ネロの想い 7
ルゥの記憶が戻りつつある今、もたもたしていられないと出来ることなら二度と行きたくない風の祠……シルフであるアイネが囚われている場所までわざわざ来たんだけれど…………。やっぱりもう二度と来たくないわね、こんな場所。
地下の洞窟とはいえ、アイネの力で空気は十分あるから息苦しくはないんだけど、シギルの力が働いているのか、どうにも圧迫感がある。
──高圧的で、自分の思い通りにならないと駄々を捏ねて無駄に力を奮う。確かに、シギルの言い分も想いもわかるけれど、力の使い方が間違ってるのよ!
アイネと少し話して、味方にはならないけれど敵にもならないと言われた。
予想していた通りの答えに、この場所を見つけたときよりも安堵したようながっかりしたような気持ちが重くのし掛かった。
それでも私は進むことを止めない。諦めたりはしない。
檻の細工は本当に意味のないものだけれど……私の想いがアイネに伝わればいい。あの子を取り戻して、昔みたいにみんなで…………。
楽しかった頃に想いを馳せていると、いつの間にかアイネに空気の膜を張られ、強制的に祠の場所まで連れ帰らされた。
──まあ、話したいことは話せたから良いけど……。なんだか癪に障るのよね。
意外と時間が経っていたらしく、日が傾いてしまっていることもイライラする原因のひとつかもしれないわね。
すっかり乾いていた外套を鞄から取り出し、いつものようにフードを目深に被って多種族町ムルドの中心部へと向かう。
愛おしいあの子と、お節介だけど懐かしい気持ちを思い出させてくれる旅の仲間。そして……嫌なことを思い出すけれど、憎めなくなりつつあるあの子の元へ。
日が落ちきる前に戻らなければと歩みを早めた。
──なんだか落ち着かないのよね。アイネに会った所為かしら?
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「ねえ、ルゥはどこに行ったの?」
帰ってきて早々、愛おしいあの子の姿が見えないことに気付いた。むしろ、遠目からでもあの子がいないことには気付いていた。
決して狼狽える姿を見せてはならないと、心を鎮めて冷静に問い掛けた。
色々面倒な話を聞いた気がしたけれど、聞き捨てならない言葉が出てきて霞みがかっていた思考が途端に晴れ渡った。
それからは急いで行動したわ。
あの子がいない事が、何よりも不安だった。
クライスと二人で旅をしていたときも、ルゥを探し出すまで不安で不安で仕方なかった。
黒石1枚でわかるのなら……とも思ったけれど、どうやらその必要もなさそう。
でも、この世界は変わりつつあるのは確かね。
『箱』という新しい通貨単位に、神子という役職。先祖返りのような特殊な動物種族。精霊種族の絶対数の変動。
シギルとクライスは何をしているのかしら?
……あの子を下界に落とし、私の力を奪い、そしてアイネを閉じ込めた。
アイネがなぜあんな場所に閉じ込められたのかは大体の予想はつくけれど、なんでエルデの力が増しているのかが分からないわね……。
シギルが暴走しているのならわかるけれど、クライスが近くにいて勝手させているのは不自然だわ。クライスは、シギルより力は劣っても、だからこそシギルよりも冷静で、彼女の暴走を抑えていたはずなのに……。
ここにきて、分からない事が多くなってきた。
ルドルフという狐の青年。
私の知らない、ルゥの過去……。
──わからない。ルゥが…………。
フー……。
私達の大切な、太陽。
待っていて。
全部、私がなんとかしてあげるから。
貴方は、ただ笑ってくれていれば良い。
私の、隣で……。
これにて多種族町ムルドは終わりです。
今後も別行動が続きます。
早く集合してくれw




