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箱庭の記憶 〜君の記憶は世界の始まり〜  作者: トキモト ウシオ
フォロビノン大陸 雑多群スアンド
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3、実力試験 準備

「おい、ルゥ。もう大丈夫なのか?」

「うん。心配かけてごめん」

「……お、おお。それなら、良いんだけどよ……」


 休んでいるルゥの様子を見にきたのだろう。カザミが掛けた気遣いの言葉に、ルゥは素直に礼を言った。


 ネロの知らない自分を知るためとは言え、現時点で戦力になるかも分からない自分を迎え入れ、なんの能力も持たないミーシャを連れて、マイムを拾ってくる。

 結構なわがままを言っている自覚のあるルゥは、それでもこうして寝食を共にし、体調を崩せば心配してくれるカザミに心から感謝をしていた。


 しかし、カザミはそんな素直なルゥに違和感を覚えたらしい。少しだけ首を傾げたようだが、ルゥに問うことはせずに話を進めたのだった。


「体調が戻ったら手伝って欲しいことがあんだけど、平気か?」

「大丈夫だよ。何をすれば良いの?」

「マイムの実力試験だ」


 ベッドから起き上がりながら答えたルゥに、カザミは至極楽しそうに笑ってそう言ってきた。

 いまいち意味を理解していないルゥは、同じく不思議そうな顔をしているミーシャと顔を見合わせて、カザミの言う「実力試験」を良く理解しないまま外へと出て行った。


 二人は知らないが、カザミが至極楽しそうな顔をする時はロクでもないことを考えているのは『ゴリアテ』内部では有名な話であり、実際外に出た二人は遠い目をしたり頭を抱えたりしている『ゴリアテ』の面々を目にするのだった。




「さて、メンツが揃ったところでマイムの実力を測りたいと思う。何があっても良いように、各自しっかりと備えておけよ!」


 "しっかりと"の部分を強調して声高に宣言したカザミに対し、周囲のそこかしこから文句が聞こえてきた。


「はぁ……。また、実力試験か……」

「ほんま、こないなこといてる暇あらへんと思うけど」

「チッ……。面倒なことやってんじゃねえよ、クソ団長が」


 慕われていても、それは『ゴリアテ』という組織を立ち上げ、行き場のない第三種族(サード)合成種族(キメラ)の居場所を作り、ここまで纏め上げているという事実があるからで、今のこの状況はそれとは関係なくカザミという個人がシュカとは違った意味で厄介な性格であると物語っていた。

 そんな団員と老夫婦と、なんとなくカザミという人物を知れたルゥ、ミーシャ、マイムの微妙な空気をものともせずにカザミは殊更(ことさら)楽しげに声を上げた。


「さあて、せっかくだだっ広いスアンドに来たんだ。思いっきりやって良いからな、マイム!」

「はぁ……?」


 両手を広げて「さぁ!」と構えるカザミだったが、マイムはなんのことか分からず困惑の表情を浮かべていた。

 もちろん、ルゥもカザミが何をしたいのか理解できないために終始首を傾げっぱなしであり、それはミーシャも同様であった。


「団長、せめてもう少し説明してやらないと分からないと思うが?」

「え? 実力を測るんだろ? 簡単なことじゃんか、なあ?」


 同意を求めるようにルゥの方へ顔を向けてきたカザミだったが、ルゥは相変わらずのあどけない表情で首を傾げつつ曖昧に笑って見せた。


「なんだよー。ルゥも分かんねえのかよー」

「カガリが怒る前にさっさと説明した方が良いぞ」

「ちぇっ」


 子供の様に唇を尖らせてふて腐れた格好をしたカザミは、アーサーに促されてようやく説明を始めた。


「まず、マイムには第三種族(サード)としてどれだけの力があるのか俺達に見せて欲しいんだ。方法は簡単で、この広い土地をジウうに使って俺に凄いって思わせる事だ。大雑把な説明で分かんないかもしれないけど、要は自由に力を使ってくれって事だな。ま、俺はここにいるアーサーより凄いやつを見た事ないからそんな簡単に驚かねーぞ?」

「なら、手始めに俺が力を見せた方が良いだろう」


 やれやれと説明を終えたカザミは、アーサーの提案に「それもそうだな」と頷いて表情をにこやかなものへと戻していた。


 ──なんだか楽しそうだな……。自由な姿が、カザミらしいや。…………あれ? カザミらしいってなんだろう? でも、風を使う彼は、自由が似合う……と思う。


「おい、なあ。あたしら何のために呼ばれたんだよ。アーサーとクソ団長さえ居りゃ良いだろ」

「恐らくやけど、後始末要員と違う? あの子猿はんの力がどれほどのことかわからへんけど、周囲に被害が及ばへんよう配慮して、もしも被害が出たらうちらになんとかさせようちゅうことや思う」

「ッチ……。んだよ、それ。クソ面倒くせえ」

「ああ、カガリはん。帰ったらあかんて。うち一人じゃどうにもならへんよ。それに、あの狼はんになんかあったら嫌やろ?」

「……わぁったよ! クソッ!!」


 自分の中に湧いた疑問に首を傾げつつ、カガリの不機嫌そうな声とシュカの楽しそうに囁く声を聞いて、ルゥは彼らを羨ましいと思った。


 ──良いなあ、こんな関係。仲間……って言うんだっけ?


『裏切り者!』

『条約違反をしたのはそちらだ! 良いのか? 私の国には──』


 一瞬だけ見えた映像は、今までルゥが見てきたものとはまるで異なるものだった。

 灰色の世界。淀んだ空。怒号の響き渡る部屋……。


「ルゥ? まだ、具合悪い……?」

「……っえ? あ、ううん。大丈夫だよ」


 ミーシャの声によって現実に引き戻されたルゥは、先ほどの映像のことを考えない様に明るい声で返答したのだった。

 次回は土の力を持つマイムの実力試験が開始されます。

 試験という仰々しいものではなく、ただのパフォーマンスみたいなものですが……。カザミがやりたいだけ……。


 そしてフォロビノン大陸に渡ってからルゥの変化が激しくなっていきます。

 ここだけの話、トキモトは何度かルゥの名前を打ち間違えてますw

 加筆修正大事!

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