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箱庭の記憶 〜君の記憶は世界の始まり〜  作者: トキモト ウシオ
フォロビノン大陸 雑多群サリューン3
142/170

2、記憶喪失について

 『ゴリアテ』がおとなしくなったことでアイネはにっこりとした笑みのまま満足そうに一度頷き、話を続けた。


「じゃあ、ルゥくんの人格が変わっちゃった理由だけどぉ、多分フーくん……サラマンダーに覚醒したことが関係してると思うのぉ」

「これについては私にも確定はできないけれど、ルゥの記憶を封印した張本人の力が弱くなっていると思って間違い無いと思うわ」


 アイネの説明にネロが補足をすると、シュカが撃ち抜かれた翼を庇いながらちょっと待ってと言うように手を上げた。


「えっと、青いお嬢はん? ルゥはんの記憶喪失は、精神的なものやあらへんの?」

「は? おいシュカ、それってどういうことだよ」


 シュカの疑問に口を挟んだのはカガリだった。

 渡り鳥として色々な大陸を渡り歩いた大鷹のシュカは知識量が違う。だから記憶喪失の要因についての詳しい知識もあったのだろう。カガリ以外にも頭に疑問符を浮かべている面々に向かって端的かつ分かりやすく説明した。


 記憶喪失が起こる要因は、辛いことや悲しいことが重なって自分を保てなくなったときに体の防衛本能として、その辛い記憶を自ら封じ込めるもの。

 頭に強い衝撃を受けるなどの外傷的な要因でも記憶喪失になるということ。

 暗示によって意図的に記憶を消されること。


「つまりシュカは、ルゥが記憶喪失なのは、辛い事を忘れたかったから……って考えてたのか?」

「せやね。ルゥはんに、なんや辛い過去があったんやろ? ちっこい青いお嬢はん」

「ちっこ……はぁ。そうね、ルゥの記憶喪失はそれも関係してるでしょう。でも、それだけじゃないわ。ルゥも、心して聞きなさい」


 ネロの真剣な表情を見てもルゥにはイマイチ深刻さが伝わらず、いつもと同じあどけない表情のままだった。

 結果的にその表情が、ルゥに対して違和感を覚えていた周囲の反応を「いつものルゥ」ということに落ち着けさせたのだが、ルゥがそんな顔をしたのは彼が記憶喪失について深刻だと思っていないからだった。ルゥは自分の記憶が曖昧でも、『自分は自分』という自らの中である程度の"芯"が出来ていたのだ。

 ネロが聞いたらなんとも言えない顔で頭を抱えそうな内容である。


 キョトンとした顔のルゥに勢いを削がれながらも、ネロは咳払いを一つして場の空気を濁してから続きを話した。


「ルゥの記憶喪失は、この世界を作った神の一人……によって封じ込められたのよ」

「は?」


 ルゥが聞き返すよりも早く、カザミが疑問の声を上げた。


「ルゥはサラマンダーの生まれ変わり。心が不安定になれば力が暴走するんじゃないか……。彼はそう思ったのよ。私みたいに精霊種族として生まれ変わっているならだしも、動物種族に生まれ変わったルゥの体がサラマンダーの力に耐えられるとは到底思えない。だから、辛い記憶、悲しい記憶を封じ込めた」

「でも、ルゥは第三種族(サード)だろ? 第三種族(サード)としての力を使ってる今は平気なのかよ」

「……分からないわ。だから私は、ルゥに力を使って欲しくないのよ」


 沈痛な面持ちでそう語るネロに、ルゥはやはりあどけない表情でこう語った。


「ネロの言ってることは大体理解したよ。けど、僕は僕であるために力を使うよ。ルゥとして、第三種族(サード)として、サラマンダーとして……ね」


 表情はいつものルゥなのに、ルゥらしからぬ大人びた言い方に周囲は静寂に包まれたのだった。

 ルゥにさんを付けたくなる今日この頃です。

 大人になりつつあります。

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