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箱庭の記憶 〜君の記憶は世界の始まり〜  作者: トキモト ウシオ
フォロビノン大陸 雑多群サリューン2
130/170

18、生まれ変わり

 ルゥの心はぐちゃぐちゃになっていた。

 実の父親との邂逅で閉じていた記憶の扉が次々と開いていき、それに引きずられるようにサラマンダーとしての記憶も思い出される。


『お前の所為でどれだけの大地が、空気が、河川が汚染されたと思っている』

『お前の力は破壊でしかない』

『いくら神のお気に入りだからといって、俺はお前を──』


「止めろッ!!!」

「ルゥ?!」

「僕を……俺を、俺をそんな目で見るな! 俺はただ……ただっ……! 俺の所為じゃ、ない……のに…………」


 頭を振り乱しながら辺りに響かせる慟哭(どうこく)に、周囲は気圧されていた。

 ただ、ネロだけが心配そうにルゥの元へ近寄るが……。


「ルゥ……落ち着い──ッ熱!」


 ルゥを取り巻く空気が熱風となり、誰も近寄らせない防壁を形成し始めていた。


「おいおいおいおい! これ、やべぇだろ?!」


 ルゥを中心として吹き荒れる熱風ほ規模が大きくなり、近くにいた者を半強制的に遠ざける。

 そんな中、カザミは今の現象に思い当たる節があってルゥから距離を取りつつも急いで風の防壁を張った。しかし、今回のルゥの状況はあの時とは訳が違うと本能的に悟ったカザミは、ルルディの助力を求めた。


「おい! そこの風使い! お前も力を貸せ! 今のルゥ……サラマンダーはやぱいぞ!!」


「私? ……確かに危険。風に……大いなる力を与え(たま)え。ウル・ヴァイメリオ」


 ルルディとしても力を使いすぎて大した強度は出ないものの、現時点でできうる限りの力を注いで風の防壁を張った。

 彼女が祝詞(のりと)を唱える際に逡巡したのは、できれば高位の祝詞(メリオ)は使いたくなかったが、中位の祝詞では防ぎきれないと悟ったのだろう。覚悟の表情で力を使ったのだった。

 そして、ルゥを中心にいくつかの火柱が天を突き、数秒後……火柱が消えた後には燃えるような髪と耳と尻尾を持った姿のサラマンダーが悠然と立っていた。


「……メリオで良かった」

「リバちゃんの判断力最高。あれは、本当にまずいですよ」

「この俺様より強い力を感じるぞ」

「ネロ、あれは一体、何者ですの?」

「あれは……本物により近いサラマンダーよ」

「本物により近い? どういう意味だよ、それ」


 カザミのもっともな疑問に、ネロは『五指』を警戒しながら、捲し立てるように説明した。


「カザミがちょくちょく口にする、ルゥがサラマンダーの生まれ変わりっていう話、あれは実は当たっているのよ。神様の怒りを買ったサラマンダーは、動物種族に転生させられたの」

「神の怒りを買った? 一体何をしたって言うんだよ。それに、その事実を知ってるお前は……?」

「御察しの通り、私は元ウンディーネよ。私も神様に怒られて、今じゃただの精霊種族よ。転生先の種族の違いはまあ、罪の違いってところね。だから、あんたがウンディーネの生まれ変わりと信じているあの蛙は、力の強いただの第三種族(サード)ってこと。これで、あんたが私に突っかかって来る理由はもうなくなったわね」


 カザミがネロに会うたびに突っかかっていた理由、それはシズクと言う水の力を持つ蛙の第三種族(サード)の存在である。

 シズクをウンディーネの生まれ変わりと信じていたカザミは、以前ネロに言われた「有り得ない。彼女はただの第三種族(サード)だ」と言われたことに腹を立てていた。


 自分の愛する恋人がウンディーネの生まれ変わりである。


 例え自分の思い込みであったとしても、実際彼女より優れた水の力を持った者に出会ったことのなかったカザミはその事に誇りを持っていた。

 それを開口一番否定されたのであれば怒るのも無理はないかも知れない。

 しかし、世界はまだまだ広かった。

 目の前のネロがウンディーネの生まれ変わりであり、始まりの精霊種族であるレイディもシズクよりずっと力が強い。

 彼女の力は認めざるを得ないが、ネロが言っていることが本当だとは限らない。だが、ルゥがああいう状況になっている以上カザミはネロが偽りを言っているとは思えない。

 それでも認めたくないのは、やはり恋人としての矜持だろう。

 ルゥがサラマンダーになりました。……なんか意味が違うw


21,4,2 誤字修正

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