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箱庭の記憶 〜君の記憶は世界の始まり〜  作者: トキモト ウシオ
フォロビノン大陸 多種動物種族村テルカーゾ
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3、異端者

 ルゥが連れてきた子猿が、エーテルの探していた土の力を持つ第三種族(サード)のマイムだと分かったカザミの表情は、途端に喜色に染まった。


「やっりぃ!! これは運命だろ! なあなあ、マイムも『ゴリアテ』に入れよ! 手厚く保護するぜ? いやあ、アーサーの他にもう一人土の力使えるやつが欲しいと思ってたんだよ! あ、ちなみに力の強さってどんくらい? アーサーと力比べしようぜ!」

「団長うるさい。俺はやるとは言ってない。そもそも、この子供の保護者はどうするつもりだ」

「あー確かに。おいルゥ、このガキの親はどうした?」


 マイムという土使いの存在に狂喜乱舞するカザミをよそに、いたって冷静なアーサーの突っ込みが入った。

 カガリもアーサーの言葉に納得するようにうんうんと頷き、マイムを連れて来た張本人であるルゥに尋ねたのだが、ルゥは小首を傾げて楽天的に「しらない」と答えたのだった。


「僕が見つけたのはマイムだけだよ」

「なら、おとんとおかんはどこにおるん?」

「おと……あ、おやじは用事があるって言ってどっかに行った。だから、にげてきた」

「逃げたぁ?! なんでだよ!」


 マイムの発言にカザミが素っ頓狂な声を上げた。


「だって、おやじが力を使っちゃダメってうるさいんだ。おれは力を使いたいのに……。せっかく神さまがくれたものだから、使わないとだろ?」


 そう語るマイムの表情は、自分が特別である事に対する優越や、力の行使に対する好奇心がありありと出ていた。


「神様がくれたもの、か。俺達『ゴリアテ』は『神の手足』っていう集団に"異端者"扱いされてんだけどな」

「"いたんしゃ"ってなに?」

「……何って言われても、どうやって説明すりゃいいんだ?」


 マイムに聞き返されたカザミは近くにいたカガリに説明を求めたが、カガリは腹立たしげに「あたしに聞くな」と舌打ちしつつ答えた。


「そういうのはアーサーとかシュカのが上手いだろ。なんでわざわざあたしに聞くんだよ。喧嘩売ってんのか?」

「カガリ、子供の前だ。止めておけ」

「うーん、異端者いうのは、仲間はずれみたいなもんや。例えばやけど、お猿はんの群れの中に犬が一匹混ざってたら、その犬は異端者いうことや。あとは、お肉しか食べへん犬の中に草しか食べへん犬がおる。やらの方が分かりやすい?」


 シュカが分かりやすく説明した事で、マイムはもとより"異端者"発言をしたカザミや頭を使うことが苦手なカガリ、もとより思考回路が幼いルゥも「なるほど」と言った表情で卯頷いていた。


「じゃあ、"いたんしゃ"って言われてるみんなは、神さまの敵ってことか?」

「……鋭いな」

「あたし達はあたし達の存在を認めない神ってヤツをぶっ飛ばすために居るんだ。もしもオマエがあたし達の仲間になるなら、神に喧嘩を売る事になるってことを、そのちっせえ脳みそ使ってよく考えな」

「あれ? カガリ、どこ行くの?」

「うっせえ。ルゥには関係ねえ」


 言うだけ言ってルゥの疑問に答えることなくさっさと屋敷を出て行ってしまったカガリに、ルゥは何か怒らせることをしてしまったのかと心配になったが、カザミがニヤニヤとした顔でこちらを見ながら「心配すんな」と言ってきた。


「どう言うこと?」

「カガリは安心したんだろ。ルゥがもう戻ってこないんじゃないかってな。いやあ、面白かったぜ? 一人で落ち着きなく──」

「団長はん、それは言い過ぎやで。カガリはんは女の子なんやで? もっと彼女の気持ちを考えたってや」

「悪い……」


 少しだけ本気の声音で怒られたカザミは、いつも強気で飄々としている尻尾を情けなく垂れ下げた。

 その情けない姿を見てルゥは自分に似ていると思い、以前カザミに"兄弟"と言われたことを思い出していた。


「それで? 結局この子供はどうするつもりだ」

「俺的には『ゴリアテ』に入って欲しい!」

「うちは団長がええのやら構わへんよ」

「うんうん。で、アーサーは?」

「俺が駄目だと言っても聞き入れては貰えんのだろう?」

「さっすがアーサー! 分かってる! もちろん、ルゥも賛成だろ?」


 カザミに話を振られたルゥだったが、心ここに在らずの為すぐに反応することができなかった。

 もう一度、先ほどより少し大きめに名前を呼ばれたことでようやくカザミに意識を向けることができたルゥは、頭の片隅で兄弟について考えながらもマイムの処遇についての自分の意見を述べた。


「あ、ごめん。ちょっと、ぼーっとしてた。僕はマイムが『ゴリアテ』に入るか入らないかはマイム自身が決めることだと思うけど、やっぱりお父さんに言った方がいいと思うな。マイムはまだ子供だし、親と一緒に──」


『ルゥ、ごめんな……。父さんと母さんが──』

『俺がもっと──』

『守ってやれなくて……ごめんな』


 ふと思い出されたのは昔の記憶か──。

 今のルゥと同じ年頃の、ルゥと似た狼の青年。


『よく来てくれたね、ルゥ』

『私達のことを本当のお母さんやお父さんと思ってくれていいのよ?』


「──ゥ? おい、ルゥ? どうしたんだよ」

「……え? あ、ごめん…………」

「大丈夫……? 疲れてる? お水、貰ってくる?」

「ありがとうミーシャ。でも、大丈夫だよ。……それで、マイムのことだけど……」


 小さく頭を振って懐かしい声を頭から追いやったルゥは、落ち着きのない心臓の鼓動を周囲に悟られないよう顔に薄っすらとした笑みを貼り付けて今後のことについて話した。


 数日後、ルゥはカザミ率いる『ゴリアテ』の面々に加え、エーテルの探していた甥のマイム、自らの過去を知るミーシャとともに多種動物種族村(リベレッジ)テルカーゾを出立したのだった。

 あっさりとテルカーゾが終わりました。

 マイムの『ゴリアテ』仮入部(?)。入部試験はもう少し後になります。

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