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箱庭の記憶 〜君の記憶は世界の始まり〜  作者: トキモト ウシオ
フォロビノン大陸 雑多群スアンド
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6、小さな好敵手?

 なにやら甘い雰囲気を作り出した二人に『ゴリアテ』の面々は遠い目をしているが、子供のマイムにはその空気がわからないのか、無遠慮に質問を投げかけた。


「ねえねえ、お姉さんも第三種族(サード)?」

「私? 私は……なんの力もない小熊、だよ?」

「ふーん。やっぱりね。なんかほかの人とちがうと思った。でも、だったらなんで『ゴリアテ』にいるの? 『ゴリアテ』には、ふつうの動物種族もいるの? っていうか、お姉さん小さいけど何才なの?」


 戦闘要員の第三種族(サード)でもなく、保護対象の合成種族(キメラ)でもなんでもないミーシャは雰囲気が柔らかく話しかけやすいのだろう。たたみ掛けるような質問責めを受けている困り顔のミーシャは、一応答えられる範囲の自らについての質問に答えた後、答えられない『ゴリアテ』関連の質問をどうするべきなのかルゥへと助けを求めてきた。


「──それで、私がここにいるのは、ルゥを助けるため……かな? あとは……」

「僕も『ゴリアテ』については詳しく知らないからね。最近、ちょっと一緒に行動するようになったばっかりだから」

「へえ。じゃあ、狼はおれと"どうかく"ってやつなんだな」


 端々に棘を感じさせる言い方をするマイムに、言われた本人は苦笑いしかできなかった。


「そろそろ『ゴリアテ』について本格的に教えてやるか。まあ、こないだ話した通り、俺が盗賊団『ゴリアテ』の団長、カザミだ。風の力を持った第三種族(サード)で、何を隠そうシルフの生まれ変わりなんだぜ?」

「自称、だろう」

「うっせえ! 俺以上に風を上手く扱えるヤツがいるか? それに、『ゴリアテ』の中で晶霊石(しょうれいせき)を使わないで力を使えるのも俺……とシズクだけだしな」

「石をつかわない? おれと、同じ?」


 マイムも晶霊石をつかわずに力を発動してみせた。

 第三種族(サード)はもちろん、精霊種族でさえ晶霊石の補助がなければ自らの命を削って力を使うことになる。

 カザミ曰く、自分とマイムも実際には身体に負担を掛けているのだが、晶霊石があったほうが楽、くらいにしか感じておらず、命の危険を(はら)むほどのことではないらしい。


 ──……それは多分、きっと精霊の血が精霊種族よりも濃いから、なんだろうな。神様が、思いもよらなかった存在。それが、第三種族(サード)……。


「ああ、そういえばルゥも晶霊石使わないで力使えたよな?」

「え? うーん……まあ?」

「なんで疑問形なんだよ」

「あたしもしっかりと見たぜ。ルゥが石無しで力使ってっとこ」

「へぇ。ルゥはん、凄いやないの」


 マイムの話をしていたはずなのに、いつの間にか話題の中心が自分のことになっていると気づいたルゥは、どこか居た堪れない気持ちでいながらも話の腰を折る真似をすることができず、ただ尻尾を揺らしながら耳を傾け続けることしかできなかった。


「そうだ! あたしの晶霊石を光らせたヤツ! あれ、どうやったんだよ。詳しく教えやがれ」

「え? どうって言われても……」

「あれ便利だよな。俺でもできんのか? 確か……ヒュってやって、ボーン……だっけ?」

「ちゃうよって。自然体になって、ひょいってやって、どーん。や」


 ルゥの答えはどうでも良いらしく、好き勝手にルゥが使った裏技について語り出したカザミ達。しかし、なぜか一番興味のなさそうだったシュカがルゥの口調と行動を覚えており、カザミもカガリもそれを真似て「ひょいってやって、どーん」と言い出したのである。


 ルゥは癖になりつつある苦笑いでその様子を見ていたが、話題を(さら)われたマイムが同じように置いてけぼりを食らっているミーシャの横で不満を零しているのを見て会話に混ざりに行った。


「なんだよ、おれのはなししてたのに……。あの狼、自分はトクベツって感じがしてイヤなヤツだな。クマのお姉ちゃん……えっと、名前は?」

「わ、私? 私は、ミーシャ。小熊のミーシャ」

「ミーシャ姉ちゃんもなんであんなヤツを助けるためについてきたんだ?」

「私は……昔、ね。ルゥが助けを求めていたときに助けてあげられなかったんだ。だから、もう逃げないって、決めたの。ちゃんと、今度こそ、何があっても助けてあげられるように……」


 声をかけようとしていたルゥだったが、ミーシャの真剣な表情で語られる面映い内容に足を止めてそっと感謝した。


「なあ、ミーシャ姉ちゃんは第三種族(サード)がこわくないのか?」

「なんで? ルゥもカザミさんも、もちろんマイムも、凄いと思うよ?」


 ふんわりと優しく微笑み、なおも優しい言葉を発するミーシャに、ルゥは記憶にないはずの母の面影を見て無性に泣き付きたくなったが、ルゥより先にマイムが抱きついたことによってなんとか掛け出さずにその場に留まることができたのだった。


「えっと……マイム? どうし──」

「好き! ミーシャが好きだ! おれとずっといっしょにいて!」

「え?」


 心配そうなミーシャの声は、マイムが勢いよく顔を上げてキラキラとした表情で少しの照れも恥じらいもなく言い放った言葉によって最後まで発せられることはなかった。

 疑問の声は誰が上げたものなのか、近くにいたルゥはもちろんのこと、晶霊石を遠隔で光らせる裏技の習得に夢中になっていたカザミ達や、自らの仕事へと戻っていたスアンドの住人達もなんともいえない表情でマイムとミーシャを見つめていた。


 オロオロと困った顔のミーシャに、助けを求められるような視線を送られたルゥは一先ず深呼吸をひとつしてから助け舟を出した。


「マイム、ミーシャが困ってるよ?」

「うるさい。あんたにはかんけいないだろ」

「関係があるかないかじゃなくて、今、ミーシャが困ってるんだけど……」


 なんとかマイムの興奮を落ち着かせてミーシャとの距離を離そうと話しかけるルゥだったが、マイムはとことんルゥが気にくわないらしい。ありったけの嫌悪を込めた目で睨み付けてから、「プイっ」という効果音がつきそうなほど勢いよく顔を逸らしたのだった。


「ねえ、カザミ! ミーシャもずっといっしょだよな?」

「えぇ?! 俺ぇ?!」


 まさか自分に話を振られると思っていなかったのだろう。カザミは素っ頓狂な声を上げて答えに(きゅう)していた。


 ミーシャが今後も『ゴリアテ』と行動をともにするかは、ミーシャ本人の気持ち次第である。例えルゥが「ついてくるな」と行ってもミーシャはついてくるだろう。しかし、ルゥはミーシャに対して冷たく突き放すようなことをいうつもりは毛頭なかった。


 カザミも上記のような考えに至ったらしく、どうするんだ、という確認を込めてルゥに視線を送ってきたのだった。

 現時点での恋のライバル(?)マイム。

 いや、この話に恋愛要素を濃いめに入れるつもりは毛頭ありませんが、ストーリー上のスパイス程度には匂わせていくつもりです。

 モテモテなルゥ……。羨ましいとか思わないんだからねっ! ちなみにトキモトの推しは……ゲフンゲフン。ここでは何も言うまい。


 本編が完結したらサブストーリー的な感じで個人にフォーカスしてそういう話をあげるのも良いかな、と思ってます。

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