15、渡り
ルゥの裏技で発現した橙色の光を頼りに、無残な姿になったトワイノース拠点を通り過ぎ、北へと向かったカザミは、雑多群デホムの近くの海岸までやって来た。
橙色の光は、普通の動物種族では滑落しそうな崖の割れ目を指し示していた。
周りに誰もいないことを確認したカザミは、岩場の隙間に向かって小声で呼び掛けた。
「カガリ、そこに居るのか?」
気配が動き、岩陰から橙色の光に包まれたカガリが、恐る恐ると言った風に顔を覗かせ、カザミの姿を確認した途端に安堵の表情に変わった。
「よかった……。なんか、急に晶霊石が光ったと思ったら光に包まれて……。せっかくアイツらを撒いたのに、見つかるんじゃないかって、色々考えちまって……。なあ、団長。これ、この光は一体なんなんだよ」
状況を説明しているうちに不安が蘇ったのだろう、眉と尻尾を下げて怯えた表情をするカガリは、乱暴な口調はそのままだったが確かに女の子だった。
そんなカガリの珍しい姿を見たカザミは、あえて揶揄うように慰めたのだった。
「落ち着けよ。いつものお前はどこ行った? んな可愛い顔して……。そんな姿はルゥにでも見せてやれよ。お前のこと、きちんと意識するかもな」
「なっ……!?」
「それに、この現象を起こしてんのはルゥだ。さっさと帰って、その可愛い顔で問い詰めてやれよ」
ぐしゃぐしゃとカガリの頭を搔き撫でて、橙色の光の源がある場所へと走り出した。
「兄貴面しやがって……」
そうひとりごちたカガリは買い混ぜられた髪を手櫛で直してから、カザミに遅れを取るまいと全力で追い掛けたのだった。
まもなくして先ほどの場所へと戻ってきたカザミとカガリは、合成種族の子供達に混ざって地面で寝ているルゥの姿を視界に入れた瞬間、同時にため息を吐いた。特に、ルゥに会ったら開口一番怒鳴りつけてやろうと思っていたカガリは、発散できなかった怒りをどこにぶつければいいのかと、やりきれない表情で拳を握りしめていた。
「団長はん、カガリはん。お帰り」
「あ、団長! ……とカガリさん! 聞いてくれっス! こいつ、俺達が団長の帰りを待ってる間に一人で寝始めたっスよ!」
「あー……まあ、見れば分かるな」
「ちょお、ハヤテはん。そないにおっきな声出したら子供達も起きてまうやないの」
「……悪いっス」
「ふふっ。素直で可愛いなぁ」
「うっせえっス!」
すっかり日も落ちきった今、こうして些細なことで時間を消費している場合ではない。だからこそ、カガリは見知らぬ小熊が一人増えていることに気付きながらも特に話を聞こうとはせず、合成種族の子供達の面倒をアーサーやハヤテと共に見ることに集中したのだった。
団員達の準備が整ったのを確認したカザミは、ルゥとミーシャをシュカに任せて懐から二つの晶霊石を取り出した。大きさはどちらも同じ拳大だが、一つは真円に近く風の力を表す緑色も濃い物。そちらをシュカに渡し、カザミはもう一つの歪な丸をした色の淡い晶霊石をハヤテに渡した。
「行くぞ!」
カザミの掛け声で全員が一斉に飛び上がった。
ハヤテとシュカはカザミから渡された晶霊石の力を補助力にして飛んでいる。一見すると合成種族の子供達8人とカガリの合計9人の制御をしているハヤテの方が大変に見えるが、ハヤテはあくまでもシュカの補助でしかない。実際はシュカがほど全員を運んでいるのである。
風の力を持つカザミでさえ、自分の懐に入っている晶霊石を使ってはいるが、シュカの操る風の威力の底上げくらいの仕事である。自力で飛んでも良いのだが、カザミが得意とするのは瞬発的な高火力であり、持続的な力の使い方は苦手としている。
空を飛ぶことを日常としているアーサーでさえ、シュカの操る風に乗っている始末である。
そんなシュカは瞬発力や爆発力はないが、力を持続、継続的に行使することを得意とし、戦闘においても殲滅はできないが多方面に権勢を掛けるなどしてカザミやアーサー、カガリが戦い易い状況を作ることに長けているのだ。
そして、飛び続けることおよそ一時間半。
距離にして120キロメートルを一気に渡ったカザミ達は、息をつく暇もなくフォロビノンの拠点である動物種族村テルカーゾのある方角へと足を向けるのだが、シュカは再び翼を広げて体を宙に浮かせた。
「ほな、シズクはんを迎えに行ってくるわ」
「悪いな……っ頼む……」
飄々とした態度のシュカとは真逆に疲れの滲んだ声で答えたカザミは、同じように疲れを滲ませているアーサーやハヤテ、彼らに連れられている合成種族の子供達、未だ寝ているルゥと、ルゥを支えているミーシャとカガリを引き連れて歩き出した。
なんかぶっつけ感が拭えない回になってしまいました……。
しかし、ようやくルゥ達は次の大陸に渡りましたね。ネロ達は置いてけぼりですがw
まだ、この大陸の話は終わりませんが、次は珍しい視点でお送りしたいと思います。




