ネロの想い 2
情けない。
ルゥに介護されて、やっと思考能力が通常に戻った時に一番最初に浮かんだ感情。
それはケイナンで種族がバレてしまったことも予想外だけれど、何よりエーテルなら大丈夫と思ってしまたことが……。
その所為で旅支度がまともに出来なくて、結局無理して力を使って、あの子に迷惑を掛けて。
ルゥに迷惑を掛けられるのが、私達の『いつも』だったのに……。
いつもとは違って頑張ってくれたのね。
雑多群ジュームの住民に酷いことをされたのかしら? 額に怪我まで負って、身体中痣だらけ。
「……痛かった? 辛かった? 悲しかった? ごめんなさい。本当は、こんな争いをするために精霊種族と動物種族が在るわけじゃないのに……。世界は上手く行かないわね」
ルゥの怪我の手当てをしながら現在地を確かめるように周囲を見回すと、どうやら今はジュームから離れた林の中みたいだった。
どこかに行ってと言ったはずのエーテルは近くに居るみたい。
まさか、ついて来る気じゃないわよね?
そうなったら──。
「三人旅か……」
このことが刺激になって、ルゥは思い出すかしら?
楽しい記憶ばかりじゃないことは確かで、悲しいことも辛いことも数えきれないくらいあったけど、やっぱり……一緒に笑いあったあの時間をまた、共有できたら…………。
「本当、どこに居るのかしら。あの馬鹿」
「んー……」
いけいないいけない。あんまり変な空気を出すとルゥが起きちゃうわね。
昔から鈍いんだか聡いんだか……。
私も、結界だけ張ってもう寝ようかしら。
雑多群ジュームから離れたとはいっても、油断は出来ないし。
「バル・キュルムス」
私とルゥの周囲1キロメートルに霧を発生させる。
これはで範囲内で動く全てのものを感知することができるんだけど、攻撃手段じゃなくて防衛手段なのに、これも祝詞が必要なんて面倒よね。
さて、私ももう少し休もうかしら。
「ふあぁ……。お休み、ルゥ。良い夢を……」
ネロも祝詞を唱えました。
バル・キュルムス。
トキモト的には『水の結界』という意味です。
以前出てきたディ・ヴァイタルは『風の弾丸』という意味を持ちます。
まだまだ祝詞は出てきますので、皆さんはどういう意味か予想しながら読んでみてくださいw