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箱庭の記憶 〜君の記憶は世界の始まり〜  作者: トキモト ウシオ
フォロビノン大陸 雑多群スアンド
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4、実力試験 本番

「じゃあ、まずはアーサーの手本だな」

「俺の力の一端を見て、戦意喪失しなければ良いがな」

「ようやっと始まるようやね。お二人はん、注意してへんとこっちまで被害来るかもしれへんさかい、気い付けや」

「ありがとう、シュカ」


 ルゥの精神状態がどうであれ『ゴリアテ』内で話は進んでいく。

 ようやく始まるらしいマイムの実技試験に、シュカが無防備なルゥとミーシャを心配して声を掛けてきたようだ。ルゥは先ほどの嫌な映像をまるで感じさせないように、とびっきりの笑顔を浮かべて礼を言った。


「……狼はん、あんた随分と可愛らしいなあ。確か名前は……ルゥはん、言うたなあ? これからよろしなあ」

「シュ、シュカが……ルゥの名前を……覚えやがった……!」

「ん? カガリは何をそんなに驚いてるの?」

「ッバッカ……お前……!! シュカはなあ、他人の名前を覚えないことで有名なんだぞ!? そのシュカが名前を覚えたっつうことはだ、お前の存在を『ゴリアテ』の一員として認めたってことだよ! ルゥ、てめえはずっと『ゴリアテ』に居るつもりなのか?! 違うだろ!! シュカに名前を覚えられた以上、簡単に抜けれると思うなよ?」


 驚愕に声を荒げたカガリは、近くにシュカが居るのを思い出してすぐに声を潜めてルゥに説明を始めた。


「二年くらい前、シュカに名前を覚えられたばっかりのやつが恋人ができたからっつう下らねえ理由で『ゴリアテ』を抜けたいって言ってきやがったことがあんだよ。そんときのシュカの荒れようは凄まじかった……。クソ団長でさえ手が出せねえんだぞ? あたしはあんな思いは二度とごめんだからな!」


 いったいその時に何があったのか、ルゥは詳しい説明をカガリに求めたのだが彼女の口から語られることはなかった。

 ルゥはカガリに聞くことを諦め、隣でニコニコして居るシュカに「自分は『ゴリアテ』に加入したわけではない」と伝えようとした。


「あの……」

「なに?」


 しかし、シュカの笑顔の裏にある猛禽類特有の鋭い目を見た気がしたルゥは何も言えなくなってしまった。


 ──笑ってるのに怖い……。シュカも怒らせちゃダメな人だ。


 ルゥ達が色々と話して居る間にもアーサーは第三種族(サード)としての力を披露していた。


手始めに、平地だった場所に高さ2メートルほどの小高い山を作り上げ、その山を削って精巧な城を作り上げた。


「すごい……。ルゥ、第三種族(サード)っ力って、凄いね」

「うん」

「フォッフォッフォ。あの城、懐かしいのう。じゃが、アーサーの力はこんなもではないじゃろう?」


 ミーシャや老爺達に(はや)され、アーサーはやれやれと肩をすくめつつもまんざらではない顔をして、城の周りに立派な城下町を作り上げた。さらに、そこに住んで居る人々の活気さえも土で表現し、それは今にも動き出しそうなほどの精巧さで作られた土の模型にルゥも感嘆の声を上げた。


「うわぁ……。凄い。凄いよ! 力って、こんなことにも使えるんだね!」

「さあて、盛り上がってきたところでマイム。お前にはアーサーを越えられるだけの力があるのか見せてくれよ」

「……おれの方がすごいの作れる」


 挑発するようなカザミの言葉を受け取ったマイムは、苛立ちを感じてはいながらも余裕そうに地面に手を付けた。


「あ、そうだ。晶霊石(しょうれいせき)渡すの忘れ──」


 思い出したようなカザミの言葉は最後まで紡がれることはなく、マイムはアーサーの作り出した城の倍以上はある大きさの恐竜を作り出してみせた。


 プリミールに恐竜という生物は存在しないが、ヒトと同じく物語や壁画に描かれ、絵本にも登場することが多いが総じて人々の生活を脅かす脅威として描かれる。

 つまり……。


「そんなもの、ふみつぶしちゃえ!」


 アーサーの作り出した城や城下町、人々をぎこちない動きながらも(ことごと)く破壊していったのである。


「なっ……!?」

「土でできた人形を……動かしただと?」


 カザミやアーサーが驚くのも無理はない。

 土の力は地面に穴を開けたり壁を形成したり、アーサーのように力の強く器用な者は粘土といった特定の成分を含んだ土を狙って掘り起こしたりもできるが、それは晶霊石という道具を用いればある程度誰にでもできることである。

 しかし、マイムは物を形作るだけではなく、それを動かしてみせた。

 簡単にやってみせてはいるが、『土でできた壁を開く』のとはわけが違い、細かい命令を与え続けねばならず、それは容易なことではないのだ。


 土でできた恐竜はアーサーの作り上げたものを壊し尽くした後、自らの役目は終わりと言わんばかりに呆気なく土に戻った。

 そして土人形が崩れるとほぼ同時に、マイムも膝をついてしまった。


「っはぁ……はぁ…………くそっ!!」

「おい、大丈夫か?」

「あたまのキンゾクがなかったら、もっとかんたんにこわせたのに!」

「やっぱ晶霊石持たせりゃ良かった──」

「うるさい! おれは、そんな石なくても力が使えるんだ!」


 肩で息をするマイムを心配したアーサーとカザミが駆け寄るが、二人の心配をよそに自らの力を誇示するマイムを見てルゥは悲しい視線を向けた。


 ──力を使えることは凄いことかもしれないけど、凄いだけじゃないのに……。怖い、ことなのに……。

 ようやく実技試験本番を迎えました。

 マイムの力はアーサー以上だと知れました。

 カザミは大喜びでしょう。

 しかし忘れてはいけないのがマイムの頭に着けられた金属の存在。

 常に嫌悪感に苛まれながら生活するというストレス。しかもまだ子供です。鬼畜の所業です。

 マイムは無理して力を使いました。カワイソス……←

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