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箱庭の記憶 〜君の記憶は世界の始まり〜  作者: トキモト ウシオ
トワイノース大陸 サボテンの行商道
30/171

2、灼熱と大サボテン

 船着場から西へ歩き続けること一時間。

 日射病を避けるために干からびそうなほど暑い砂漠の中、外套とフードをすっぽりと被ってひたすら進む一行は、未だ多種族町(ネオリブタウン)ムルドはおろか多種族動物村(リベレッジ)雑多群(リグレ)すら見当たらない黄土色一色の景色に、ネロ以外の全員が疲弊(ひへい)しきっていた。


「ネロ……、少し、休もうよ……」

「……賛成。暑くて、死にそうだ……」

「み、ず……。水、浴びしたい、れすぅ……」


 この場にいるのがルゥとエーテルだけなら、ネロは躊躇(ためら)う事なく精霊種族としての力を使って水を出すことができたのだろうが、ネロが精霊種族であると知らないモエギがいる。

 ルゥは見渡す限りの砂地を見遣り、ネロはこれを予想してモエギの動向を拒否したのだろうか、と今更ながら思ったのだった。


「もう少し頑張りなさいよ。あと少ししたら大きなサボテンが見えてくるから、そこで休みましょう」

「ネロ、ここに来たこと、あるの?」

「……ずっと前にね」


 まるで来たことがあるような口ぶりで話すネロの背中は遠く、昔を懐かしむような寂しげな空気を醸し出していた。


 ──これも、昔の僕なら知ってたのかな……。


 疲労の所為で、いつもならすぐに吹っ切るはずの小さな悲しみも、心の奥にズシリとのしかかって不快感を与え続けていた。


 それ以降は誰も口を開くことはなく、ネロの言う大サボテンが見えて来てやっとモエギが嬉しそうな声を上げた。


「あ、あれ……! ネロちゃん! あれです?!」

「また、ちゃん付けで呼んだわね……」

「モエギ、元気……だな……」

「そう、だね……」

「ん? ルゥ、いつもよりも……元気がないね。やっぱり、流石のルゥでも、疲れたか?」

「……うん。ちょっと、疲れちゃった」

「はいはい。あんまりはしゃぐと、辛いわよ。影は見えてるけど、まだまだ遠いんだから」


 ルゥは心配そうにこちらを見ているエーテルに力なく笑みを返し、トワイノース大陸に着いてからどこか先を急いでいるようなネロから隠れるようにフードを深く被り直した。


 それからはネロの言った通り、見えているはずの大サボテンになかなか辿り着かない。確実に近づいているはずなのだが、目標物が大きすぎて近づいている感覚が薄いのである。

 やっと辿り着いた大サボテンは、周囲を僅かばかりの緑に囲まれた全長10メートルはありそうな弁慶柱(ベンケイチュウ)で、ルゥ達の他にも小休止をしたり待ち合わせをしたりなど、様々な顔があって意外にも賑やかであった。


「や、やっと……ついた、れすぅ〜」

「はぁ、疲れた〜……」

「そうね。流石に、ちょっと飛ばしすぎたかしら」


 フラフラで立っているのも限界だったらしいモエギは僅かばかりの緑の絨毯の上に倒れ込み、ネロとエーテルは()えて砂地に腰を下ろした。

 その中でルゥは腰を下ろすこともなく西の方角を見つめ続けていた。

 西の地平線では日が落ち始め、もうすぐ夕暮れに差し掛かろうとしている。つまり、ルゥの向いている方向は太陽の光を正面に捉えていることになるのだが、フードを目深に被っているルゥは身じろぎもせずただただ太陽が沈んでいく方角を見続けた。


「ルゥ、何を……どこを見ているの?」

「うん……」


 ネロの不安げな問いに答えにならない答えを言ったルゥは、風が揺らすフードの下で真剣な顔をしていた。


「西の方角って、何があるんです?」

「トワイノースの西にあるのって確か岩山……だっけ? この大陸唯一の森林地帯も西の方角だったような……」

「エーテル、私達が向かうのは南西にあるムルドよ」

「それは船の中で聞いたから知ってるさ。なんで今その話を…………あーそうだね。アタシ達が行くのはそっちだそっち。ほら、ルゥ。あっちの方角だぞ」


 エーテルの急な会話の方向転換とともに体の向きも帰られたルゥはされるがままだった。

 それになんの反応も返さず、ネロとエーテルはルゥが立ったまま気絶しているのではないかと心配するほどだった。


「ちょっと、ルゥ!?」

「……ん? どうしたの?」


 ネロの切迫した呼びかけにやっと反応を返したルゥは、それまで目深に被っていたフードをあっけなく外して、あどけない表情で小首を傾げた。

 その様子にネロとエーテルはがっくりと項垂れたのだった。


「もしかして寝てたの?」

「んー……疲れてぼーっとしてた?」

「なんで疑問形なのさ」

「僕にもよくわかんないや」

「ルゥ、本当に大丈夫? 頭痛いとか、ない?」

「大丈夫。大丈夫だよ」


 心配を前面に出してこちらを伺っているネロに、ルゥはなんでもないように笑って言った。


 ──きっとネロは納得してない。けど、それでも僕はなんでもない顔をして笑うんだ。この、言い表せない不安と、体の奥から湧き上がる興奮と、泣きたくなるような懐かしさに、今だけ見ないふりをして……。

 灼熱と大サボテン……。そのままのタイトルです。

 今後は捻りも何もないタイトルが続きます。

 ぶっちゃけ、トキモトはタイトルを考えるのがとても苦手です。暑いのも苦手です。

 生暖かい目で見てくださいw


 20.5.10 誤字脱字修正

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