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箱庭の記憶 〜君の記憶は世界の始まり〜  作者: トキモト ウシオ
フォロビノン大陸 雑多群サリューン3
141/170

1、アイネの自己紹介

 風の祠の近くの湖からアイネ、ネロ、ルゥの順で上がった三人は、そのままアイネの風の力で空を飛んで『ゴリアテ』やエーテル達の待つフォロビノン大陸雑多群(リグレ)サリューンの近くまで戻ってきた。

 フォロビノン大陸からトワイノース大陸にある風の祠までどうやって行ったのか、そこの記憶がないルゥはカザミやシュカ達よりも早く大陸を渡った時、眼下に見える大海原を見て背筋を震わせた。


 実際サラマンダーは火の力を使ってジェット噴射のように海の上を飛んで渡ったのだが、かなり無理のある方法であった。


 サラマンダーとルゥは不安定な関係である。もしも途中でサラマンダーではなくルゥの部分が戻ったとしたら、彼は海の上で精霊の力を使い続けることができず、海に落ちていただろう。彼はルゥと同じ……いや、それ以上に水との相性は悪い。だからと言って水の精霊種族と相性が悪いわけではなく、それはネロとサラマンダーやレイディとラウディの様子を見ていれば分かると思う。

 更に、例えルゥが戻らなかったとしても、海上ではサラマンダーは本来の力を発揮するのは難しい。

 彼が火の力を使えているのは晴れていたからである。太陽光という、火の精霊にはなくてはならない僅かな力の源である。

 しかし、山と同様に海も天気が変わりやすい。太陽に雲がかかったとしたら、力の供給源がなくなり力を使えなくなる。その時も同様に海の中である。


 まあ、今ルゥが飛んでいるのはシルフであるアイネの力によってであり、その力は相当である。風が吹こうが槍が降ろうが三人が海に落ちることはないだろう。そして、例え海に落ちたとしてもネロが一緒である。決して溺れることはない。


 そうして、何が起こることもなくフォロビノン大陸へと無事に降り立った。


「到着ぅ。ルゥくん、大丈夫だったぁ?」

「うん。楽しかったよ?」

「嘘ね。海の上で冷や汗をかいていた癖に」

「うっ……」

「まあ、ネロちゃんって意地悪なのねぇ」

「性悪のアイネにだけは言われたくないわ」


 (なご)やかとは言えないが、それなりに賑やかな雰囲気でエーテル達の待つ場所まで戻った。


「おー、やっと戻って来たか」

「遅えんだよ!」


 嗅覚の鋭い動物種族であるカザミとカガリが一番に気付き、声を掛けてきた。

 ルゥはそれに対して満開の笑顔で手を大きく振って応えるが、何故か自分自身に違和感を覚え、にっこりした笑顔を柔和なものへと変え、それまで振っていた手を止めて軽く上げて応え直した。


「あらぁ?」

「……ルゥ、よね?」

「ん? ネロ、どうかしたの?」

「いえ、なんでもないわ」


 アイネとネロはルゥではなくフーではないかと疑ったが、あどけない顔で首を傾げたルゥを見て逆に首を傾げたのだった。

 しかし、疑問に思ったのはネロとアイネだけではなく、サラマンダーとしてこの場を去ったはずなのに何故か髪も耳も尻尾も元通りのルゥの姿のはずなのに、ルゥとは違った雰囲気を持つ人物に『ゴリアテ』のカザミやカガリ、付き合いは短いが寝食を共にしていたエーテル、モエギ、そしてミーシャも同じように頭上に疑問符を浮かべたのだった。


「わけわかんねぇ」

「カガリが分かんないなら、俺もわかんねえ。ミーシャ、お前は分かるか?」

「私も、分からない……かな」

「エーテルさんはどうです?」

「アタシも、何がなんだか……。一体、ルゥに何があったんだ? ネロ、説明してくれるだろ? そこの、女の人についてもさ」


 エーテルがみんなの疑問を代弁するようにネロに問い掛けると、ネロが無言で頷いてアイネが微笑みながら一歩前に進み出た。


「はぁい。みんなが疑問に思ってることぉ、私が答えまぁす」

「……やたら気の抜ける喋り方する美人だな」

「カザミ、あんまり失礼なこと言ってると……抜かれるわよ?」

「抜かれるって、何をだよ?」

「……さぁ? さ、アイネ。続けて?」

「ちょっ──」

「はぁい。まず、私の正体からねぇ」


 ひらひらと手を振って自己紹介を始めようとするシルフに、『始まりの精霊種族』のリバディがピクリと反応した。


「リバちゃん、どうしたの?」

「もしかして……」

「はいはぁい。その先は私に言わせてねぇ? 分かっちゃった人もいるけどぉ、私は四大精霊のシルフでぇす。気軽にアイネって呼んでねぇ」

「シルフかよ!?」

「ほぅ……。それはまた、大それた事を言ったものだ」

「シルフだぁ?! この女、ふざけてんのか!?」

「カガリはん! やめや。これは、冗談やあらへんよ」


 どこか緩い気分だったカザミやカガリ、アーサーの三人は、シュカが真剣な顔と声と雰囲気で場を引き締めた事で、目の前で柔らかく微笑んでいる美人が本当にシルフなのだと理解せざると得なかった。

 本能的な部分ではカザミやカガリも優れているのだが、どうにもアイネの雰囲気が穏やかすぎて本当にシルフ本人なのか疑っていたが、人の裏を読むことに長けているシュカが真剣なのを見て考えを改めて気を引き締めたのだった。

 戻って来ましたフォロビノン大陸。

 アイネが『ゴリアテ』と『始まりの精霊種族』、エーテル達と合流しました。

 登場人物がいっぱいになりました……。

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