6、二人の神様 2
子供にとっては退屈で眠くなる話にぐっすりと寝てしまったマイムを見て、このままならルゥも寝るかもしれないと思ったネロは、もう少しだけ難しい話を続けることにした。
「彼女に連れて行かれた彼がどうしているかは分からないけれど、彼女の元で自由な生活が送れているとは到底考えられないわ。最悪、力そのものを封じられて文字通り籠の中の鳥状態になっているでしょうね」
「ちょお待ち。なんやさっきから聞いてると、二人の神様の力関係に随分と差があるような言い方しとるなあ」
「確かにな。ってか、なんで神が二人もいるんだ?」
「カザミの疑問には後で答えとして、貴女、シュカって言ったわよね。二人とも中々いい目の付け所よ」
「んだよ! 勿体ぶらずにさっさと教えやがれ、このチビガキ!!」
「カガリはん!」
「チッ……! クソが」
何度目かになるカガリとシュカのやり取りにすっかり慣れてしまった周りは「やれやれ」と言った表情でネロの説明の続きを待った。
「まずは神の力関係について説明するわね」
そうしてネロが説明したのは、とても簡単なものだった。
「母は強し。以上よ」
「え? それだけですか?」
「……雑」
「もっと他にありませんの?」
「なるほど、さっぱり分からん!」
始まりの精霊種族達の意見はもっともである。
言いたいことは分わからなくはないが、知りたいことはそういうことではない。
「もう、ネロちゃん。ちゃんと話してあげないとぉ、みんな納得しないわよぉ?」
「……はいはい。と言っても、私もアイネもほとんど知らないのよ。彼が、彼女の補助役だったってこと以外はね」
「補助? 補助ってなんだよ。神に補助が要るのかよ」
カザミの疑問に全員が同意して無言で頷いていた。
「補助が居ないと、神は一人じゃ何もできないのか?」
「カミサマって、ダセェんだな」
「ほんま、なんや相手にするのも阿呆らしくなってきたわ」
「シュカ。ちゃんと相手にはするからな。ただまあ、なんだかぶっ飛ばしやすそうだ」
『ゴリアテ』の呆れの混じった言葉を聞いたミーシャが、眠ってしまったマイムの頭を優しく撫でながら真剣な表情でこう問いかけた。
「……神様が、二人いる、のは……なんで?」
「そうだぜ! なんで一人じゃ駄目なんだよ。補助が必要なほど、神ってのは無能なのか?」
ミーシャの疑問を聞いたカザミが、思い出したように疑問を投げた。
それに対してネロはあっさりとした口調で「知らないわ」と言い捨てた。
もちろん、カザミはそれで納得するような男ではない。同じくカガリも眼光鋭くドスの効いた声で凄み、ルルディに「ガラが悪い」と揶揄われていた。
喧嘩になりそうな両者の気を散らすように、アイネが間延びした声を掛けて間を取り持った。
「はいはぁい。喧嘩は駄目よぉ? そんなんじゃあ、ネロちゃんが話せないでしょお?」
「チッ……!」
「シルフ様に感謝するんですね」
「アイネ、ありがとう。全く、この二人は……」
やれやれと言った風に首を振ったネロは、ルゥの目をまっすぐ見ながらもう一度はっきりと言った。
「神様が二人いる理由を、私は知らないのよ」
「私もねぇ」
ネロに続いてアイネも理由を知らないと告げ、その二人の答えに周囲は豆鉄砲を食らったような顔になった。
前回の続きです。
ネロもアイネも神様が何故二人いるのか知りません。もちろんフーもです。