2、元素の五感
海を渡ってフォロビノン大陸へとたどり着いた私達は、ここでもルルディとリバディの力を借りてルゥの行方を探した。
ルルディの土の力もリバディの風の力も、私の水の力やサラマンダーの火の力と違ってこの世界での存在量が大きい。
ほとんどの生物は空気が無いと生きられず、地に足を付けなければ生活ができない。
つまり、この世界の生物は風か土に接して生きている。
まあ、水中生物を除く、のだけれど。
「……フォロビノン大陸って、広いんですねー。探すの面倒になってきました」
「適当」
「手抜きは駄目よ。しっかり探して」
彼女達にやってもらっているのは、対応する元素──土と風に意識を移して目や耳を使ってルゥやカザミを探してもらっている。
視覚や聴覚、嗅覚、触覚、味覚までもを世界に散らばる元素から共有できる存在なんて私を除けば彼女達『始まりの精霊種族』にしかできないことでしょう。それくらい、身体構成を元素に同化させるのは難しいということ……。
それでも世界全体を見ることが出来るのは四大精霊だけだから、結局はアイネに助力を願わないといけないんだけれどね。
ちなみに私がルゥやシギル達を探さないのは力を温存するため。
晶霊結晶の力を取り込んである程度力が戻ったと言っても、私の肉体はただの精霊種族。体に合わない力を使ったときの反動が尋常じゃないくらい酷いから、私はこうして歯を食いしばって自分の無力に打ちひしがれるしかない。
「……居た」
「え、どこ? 今リバちゃんとこ行く!」
どうやらリバディが先に見つけて、ルルディがリバディの元へ向かったみたい。
「あー、白い犬がいますねー。赤っぽい犬? もいる。あと、羽が生えたのが二人」
「犬と白黒の羽は風、黒い羽が土。赤っぽいのが火。これで合ってる?」
「カザミと……アーサーとカガリだと思うけれど、もう一人の風使いがわからないわね。なんか昔の記憶に居たような気がしなくもないけれど……」
「白と黒の羽……翼を持った風使い? それ、アタシ知ってるかも。『ゴリアテ』のヤツだろ?」
「モエギも思い出したです! あの、性格の悪い女の人です!」
「以前言っていた『ゴリアテ』に会ったって言っていた話、その白黒の風使いなのかしら?」
「実際に見てみないとわからないけど、第三種族って数が少ないんだろ? なら、多分そいつじゃないかと思うんだけど……」
確かにこの目で実際に姿を見なければ確証は得られないけれど、あいにくと今は彼女達にしかその風使いは見えていないから、白い犬──きっと狼──がカザミだという証拠もないし、エーテルとモエギが言う風使いもその本人かは分からない。
とにかくそこへ行ってみないと始まらないわね。
「それで、彼らはどこにいるの?」
「えっと……周りに何もないんですけど?」
「近くに小さな集落がある」
「どんな種族が住んでるかわかるかしら?」
「猫と……ネズミ? 耳が小さくて爪が鋭い。あと、それと似たような熊とか、犬っぽいのもいる。あ、小さいウサギと……犬と猫と……猫?」
「随分と統一性がないわね」
小さな集落ということは、恐らく雑多群ね。
けど、雑多群だったらある程度は統一性のある種が住んでいるはずなんだけれど……。
耳が小さくて爪が鋭いネズミ? それと似た熊? 犬? それに猫が多いわね。いや、ルルディは簡単な種類しかわからないから、本当に犬や猫かも怪しいわね。
「精霊種族って凄いんだな……」
「モエギには何が何だか分からないです」
二人が精霊種族の力を目の当たりにして驚いているようだけれど、この能力が使える精霊種族は少ないのよね。まあ、だからこそ驚いているのでしょうけれど、彼女達(私を含め)を基準に精霊種族というものを理解されると少し困るわね。
「あ、穴がいっぱい空いてる場所がありますよ! ボコボコですよー!」
大地の異変にはやっぱりルルディが敏感ね。
それにしても、穴……?
「……なるほど。地下生物が多く住んでいる雑多群サリューンね。その近くにカザミ達はいるのでしょう」
少し考えて恐らくここだろうという場所の見当を付けた。
本当に合っているのかという不安はあるけれど、兎にも角にもこの世界で一番広いフォロビノン大陸を虱潰しに調べることはできないから、彼女達の言葉と自分の勘と知識を信じて進むしかない。
無事でいて、ルゥ……。
お待たせしました。
もうそろそろルゥとネロが合流しますが、その前にカザミとネロが合流します。
20.8.7 加筆修正