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箱庭の記憶 〜君の記憶は世界の始まり〜  作者: トキモト ウシオ
トワイノース大陸 多種族町ムルド
43/171

2、楽しい宿屋探し

 ネロと別れたルゥは、喧嘩したままと言うことや事情を何も話さず、行き先も告げずに別れたことへの悲しみを一切(おくび)にも出さないで、多種族町(ネオリブタウン)ムルドを満喫していた。


「エーテル、エーテル! あれ! あれ何?」

「あれ? ああ、あれはサボテンステーキさ。ムルドの名産品らしいね」

「ステーキ!? 食べたい!!」

「モエギも気になるです! っあ! じゃあじゃあ、あっちは何です?」

「あれは(さそり)の丸焼きだ」

「蠍って、あの蠍ですッ!?」


 砂と風が舞うムルドは、飲食物を売る屋台は全て天幕の中で営業している。

 天幕の外に木製の看板で『ムルド名物』、『おすすめの料理はこれ!』、『冷たい飲み物』といった客寄せの文句が書かれ、現物が見られなくても注意を引くような上手い書かれ方をしていて、宿屋を探しながらも、ルゥとモエギが目についたものをエーテルに尋ねてはそれぞれ純粋に反応を返す二人に、町の住人も微笑ましい表情を浮かべたのだった。


「食べてみるかい?」


 そんな二人に、逆に誘われたのだろう。サボテンステーキを売っている天幕の中から蜥蜴(とかげ)の動物種族の男が試食用にと一口大に切られたサボテンステーキを持って出てきた。

 ありがたく受け取った三人は、ほかほかと湯気の立っているサボテンステーキを口に入れた。


「ッうまっ!」

「熱っ……はふっはふはふ……ん! 美味しいです!!」

「……うーん? 思ってたのと違う。 ステーキなのに草の味がする……」

「そりゃそうさ。"サボテン"ステーキなんだから」


 動物種族は喜怒哀楽が耳や尾にすぐ現れるため、感情を読み取りやすい。特に大人になりきれていないルゥとモエギは周囲の目を和ませた。


「はっはっはっ! 狼のにいちゃんはこっちの方が良いか?」


 そう言って鳥の動物種族の男が自らが出店している天幕に入り、蠍の丸焼きを差し出してきた。

 モエギとエーテルは見た目の奇怪さに全力で遠慮していたが、ルゥは好奇心と鼻腔をくすぐる芳ばしい匂いにつられて恐る恐る口の中に放り込んでゆっくりと咀嚼(そしゃく)した。


「っ美味しい! エーテル、モエギ、これ、すっごく美味しいよ!」

「それは……良かったな……」

「モエギは絶対無理です……」


 パリパリと音を立てながらサソリの丸焼きを美味しそうに食べるルゥを見たエーテルとモエギは青い顔をして顔を背けていた。

 その後もちょくちょく試食を挟んでは安くて良い宿屋探しと、時々エーテルの甥であるマイムと義兄のエリクの行方についての情報を収集しつつ、ムルドの中心をすぎたところまでやって来た。


「なかなか良い宿がないね」

「そうだな。マイムの目撃情報も全然ないし、早くしないとネロが帰ってくる。その前になんとか宿屋は探しておかないと……」

「安い店はあるですのに、なんでどこも大部屋で雑魚寝です?」


 モエギの言うように、ムルドの宿屋は大部屋で雑魚寝が主流である。

 今ほど水の供給が簡単ではない昔、少ない水を皆で分け合うために普段から色々な物事を共有して来たムルド。大人数が同じ部屋で生活を共にすることによって"共有"という精神を根付かせてきた。

 それに、ムルドの気候はトワイノース大陸の中でも特に高い。

 今ではシルフの加護により空気の流れができて快適に暮らしていけるようになっているが、暑さに弱い種族はとてもじゃないが1日といられない環境である。だからこそ、部屋を小分けにするのではなく大きな部屋で空気の流れを遮らず眠るのである。

 その情報を思い出したエーテルが途切れ途切れに話すと、モエギが「ここまで探し回ったのに……」と肩を落とした。


「アタシは雑魚寝でも良いと思うんだけどね……」

「ネロは嫌がると思うよ?」

「だよなあ……」

「なんでです? モエギも雑魚寝で良いですよ? それに、場所によってはちゃんと間仕切が置いてあったですよ」


 案にこれ以上探し回りたくないと言っているモエギに対し、ルゥはまっすぐ彼女の目を見て説得を始めた。


「ネロはね、今まで旅して来た中で辛い目にいっぱい遭ってきたんだ。詳しいことは話せないけど、ネロのためにもう少し頑張って探そうよ」

「はい、ですぅ……」


 愛しのロビンフッドに説得され、モエギは簡単に頷いた。


「じゃあ、もうちょっと頑張ろう! ね、エーテル?」

「あ、ああ……」


 にぱっ! と効果音がつきそうなほど無邪気な笑顔でエーテルに同意を求めたルゥを見て、エーテルは若干引いた笑顔を見せたのだった。


「ひとまず昼でも食べて英気を養ってから、旅費を集めて宿屋探し再開するか」

「わーい! ご飯だご飯!」

「モエギはサボテンステーキが食べたいです!」

「お肉! お肉が良い! お肉肉肉、おっにっく!」

「わかったわかった。どっちも食べられそうな店を探すよ」


 モエギの元気につられたルゥは子供みたいにはしゃいで、エーテルの表情を『手のかかる弟・妹を持った姉』の苦笑いへと変えたのだった。

 一日遅れで投稿です。

 ルゥがモエギという存在によって徐々に成長しています。しかし、やはりエーテルの前では弟キャラですね。

 そして、ルゥには『あざと可愛い』を目指してもらっています。

 某スクールアイドルのツインテ三年生の男版……。はいすみません。


19,8,24 誤字脱字修正。

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