1、記憶の鍵が開く音
カザミに連れられたルゥは、トワイノース大陸唯一の森林地帯へとやって来た。
森林地帯と言っても五年以上前の火事で殆どが燃え、木々が生い茂っているのはほんの僅かである。その、ほんの僅かな木々の間に、大きめの丸太小屋が建っていた。
近くには作物が育てられている畑もあり、視線を少し動かせば焼けた大地が見えるにも関わらず、その荒廃した土地に似つかわしくないほどの生活感が漂っていた。
「到着っと。ここが、俺たち『ゴリアテ』のトワイノース支部だ」
「支部?」
「四つの大陸それぞれに俺たちの拠点があるんだよ。センティルライドは本拠地。他は仮拠点、支部とか呼んでるだけだ」
「へぇ……」
「ちなみにこの話は前もしたはずなんだけどな」
「そうだっけ?」
「冗談だ。この話は初めてした」
したり顔のカザミに、揶揄われたと気付いたルゥは視線を鋭くした。
「そんな怒るなって。ただ……カジュカの時のお前の反応がな……。本当に記憶がないのか確かめたくって」
ここでルゥは否定することも出来た。
しかし、カザミの表情が確信的なものだと悟ったルゥは素直に肯定したのだった。
「僕、記憶がないんだ。ちょっとずつ思い出してるけど……」
「どこまで思い出してる?」
カザミの質問に少しだけ逡巡した後、自分の中で整理するように順を追って話し始めた。
デューズアルト大陸のテラリアの森で目を覚ました時には何も覚えていなかったこと。
そこでネロと出会ったこと。
多種族都市ケイナンで記憶を取り戻す旅にについて聞かされたこと。エーテルとはそこで出会ったこと。
多種族町カジュカに向かう途中の雑多群ジュームで受けた仕打ちのこと。
カジュカでカザミに出会ったこと。その時に自分が第三種族だと思い出したこと。
第三種族として力を使ったその夜に、燃え盛る炎の中に立つ自分の映像が浮かんだこと。
トワイノース大陸に渡る船でモエギと出会ったとこ。
モエギを見て、とても悲しい気持ちになったこと。
大サボテンの下で、トワイノースが自分の故郷のある大陸だと思い出したこと。
懐かしさと後悔が一緒になって襲って来たこと。
多種族町ムルドについて、以前来たことがある気がしたこと。
再びカザミに出会い、声を聞いて、本気で戦ったことがあるということ……。
「……本気で"戦う"っつうか、あれはお前の一方的な……なんだ? 粛清は向こう側だし……なんて言やあ良いんだ? とにかく、あれは戦いじゃない。喧嘩でもないし、相手は俺じゃないし。でも、確かに俺から……俺らからしたらお前は正義だったぜ」
カザミの言葉を聞いて、ルゥは頭の中で記憶の鍵が開いた音を確かに聞いた。
新章突入です。
別行動が増え、ルゥの周りに様々な人物 (ヒトではない)が登場します。
書き分けが大変ですが、頑張ります。




