8、移動の合間に
雑多群スアンドの老夫婦が住む家を出発したルゥとミーシャ、マイム、そして『ゴリアテ』の一行は一路南西へ向かって進んでいた。ちなみに地図上ではまだスアンドの領内である。
故に、この世界一広大な土地面積を持つフォロビノン大陸は集落から集落を移動するだけでも結構な長旅となる。馬などの移動手段があればまた別となるが、動物種族という特殊な種族はただの馬よりも肉体的に優れているため必要としない場合が多い。しかも、肉食動物種族を恐れて馬が近寄らない場合が多々ある。
そして、精霊種族という種族は馬や他の動物による移動手段を使うこともあるが、風の精霊種族だけは空を自由に駆けることが出来るため、本当に必要な場合以外(体力の限界等)を除いては自力で移動する。
つまり……風の力を持った体力的に優れている動物種族、第三種族が集う『ゴリアテ』は力を使って悠々と空の旅をしているのであった。
「シュカ、大丈夫? 疲れてない?」
「ルゥはん心配してくれてるん? 優しいなあ。でも全然行けるで。おおきに、ありがとう」
スアンドで休憩した分しっかり働かないと、とシュカは言った。
マイムの実力試験、その後の作戦会議と軽い昼食を含めておよそ一時間。
しっかり休めたのかと言われると、ルゥとしては微妙な時間だった。それでもシュカには立派な休憩時間だったらしく、上記の言葉通り全く苦になっていないようだった。
──シュカは凄いな。6人、全員がシュカの風に乗って移動してるんだもん。カザミなんて呑気に寝てるし……。
そう考えたルゥだったが、スアンドを出るときにカザミが老夫婦としていた会話を思い出して胡乱げに見つめていた目を静かに伏せた。
『じゃあ、行ってくるな。じっちゃん、ばっちゃん』
『しっかりやるんじゃぞ』
『体に気をつけるのよ?』
『ああ。行ってくる』
何気ない会話だっただろう。しかし、カザミの発する雰囲気でルゥは悟ってしまった。
カザミが危険な場所に自ら進んで赴き、その手を犯罪や血に染めていることをこの老夫婦は知っていて、それでもカザミを止めることは言わない。
そしてカザミも、自分がいつ死ぬかもわからないから多くを語らない…………。
「ねえ、シュカ?」
「なに?」
「『ゴリアテ』って、元々何人いたの?」
「……難しい質問ね。沢山いたけど、殺されすぎて覚えてへんわ」
「殺されたって……『神の手足』に?」
「大半はそうなぁ。あとは、カミサマに殺されたのやで」
「そう……なんだ……」
「ふふっ。あの子猿はんも、力は強い言うても知恵があらへん。力を有効に使うための力、制御するための力。色々やけど、どこまで生き残れるか見ものやね」
そう楽しげに話すシュカの顔は、新しく仲間になるマイムを精査しようとするものでも、年上として年少の子を心配するものでもなく、弱肉強食という自然の摂理を受け入れて生きている者がする淡々としたものだった。
最近少し長かったので、今回は短めです。いえ、たまたま短くなっただけですが……。
ルゥとシュカの何気ない会話みたいなものですが、『ゴリアテ』のことが少しわかっていただけたと思います。
神様はプリミールの異物である第三種族や合成種族を嫌っています。理由は後々明かされますが、カガリの妹も神の鉄槌によって粛清された話は覚えているでしょうか? 『ゴリアテ』のメンバーも何人も犠牲になっている、という話でした。




