2、神様のお話し 2
そして、楽しい出来事の後に必ずやって来る終わりの時。
小さな世界は少しずつ発展を遂げ、人間が火の扱いを兵器へと昇華し始めた。
兵器を用いて覇権や土地、物資を巡って争い出した。それだけならまだしも、山を切り開き、海を埋め立てて神の愛した自然溢れる世界を壊し始めた。
急速に近代化が進んだのだ。大地はコンクリートとアスファルトによって塗り替えられ、川や海は面積を減らし、汚染物質によって変色し生物が減少・絶滅。空は高いビル群によって覆われ、化学物質の雨が降る。
「なんということだ……。我の世界が、弱き者によって蹂躙されていく……。火の扱いをここまで進化させるとは、恐ろしいものだ。生活していく上で必要だからとそのまま知恵として授けたのが間違いだったのか」
「大地が……。俺の大地が、燃えていく」
「あんなに美しかった海が…………」
「ええ。瞬く間に大気が汚れてくわ」
「この状況、どうするの?」
破壊されていく小さな世界に、サラマンダーは謝罪を口にした。
自分の所為だと。世界を壊して申し訳ないと……。
神は謝るサラマンダーをなだめるが、そんな神の言葉を否定するようにノームが静かに怒りを口にした。
「管理を怠ったお前の責任だ」と。
小さな世界を愛していたノームは、この世界が壊されていく現状を見ることが耐えられなかった。
ウンディーネが世界を巻き戻すこと提案するも、二人の神は申し訳なさそうに首を横に振った。
「ここまで来てしまったのなら作り直す他ない」
「過干渉しないように定めたのは僕達だし……。僕らにも責任はあるから、出来るなら僕も元に戻したいけれど、そこまでの力はないんだ。ごめんね」
そう謝る神の言葉を聞いたノームは、普段の冷静さを何処へおいて来たのか、彼はなおもサラマンダーを責め立てた。
「俺達はきちんと管理していた。地震も、洪水も大雨も台風も種族が滅ぶまでは許さなかった。それがどうだ? お前は、火山の管理はそこそこしていたようだが、銃火器だと? 鉄を溶かすのもお前、銃から鉛玉を打ち出すのに必要な火薬の動力もお前。おかげでこの世界は瞬く間に、文字通り火の海だ! 全部お前の所為だろう!」
「ノーム、落ち着け。我の……我らの落ち度だ」
「そんなことない。神は、俺達を作ってくれた。そんな神に落ち度などあるはずがない」
盲信や狂信に近いノームの言い分に、神は静かに事実を語り始めた。
「我一人だった頃は、世界を元に戻すことも可能だったのだ。しかし、世界が彩りを持ち、生き物の生活を見ているうちに、我も番いが欲しくなってしまった。力を分けたことで、我は万能ではなくなってしまったのだ」
一人ぼっちの寂しさを、万能感を代償に埋めた神──シギル──。
神がなぜ一人で真っ白な世界に居たのか、それは神以外には誰にも分からない。
唯一神でも絶対神でもない神には、自分のいる真っ白な世界と、目の前の小さな世界以外のことは何も分からないのだった。
短いですが、これで神様のお話しは終わりです。
シギルとクライス、そして四大精霊達の重要な過去の出来事でした。