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箱庭の記憶 〜君の記憶は世界の始まり〜  作者: トキモト ウシオ
フォロビノン大陸 雑多群スアンド
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5、強い思い

ルゥが遠い目をしている間もマイムは自らの力について熱く語っていた。


「このキンゾクってやつがなければ、おれはもっとすごい力が使えるんだ!」

「わかった、わかったから。少し落ち着けって」

「そう興奮するな。お前の凄さは俺も団長も理解した。ただ、お前はまだ幼い。幼いからこそ、もう少し力の使い方と自分の能力を知るべきだ」

「そやねえ。あとはそのけったいな物、取り外せへんの?」


 カザミやアーサーとは違い、シュカはマイムに近過ぎず遠過ぎない絶妙な距離で苦々しく言った。

 マイムを心配したルゥやカガリもシュカと同じような距離を保っている。

 それは(ひとえ)にマイムに着けられている金属に嫌悪感を抱いている所為である。

 かく言うカザミとアーサーもできることなら距離を取りたいらしく、尻尾や耳を落ち着きなくゆらゆらと揺らしていた。大方、自分で能力を使わせておいて遠巻きにすることに引け目を感じているのだろう。背中をゾクゾクとした不快感に襲われながらも気丈にその場にとどまっていた。


「お……やじがカギを持ってる。でも、ぜったい外してくれないよ。でも、たしか火の力ならこわせるって言ってた」

「それは父親が言ったのか?」

「うん。だから火の力を持ったやつには近づくなって言われた」

「カガリやルゥならできんじゃないのか?」

「あたしに言うんじゃねえよ。あたしの力なんて、クソ団長が良く知ってんだろうが!」

「んー……ルゥはどうだ? できそうか?」


 カザミに話を振られ、ルゥは少し間を開けて「できない」と答えた。


「そうか。となると厄介だな」


 ──ごめん。本当は、出来ると思う。けど、僕は今、力を使うのが怖い。特に、金属を焼き切るほどの強い力を使うのが……。僕じゃない、誰かの存在が、僕を追いやってしまう感覚って言うのかな? ネロは、これを知ってるのかな? だから、僕に詳しい話をしたがらないのかな?


「なあ、本当にこの猿は『ゴリアテ』に入るのか?」


 唐突にカガリが、誰ともなしに聞いた。


「いや、あたしも戦力的には賛成だし、こいつの父親を探して説得しようとしてんのもわかるけどよ……。なんつうか、こいつは本当に戦うってことを知ってんのかと思ってよ」


 カガリのその言葉を聞いてシュカが一瞬だけ自嘲気味に笑ったのをルゥは見逃さなかった。彼女の笑みはすぐにいつもの人を食ったような笑みに変わったが、続けて発せられた言葉には相当な重みが乗せられていた。


「カガリはんがそれを言うん? 小さい頃から(しいた)げられ、必然的に戦わざるを得えへんかったカガリはんが? 第三種族(サード)言うんはそないな生き物やろ。戦えるかどうか? そんなんは関係あらへん。本人が付いてきたい言うのなら連れてったればええやろ。戦いなんてもの、これから嫌でも覚えるんやさかい」


 表情も声音も一切変化することはなかったが、逆に淡々と語ったことで彼女達が今まで味わってきた苦しさや悔しさを垣間見た気がしたルゥだった。


 ──僕に昔の記憶はないけど、ネロと旅していた時はそこまで辛い思いではなかった気がする……。それは、運が良かったとかじゃなくて、きっとネロが考えてくれてたのかな……? でも、そんなネロが居ない今の方が、僕は世界を知ることができる。


「カガリが言うことも一理あるな」

「だろ? おい、マイム。てめえは本当にあたし達に付いて来れんのか?」

「あたりまえだ! おれは行く! もう、押さえつけられるのはたくさんだ!!」


 ──マイムは、小さいのにちゃんと自分で考えて変わろうとしてるんだ。なら僕も、世界を知るために自分の足で進むんだ! ……本当なら、ネロが一緒に探してくれるつもりだったのかも知れない。けど、それじゃダメだ。僕一人でもできるって、やれるってことを証明しないと。じゃないと、僕はいつまでも"僕"を知ることができない!


 強気に言い切ったマイムを力強い眼差しで見つめるルゥは、思いを新たに気合いを入れ直した。

 "自分(ルゥ)"をずっと支えてきたネロ。

 今後、彼女と再会して行動を共にしても、決して重荷や足手纏いにならないよう、記憶のことで気を使わせないよう、己を知り、力の使い方を学ぶ。


 ルゥの決意が固まった。


「厳しい戦いになるぞ? 怪我だけじゃなく、下手すると死ぬかも知れない。それでも、お前は俺達と一緒に進めるか?」


 カザミの真剣な問い掛けに、マイムが答えるよりも早くルゥが口を開く。


「連れて行ってあげようよ」

「ルゥ?」

「マイムは変わろうとしてるんだ。確かに、力を暴走させないようによく見ててあげなきゃいけないけど、それでも……成長するためには少しくらい冒険してもいいと思うんだ。まあ、お父さんの許可が出たらの話になるけどね」

「……ルゥ、変わった?」

「僕は変わるよ。もちろんミーシャも、みんなもね。大人になるって、こう言うことなのかな?」


 照れ臭そうに「えへへ」と笑ったルゥは、マイムに近寄った。

 金属への言い表せない嫌悪感を我慢して、目線を合わせるためにしゃがむ。


「一緒に、お父さんを説得しようね」

「…………なんかヤダ。あんた、うそっぽい」

「「ぶっ……!!!」」


 カザミとカガリが同時に吹き出し、周囲が笑いに包まれた。


「ルゥはん、見事に言われてもうたね」

「あっはっはっはっは! 最高だ! 最高だぜマイム!!」

「確かに、ルゥをここまで(けな)すやつを見るのは俺も初めてかもな! 凄い! これは有望株を拾ったぞ!」

「もう! 二人とも笑いすぎ!」

「そ、そうだよ……。マイム君も、あんまり人の悪口言っちゃ駄目、だよ?」


 すかさずミーシャがルゥと同じようにしゃがみ、マイムと目線を合わせて擁護(ようご)したが、カザミとカガリは更に笑い声を大きくした。

 彼らからしてみればミーシャの行動は、子供に虐められた大人の図、に見えたのだろう。


「ルゥは、我慢してるだけだよ。優しい、から……」

「……そんなことないよ。でも、ありがとうミーシャ」


 ──我慢、してるように見えるみたいだね。実際は隠してる、と言うより"僕"を誤魔化してる、が正しい気がするけど……。優しくもない、と思うし。僕は、わがままだから。ね、ネロ?

 今回のサブタイは、ルゥだけではなくマイムにも掛かっています。

 なんか似たようなタイトルが多い気がしなくもない……。語彙力カモン! そしてセンス!

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