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箱庭の記憶 〜君の記憶は世界の始まり〜  作者: トキモト ウシオ
フォロビノン大陸 名もなき道
83/171

1、混沌

「ふあ……。さて、問題はマイムの父親がどこにいるかだな」


 雑多群(リグレ)スアンドの土地から抜け地上へ降りたたところで、目を覚ましていたらしいカザミがあくび混じりにそう言った。


「ここから一番近いのは雑多群(リグレ)サリューンだが、あれは地下生物の巣窟(そうくつ)だ。よそ者はまず入れないだろう」

「だとしたら多種族都市(ネオリビシティ)ディエチまで足を延ばすか……」

「おいおい、多種族都市(ネオリビ)に行くならあたしら全員で行ったらクソ目立つんじゃねえのか? 特にフォロビノンで一番警戒が厳しいって言われてるディエチだろ? ルゥやシュカ、マイムとそこの熊女は良いとしても、都会だとあたしらって結構有名らしいぜ?」

「確かに団長はんは『ゴリアテ』としては有名やね。風を操る銀色の狼やって。『神の手足』の情報が頭までいっているのなら、もしかしたら火を操る鳶色の狼も有名になってるかもしれへんね」


 シュカににっこりと笑って言われた言葉にルゥはキョトンとした表情を見せたが、内心は不安とほんの少しの期待とで平静を保つのに苦労していた。


 『神の手足』に警戒されるという事は、彼らと出会えば必ず戦闘になるだろう。

 ルゥがどんなに平和的解決を願っても、この身体は戦いを覚えていて、しかも戦いを……破壊を望んでいるような気がして恐ろしくなる。

 しかし、そういう感情が出てくるのなら戦いを通じて失われた記憶が戻るかもしれない……。

 そんな淡い期待が頭をよぎるのである。


 ──知るためには、怖いことにも立ち向かわないといけない。……分かってるけど、怖い。


「心配すんなって! 俺がいる限り、誰一人として殺させねえからよ!」


 恐怖が顔に出ていたのだろう。カザミが明るい声と共に背中をバシバシと叩いてきた。


「クソ団長に守ってもらわなくても、ルゥのが強いんじゃねえのか?」

「確かに。トワイノースの一件でそれは理解した。見た目の変化を伴う力。それが団長の言う生まれ変わりなのだとしたら『神の手足』も易々と仕掛けて来なくなるだろうな」

「二人とも酷いぜ……。でも、そうだな。ルゥの見た目が変化したことが俺やマイムにも起こるとしたら凄いワクワクするな!」

「おれ?」

「ああ。マイムの力の強さは相当だ。きっとノームの生まれ変わりなんだろうな。ちなみに俺はシルフの生まれ変わりなんだぜ?」

「マイム。クソ団長が勝手に言ってることだから気にすんなよ」


 先程から散々(けな)されているカザミが肩を落としているのを余所に、マイムはカガリが刺した釘をまるっきり無視して、ノームの生まれ変わりという言葉が頭を埋め尽くしているようだった。

 キラキラと高揚した顔で自分の手を見つめて、二、三回ほど拳を握ったり開いたりしたあと、ルゥを見て口角を上げてみせたのだった。


「ふふんっ」

「ええ〜……?」


 ルゥが対応に困っていると、マイムはすぐさま視線を外してミーシャに甘えるように抱きついていた。

 ますます意味がわからないルゥはほとほと困り果ててしまった。


「なんか、混沌としてんな……」

「混沌? って何?」


 一連のやりとりを見ていたカガリが呟いた言葉に、ルゥはモヤモヤしていた思考を誤魔化すように尋ねた。


「あー……? そういや、混沌ってなんだ?」

「カガリはん、自分で言うとって分からへん言うのはどうか思うわぁ」

「んだよ! 良いじゃねえか別に、わかんなくったって伝わりゃあよ」

「伝わってへんて。もう、混沌言うんは色んなことが入り混じってる状態のことやで。今の場合、子猿はんの感情、色んな思いはルゥはんには分からんかったやろ? 感情一個一個が矢印だと考えてや。子猿はんの色んな矢印はルゥはんに向かったけれど、ルゥはんはその矢印を受け止められへんかった。一方通行やね。そのあと、子猿はんの矢印は小熊のお嬢はんに向かった。なんや矢印がごちゃごちゃしてんやろ?」

「うん? うーん……うん! なんか、凄い矢印があっちこっち向いてて忙しいね!」

「そう言うことやで」


 逆に分かり難くなったんじゃないかと思われたシュカの説明も、ルゥはきちんと理解することができ、説明をしてくれたシュカに笑顔でお礼を言ったのだった。

 タイトルの通りです。

 シュカの台詞が多いと、書いてるトキモトも混沌としてきます。

 方言とか略語とか……Wordで入力すると赤い波線が引かれてごちゃごちゃします。


20,2,5 加筆修正

21.4.21 誤字脱字修正

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