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箱庭の記憶 〜君の記憶は世界の始まり〜  作者: トキモト ウシオ
フォロビノン大陸 雑多群サリューン2
131/170

19、生まれ変わり 2

「……また、鍵が外れたか。しかも、今回は相当数外れたな」

「フー……?」

「なんだ、ネロか。まあ、次に俺が目覚めた時には会うだろうと思ってたけど、随分と面倒な状況になってるな」


 面倒臭そうに周囲の状況を確認して肩を竦めて見せたルゥ……もといサラマンダー。

 それに対してネロは特に動揺することもなく冷静に回答した。


「『神の手足』よ。ルゥの記憶を継承できているのなら理解できると思うんだけど……」

「無理だな。クライスの力で殆ど切り離されてる。でも、『神の手足』ってすごい名前を付けたな」

「私も最初は笑ったわ。けど、今となっては笑えない集団に成長しているけどね」

「みたいだな。金属がここまで使われるとは……。シギルの思惑が外れてしっかりと文明が築かれてるみたいだ」


 ネロの回答に合わせてサラマンダーから次々と語られる摩訶不思議な言葉の羅列に、始まりの精霊種族やカザミは開いた口が塞がらず、『五指』も隊員達も訳がわからないといった状況であった。


「で? そこの『神の手足』はシギルとクライスが俺らに仕向けたのか?」

「いいえ。『神の手足』は自称でしかないわ。それに、クライスもシギルもそんな事をするような性格じゃないでしょう。『神の手足』は第三種族(サード)……動物種族と精霊種族の能力を持った種族ね。それと合成種族(キメラ)と呼ばれる普通の動物種族ではあり得ない、二種類の動物の特徴を持って生まれた動物種族。この二つの種族は寿命が短いの。にも関わらず、彼らを殺すために誰かが結成した集団よ」

「へー。俺が眠ってる間に色々あったんだな」

「ええ、シギルが一時期その二種類を……その、"神の鉄槌"と称して殺してたこともあるの」

「あー……、なんか、それは覚えてるかも。そん時まではクライスが近くにいただろ? なんで今は居ないんだよ」

「クライスの居場所なんて私が聞きたいくらいよ。まあ、大体の検討は付いているわ。おおよそ、"神の鉄槌"の時、フーが暴走したから力の一端を使って、それでシギルに抗う力が残ってなくて連れて行かれた……。そんなところじゃないかしら?」

「まあ、元々シギルの方が力は強いからな」


 世間話という記憶の突き合わせと行い続ける二人に、ようやく事情を飲み込み始めたカザミが口を挟んだ。


「なあ、さっきから何を話してんだよ。シギル……? とか、クライスとか、まるでこの世界を作った神様みたいな扱いで……」

「ああ、実際二人は神様だし。なんでこの世界を作ったのかは俺もネロも知らないけど…………」


 そこで少し、サラマンダーは考える素振(そぶ)りをした。


 ──この情報は言っちゃって良いのかな?


 サラマンダーが言おうとしているのは、四大精霊でもきっと自分しか知らない話。その情報をこの世界に住んでいる者に開示して良いのかどうか……。

 しかし、サラマンダーは思い切って暴露することを選んだ。


「文明が発達しないようにってことで、この"箱庭"を作ったのは紛れもないその二人だよ」

「"箱庭"? それってどういうこと?」

「やっぱりネロは知らなかったんだ。この世界が二人の間で"箱庭"って呼ばれてたこと」

「知らないわよ、そんな話。きっと、アイネもエルデも知らないでしょうね。それを、なんでフーは知っているの? 貴方は末っ子で、世界については何も知らされてないと思ってたわ」


 心配そうに。意外そうに。悔しそうに。

 色々な感情がない交ぜになった顔のネロは、既に『五指』が近くにいることも、未だ『神の手足』が戦闘態勢を解いていないこともすっかり頭から抜け落ちているようだった。

 と言いつつ、サラマンダーも『五指』の存在を瑣末(さまつ)なものとして認識し、意識の外側に追いやってネロとの会話を続けるのだった。


「記憶に残ってるだけで、知ってるとか覚えてるとか言って良いものか分からないけど、事実だろう」

「……ルゥだけじゃなく、フーも記憶をいじられているの?」

「みたいだな」

「なら、ますますあの二人に会わないとね」


 二人だけでうんうんと頷き合っていると、先ほどからイライラしながら話を聞いていたカザミが八つ当たり気味に、後方に控えている『神の手足』へ風の刃を放ちながら口を挟んできた。


「だぁー! 二人で話し進めてんじゃねえ! 俺にもわかるように説明しろ!!」

「そ、そうだ! 我々『神の手足』はその名の通り、神……シギル様とクライス様の御意志の元行動している! にも関わらず、なぜ異端者共がお二人の名を知っているのだ!!」


 ルゥの父親であるケントが焦りながらカザミに続けとばかりに会話に割り込んできた。

 鎧兜で表情は伺い知ることはできないが、神の話題とあっては口を挟まずにはいられないと、方向性の違う負けず嫌いを発揮したようだった。

 ちなみにサラマンダーの口調はルゥの素っ気ないバージョンです。今更な話ですが……。

 文面としては同じところがあっても、トキモトの脳内では素っ気ないボイスで再生されています。

 本物により近い今のサラマンダーは全く別の口調ですがw


21,4,2 誤字、および加筆修正

21,6,4 サブタイトル表記訂正

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