3、神探し
ネロが『始まりの精霊種族』達に与えた仕事は、アイネと共にシギルとクライスという二人の居場所を探る事であった。
本来なら彼らが今いるフォロビノン大陸ではなく、センティルライド大陸へと渡ってからやってもらいたかった仕事なのだが、彼女達をおとなしくさせるには相応に時間も労力も掛かる仕事を与える必要があり、それには「神探し」が一番適切だった。
「じゃあ、私達は行くけれど、くれぐれも手を抜いたりしないでよ」
「分かってまーす」
「善処する」
「私がいるからぁ、問題ないと思うけどぉ?」
「ネロの頼みで俺様が手を抜くなんてありえないぞ!」
「ネロの頼みというのは癪ですが、ラウディの名誉の為にも力を尽くしますわ。それに、そこの猿のおかげで栄養補給も十分ですし」
気合十分な『始まりの精霊種族』に呆れ顔のネロを横目に、ルゥは微笑ましい笑みを浮かべていた。
ネロは自分のこと以外に対しての興味が薄い。むしろ遠ざけようとしている節がある。
それがルゥの持っているネロの対人関係に関する感想である。
──ネロが信じているのは自分と神様と僕。あと、信用してるかは分からないけど、アイネにも気を許してるみたい。
精霊種族達とは「仲良く」とまではいかずとも、それなりに付き合いがある。
ルゥがカザミ達と行動を共にし、サラマンダーとして行動していた間、ネロに何か心境の変化があったのかと、親離れにも似た寂しい気持ちが生まれたルゥだった。
「はいはい。それじゃあ行くわよ」
「うん! マイムとミーシャと、あとエーテル!」
「ルゥ、アタシの名前……」
「だってエーテルっていう名前でしょ? あ、モエギも行くんだっけ?」
「ルゥ君っ! モエギ、感激で前が見えないですぅ〜」
感激しているエーテルともえぎを他所に、ネロは真剣な表情でルゥのことを伺っていた。
それを視界の端でしっかりと捉えていたルゥは、そんな心配性のネロに向かって太陽のような笑顔を見せた。
「記憶が戻ったわけじゃないよ? ただ、いつまでも他人行儀なのも変でしょ?」
「……それは、そう……ね」
太陽のような笑みを浮かべて言うことだったろうか?
それと、他人行儀という難しい言葉がルゥの口から放たれたことに違和感や疑問を抱いたのはネロだけではなく、すぐそばにいたミーシャや彼らのやりとりを見守っていた『ゴリアテ』の面々も首を傾げたり眉根を寄せたりと、それぞれが煮え切れない表情をするのだった。
「ネロちゃぁん。早く行かないとぉ、こっちの仕事が先に終わっちゃうわよぉ?」
「そうですよー。ネロはルル達の力を甘く見過ぎですよー」
「簡単な仕事」
アイネとルルディ、リバディに茶々を入れられたネロは大きなため息を吐き出した。
「分かったわよ。ルゥ、多種族町ディエチに行くわよ」
「うん!」
「ミーシャとマイムはくれぐれも足手纏いにならないように気を付けてちょうだい」
「……このチビ、むかつく」
「エーテル。甥っ子の教育はしっかりしなさい」
「分かったよ。アタシがしっかり面倒見るから、そんなカリカリすんなって」
マイムの頭を軽く叩いて注意をしながら、エーテルが苦笑いで了承した。
そうして準備が整ったルゥ、ネロ、エーテル、モエギ、ミーシャ、マイムの6人は、一路多種族町ディエチに向かって歩き出したのだった。
久しぶりの更新です。少し書き方が変わっているかもしれません。
ルゥがまたエーテルさんとモエギと仲良くするターンが始まります。