表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
箱庭の記憶 〜君の記憶は世界の始まり〜  作者: トキモト ウシオ
トワイノース大陸 サボテンの行商道
33/171

5、女子の会話

 翌日、日が昇りきる前に目を覚ましたネロは、すでに起きて朝食の支度をしていたエーテルと、彼女の手伝いをしているモエギ、未だに外套に包まって眠ったままのルゥを見て首を捻った。


「……ルゥ、まだ……ねてるの? ふぁ……ぁあ」

「ああ。アタシ達のために火の番をしてくれてたみたいだ」

「火の……ばん……?」

「はいです! 朝起きた時、焚き火がついていたですから、ルゥくんが夜起きて薪を足してくれたですよ、きっと!」


 確かに、昨日のうちに()べた分では朝まで火は保たない。寒さに弱いルゥが夜中に目覚めて薪を足したとしても不思議はない。

 寝起きでうまく働かない頭を動かしてそう結論付けたネロは、のろのろとした緩慢な動作で身なりを整えつつエーテルの作る朝食を待った。


「ネロちゃん、寝てるです?」


 座った状態でゆらゆらと危なっかしく船を漕いでいるネロを見て、モエギがエーテルの方を見ながら言った。それに対してエーテルは眉尻を下げて諌めるだけにとどまったのだが、ネロ本人が舌ったらずに明確な答えを示したのだった。


「……おきてる…………わよ……」

「起きてるとは言わないと思うです」

「……う……さい……」


 再び夢うつつの狭間で返答をするネロに、エーテルと萌葱は顔を見合わせ声を出さずに笑い、朝食の続きを作ることにした。


「あの象の男もいつの間にかいなくなってるな……」

「そうですね。あ、モエギ、卵は半熟が良いです」

「昨日の今日だけど、気温が気温だからしっかり焼かないと大変なことになるからしっかり焼くぞ。……にしても、どこか行くにしても一声掛けてくれれば良いのに……」

「あの象の人です? なんでそんなに気にするです?」

「あ、いや……まあ、似てるのさ。アタシの初恋の人に」


 料理をしながらするのは女子同士特有の会話。

 年上のエーテルが気を利かせ、出会って間もないモエギとの会話を盛り上げるために少ない引き出しから漁りに漁ってその話題を出したのだろう。歯切れが悪くも話し続けた結果、思春期真っ盛りの少女には良い話題で、静寂に包まれたぎこちない朝食作りにならずに済んだようだ。


「エーテルさんの初恋! 素敵です!」


 食いつく勢いで話に乗ってきたモエギの声に寝ぼけていたネロの思考が少し回復したようで、軽く伸びをして二人の会話に参加してきた。


「ん……んー! ぁふ……。盛り上がってるわね。なんの話をしていたのかしら?」

「エーテルさんの初恋の話です! 恋バナです!」

「恋バナ、ね……」


 参加した割には興味なさそうなネロに、モエギが噛み付いた。


「ネロちゃんの初恋はまだそうですね」

「モエギ、その言い方は……」

「初恋とか、そんな甘ったるいものはとうのとっくに終わっているわよ。私は、そんな甘ったるい関係なんて望んでいないもの」


 棘をふんだんに使ったネロの言葉は、モエギを突き放す──どころか、逆にしっかりと斜め上に突き刺さってしまったようで、興奮気味に前のめりになってネロに迫りつつ"甘ったるくない関係"について聞いてきた。


「それってつまり、恋の上をいく愛です?! 相手は一体……はっ! もしかしてルゥくんです?! ダメですよ! ルゥくんはモエギのロビンフッド様なのですよ! ということで、今後の参考に是非とも甘くない関係とやらを詳しく聞きたいです!!」

「…………遠慮するわ」

「なぜです? 幼いながらも深い愛を知ってるネロちゃんの恋愛観を聞きたいです!」

「確かに、それはアタシも気になるね」


 エーテルまでもモエギ側についてしまい、これは何か話さないとずっとこの話題について(つつ)かれるだろうと嘆息したネロは、意を決したように姿勢を正して話し始めた。


「私のこの気持ちは、愛とか、ましてや恋とか、そんなものじゃ測れないのよ。一緒にいて当たり前だった。文字通り、世界の一部なのよ」


 想像して以上に深く大きい相手の存在に、好奇心丸出しで聞いてしまったモエギは何も言えなくなってしまったのだった。


「過去形ってことは、相手はルゥじゃないのか……?」

「そうよ。ルゥではないわ」

「会えない相手なのです?」

「……分からないわ。彼を取り戻すのが、この旅の目的と言っても過言ではないのよ」

「それは……」

「それは貴女もでしょう? エーテル」

「そう、だけどさ……。アタシのとは、なんか、言葉の重みが違う気がしてさ……なんて言って良いのか分からないな」


 エーテルの言葉をさらって話題の中心を自分から逸らしたネロは、モエギの追求の矛先をそのままエーテルと向き続けるように誘導していった。


「一緒よ。貴女はどこにいるかも分からない甥と義兄を探しているのでしょう? ……そういえば、あの象の男、貴女の探しているそのお義兄(にい)さんに似てたわね」

「そうなのです?!」

「あ、ああ……まあ……」

「と言うことは、エーテルさんの初恋の相手はお義兄さんなのですね!?」


 エーテルにとっては突っ込んで聞かれたくない話だっただろう。しかし、ネロの思惑通りモエギは聞きにくくなっていた『少女の特殊な恋愛観』よりも幾分聞きやすくなっただろう『初恋は禁断の相手』に標的を乗り換えた。

 元はと言えばエーテルが初めに話題の提供をしたのだ。今更「この話はやめよう」と言い出せないでいる。

 モエギをどう納得させるか考えているエーテルを司会に収めながらも、ネロは象の男から聞かされた日の精霊種族の現象について思いを巡らせていた。


「んー……? 良い匂いがする……。朝ごはん、できたぁ?」

「ルゥ! ちょうど良い!」


 エーテルにとっては鶴の一声だった。


「そう言えば、朝ごはんを作ってる途中だったです!」

「すっかり忘れてたわね」


 自分の寝起きの発言で全員の意識が朝食に向いたことなどつゆも知らないルゥは、作りかけの状態の朝食を見て小さく鳴いたのだった。

 ルゥ抜きの話でした。

 男が居ない中で話す女子の話ってこんな感じなんでしょうか? トキモトは良く分かりませんw しかし、これで全員の旅の目的がはっきりしましたね。

 ルゥは記憶を取り戻すため。

 ネロはとある人物を取り戻すため。

 エーテルは甥と義兄を連れ戻すため。

 モエギは黄金のリンゴを手に入れるため。


 しっかりと書き分けていきたいと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ