛ばすかどうかは置いといて、元気は大事だよね! うん! ありがとう、カガリ!」


 久しぶりに、心から笑った瞬間だった。

 それを直視したカガリは顔を真っ赤にしてサッと顔を背けたのは分かるが、余波を食らった形になったミーシャさえも顔を真っ赤にして俯いてしまっていた。


「団長はん、良い子を見つけたなあ」

「あー……うん。それは、まあ、何も言わねえけどよ……」

「この調子だとシズクもルゥに鞍替えするんじゃないのか?」

「……一回シメるか」


 概ね好意的な『ゴリアテ』に比べ、マイムは一貫してルゥを目の敵にしていた。自分が好いているミーシャがルゥに好意を持っているという点を除いても、なぜこんなにも気に入らないのか……と自分でさえも疑問に思うほど、何から何まで全てが気に入らなかった。


「……あんなやつのどこが良いんだよ」


 ポツリと呟かれたマイムの小言が耳に届いた者はルゥ以外に何人居ただろうか。

 それでも誰も何も言わなかったのは、子供の戯言だと受け流したのか、はたまたこれから加入する予定の盗賊団の調和を乱すような一言を聞かなかったことにしたのか……。

 それは本人以外誰にも分からないことだが、マイムに懐かれているミーシャだけは彼の言葉を戒めるように、先ほどから握られている自分の服を掴む手をそっと撫でたのだった。

 ようやくルゥがこの話の核心に触れてくれました。

 プリミールとは一体なんなのか……。

 この答えが出るのはまだまだ先ですが、答え合わせまで皆さん色々と考えて見てください。

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