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箱庭の記憶 〜君の記憶は世界の始まり〜  作者: トキモト ウシオ
トワイノース大陸 多種族町ムルド
44/171

3、楽しい仕事

 満足のいく昼食を終えた三人は、多種族町(ネオリブタウン)ムルドの中心部へと戻ってきていた。

 広場という広場はないが、朝から昼に路肩に天幕を広げていた店は既に畳まれ本来の道幅である広さが取り戻されていた。


「この辺でいいか……」


 そう言って(おもむろ)に背負っていた荷物を道端に置いたエーテルを見て、ルゥは楽しそうにエーテルが無言で渡してきた袋を素直に受け取って口をしっかりと広げた。


「一体何を始めるです?」

「昼食に金を使ったから、旅費を稼ぐのさ」

「エーテルは凄いんだよ! モエギはお客さんと一緒に見ててね!」


 ウィンク付きで誇らしげに言ったルゥは、自身も期待のこもった眼差しをエーテルへと向けた。しかし、エーテルの表情は過度な期待を持たせるような言い方をしたルゥに複雑な笑みを浮かべていた。


「期待にちゃんと応えられるかわからないけど、まあ、精一杯やるさ……。さあさあ、そこ行く皆さんお立ち会い! アタシがこれから披露するのは、デューズアルト大陸で有名な曲芸一座でも中々お目にかかれない、とっておきの技! 見てって損はさせないよ! 気に入ってくれたなら、そこの可愛い狼くんが持ってる袋の中に心ばかりのものを入れてってくれ! さあ、ショーの始まりさ!!」


 リンゴも卵も持っていないエーテルは、リュックの中から食器や調理器具を取り出して器用にお手玉を始めた。

 始めは疎らだった客足も、ルゥの「ちょっとで良いから見てって?」という可愛らしい誘いに引き寄せられて歩みを止め、「ちょとだけ」のつもりが宙を舞う食器や調理器具にいつの間にか見入ってしまい、狭い道幅いっぱいに人が集まるほどにまで拡大していった。

 しまいには未だ店を広げていた店舗が、自分も客として参加しようと率先して店を畳んだ事によって、より広い場所を提供したのだった。


「ルゥくん、エーテルさんは凄いです!」

「うん! エーテルは凄いんだよ!」

「ほらルゥ! 喋ってないで仕事手伝えって!」

「はーい! えっと…………なんだっけ?」


 元気よく返事をしたにも関わらず、やらなければいけないことをすっかり忘れてしまったルゥはエーテルだけでなく観客までもズッコケさせた。


「あのなあ……ルゥが今、手に持ってるその袋はなんなのさ」

「あっ! そうだった。えっと、みんな! エーテルが凄いと思った人は、ここに石貨(せきか)とか食べ物とか入れてくれると嬉しいな」

「あはははっ! んじゃ、早速オッチャンが食用サボテンを3つくれてやろう!」

「私は……奮発して灰石(かいせき)5枚入れてあげる。それと、これは可愛い狼くんへ個人的な贈り物よ」


 ルゥが声を上げたそばから次々と袋の中へ食べ物や石貨が入れられた。その中で、猫の女性がルゥに特別手当として灰石1枚を握らせた。

 困惑するルゥに女性は「良いから」言って他の客の方へと押し遣るように送り出されてしまったのだった。


 ──あのお姉さん、顔が赤かったけど……なんでだろう? 僕を好き……なのかな? うーん、よく分からないや。


 変に聡いはずのルゥも、初対面の相手から向けられる好意については理解できないようだった。しかし、遠目でもしっかりとルゥの姿を目で追いかけていたエーテルやモエギは彼女の行為にきちんと気付き、呆れや嫉妬の表情を浮かべたのだった。


 その後も数人から特別手当を受け取ったルゥは、一周してエーテルのところへ戻る頃には白石(はくせき)1枚と灰石5枚が貯まっていた。


「僕にだけって渡されたんだけど……」

「それはルゥが貰ったものだから、ルゥの好きにしたら良いさ。ネロに渡しても良いし、好きなものを買うのも良い」


 手に持っていた石貨を悩ましげに見ていたルゥに、エーテルからそう助言が与えられた。

 ルゥはとりあえずズポンのポケットにしまっておく事にした。


 ──きっと僕は上手に使えないから、ネロにあげよう!


少しだけ重みの増えた体と、まだまだ続く大道芸に笑みを深くしたルゥは新たな技を披露して喝采を浴びるエーテルの呼び声を受けて、自らの仕事へと戻っていったのだった。


 エーテルの大道芸とマジックが終わり、二人の手元には大量の石貨とこの大陸ならではの珍しい品々が集まった。

 食用サボテンが3つ。小さなサボテンの花が1株。砂漠のバラ。乾燥させたラクダの肉。乾燥させたリンゴとブドウなども入れられていた。

 あとは卵が4個。小麦粉が約200g。250mlの水袋1つ。

 石貨の内訳は白石8枚と灰石32枚がエーテルの稼ぎで、白石1枚と灰石16枚がルゥの個人的な稼ぎとなった。


「結構稼げて良かったよ」

「うん! 僕もいっぱい貰っちゃった!」

「二人とも凄いです!」

「そうでもないさ。それより、モエギは今後の生活費をどうするつもりなんだ?」

「え?」


 昼食代もそうだったが、このままちゃっかり他人の支払いで旅を続けそうなモエギにエーテルがスバリと問い詰めた。

 それに対してモエギは誤魔化すように笑ったあと、下心を払拭するように胸を軽く叩いて自慢げにこう言ったのだった。


「モエギは、薬を売るです!」

 相変わらずサブタイトルに悩む日々。

 書き進めていつもよりも長くなってしまったので、良い感じに二つに分けたために微妙はサブタイになってしまった……。もしかすると、サブタイの変更があるかもしれない……し、ないかもしれない話です。

 エーテルさんのマジックショーは一回書いた話なので、読者様からすれば面白みに欠けると思いますが、ネロの居ない中でもルゥがしっかりとやっている、ということを頭の隅に置いていただければと思います。


19,8,24 誤字修正。

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