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箱庭の記憶 〜君の記憶は世界の始まり〜  作者: トキモト ウシオ
フォロビノン大陸 雑多群サリューン2
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8、負けず嫌い達

 カザミが『ゴリアテ』の団長として、自らシルフの生まれ変わりと称している意地を発揮してリバディの貼った風の結界に穴を開けて見せた。


「どんなもんよ。おら、カガリとシュカ。出番だぞ」

「ハッ! やりゃあできんじゃねえかよ! 流石クソ団長だぜ!」

「ほんまやわぁ。ますます惚れてまうやないの」


 カザミの高圧的な言葉をカガリとシュカは全く気にすることなく、むしろやる気を(みなぎ)らせてそれぞれの力を発動させた。


 まずはカガリが多数の火球を生み出し、次々に風穴の外へと排出して目標を定めることなく無作為に敵へと投下していく。

 彼女の戦闘方法は単純明快な力技である。

 物量と質量にモノを言わせてひたすら打ち込む。

 逆に火力の高い大きな火球を打ち込むのは正確さが必要なため苦手としている。

 今までの戦いでも際限なく火球を打ち出し続け、数多くの『神の手足』を殲滅(せんめつ)ないし無力化してきた。そして、これからもその戦法で『ゴリアテ』の特攻隊長として前線で戦い続けることがカガリの誇りと願いなのだ。


 そんな大雑把な彼女の補助をする役目を負うのがシュカである。

 彼女はカザミが開けた風穴から風を送り出し、緻密(ちみつ)な操作で『神の手足』一人一人に対して方向性の違う風を吹き付けた。

 敵を攻撃することはないが、これによって敵は体勢を崩して攻撃の手が止んで隙が生まれ、見事アーサーやカガリにとって格好の的が出来上がる。

 更には明らかに敵がいない場所に投下されようとしているカガリの火球の元へ敵を誘導することも忘れない。ただし、第三種族(サード)としての力はカガリの方が断然上のため、時々は間に合わずいたずらに敵を走らせることにもなっているのだが、それでもシュカが居るのと居ないのとでは全然違い、戦力にも戦略にも幅が出来上がる。


「流石シュカだぜ! 人の嫌がることは得意中の得意だもんな!」

「カガリはん、それは酷いわあ。ほら、お喋りしてへんで真面目にやらな、団長はんに怒られんで」

「分かってるっつの! オラァ!! もういっちょだクソヤロー共!!」

「俺も負けてられんな」

「いいねえ、お前ら。やる気十分で。さて、俺も参戦するか」

「団長、大丈夫なのか?」

「少し疲れただけだ。それに……」


 カザミの視線の先には次々と『神の手足』を屠っていく精霊種族三人が居る。


「負けるわけには行かねえよ。ったく、この風壁、すっげえじゃじゃ馬で躾けるのに時間かかっちまったぜ」


 深呼吸をして力を入れていた身体をほぐしたカザミに対し、風の精霊種族のリバディは面白くなさそうな顔をしていた。

 彼女の気持ちを代弁するならば、「第三種族(サード)如きに高位(メリオ)の風の防壁が破られるなんて……」といったところだろう。


「リバちゃん、敵はあっちですよー?」

「……わかってる」

「リバディも大概負けず嫌いよね」

「煩い。風に力を……ブル・ヴァイタル!」


 倒しても倒しても次々と湧いて出てくる『神の手足』にリバディは八つ当たりのように鎌鼬(かまいたち)を放っていった。


「よーし! ルルも負けませんよー! まだまだお人形さんを出しちゃうんですから! 土に力を……マリ・スティエル!!」


 リバディに触発されたのか、ルルディも先ほど作り上げた土人形よりも小ぶりな(全長2メートル)土人形を20体作り上げて特攻させていた。

 ルルディの作り上げた土人形は痛覚も恐怖も感じることはなく、切られようが殴られようが体の一部が崩れるだけで攻撃を止めることはない。故に『神の手足』は土人形を細切れにするか全体を押しつぶすかして、文字通り土に還すしか攻略法はないのである。

 負けず嫌いはほどほどが可愛いですよね。

 ちなみにルルディが使っていたブル・ヴァイタルは風の刃という意味です。

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