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箱庭の記憶 〜君の記憶は世界の始まり〜  作者: トキモト ウシオ
ネロの旅路 トワイノース大陸 多種族都市ライファ
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11、種族の違い

 第一印象は「何こいつ」。

 きっとエーテル達も同じことを思ったでしょう。表情がまるっきり一緒だったから。

 私達の思いなんてつゆも知らない相手は、まだまだ口を閉じようとはしなかった。


「そんな美しいボクが所有する飛空挺・新世界号に乗ってみたくて見てたんだろう? わかってるさ。ボクは全てお見通しだからね」

「……エーテル、行くわよ」

「そうだな」

「行くですよ」

「さっさと行きましょー」

「全力肯定」


 これ以上付き合ってられないと私達は、練習したわけでもないのに足並みをぴったりと揃えて回れ右をし、来た道を戻った。


「どこへ行くんだい!? ボクの新世界号は他の飛空挺と違って精霊種族を15人も使っているんだ!」

「使っている、ね……」

「そうだとも! 精霊種族はボクら動物種族が生きやすくなるように神が作られた存在だ。特に、ボクのような素晴らしい動物種族は精霊種族を大量に使う特権が与えられているんだよ。そちらの精霊種族のお嬢さん方も、よければボクに使われてみないかい? 不自由はさせないよ。美しさによるが、素晴らしくボク好みだったらまともな生活を保証するとも。何より昼も夜も、たっぷり可愛がってあげるよ。このボクが!」


 言葉にならないとは文字通り今のような状況を言うのでしょうね。

 ルルディもリバディも怒りを通り越して呆れかえっているもの。

 何より、モエギとしても彼の言い分は理解できるところがあったはずなのに、今は私達と一緒になって軽蔑の眼差しを送っていた。


「さあ、こんな好機は二度と来ないよ! ボクの前に、跪いてお願いすると良い!!」

「絶対ないわ」

「むしろアタシはコイツをものすごく殴りたい」

「モエギも嫌悪感しかないです」

「殺して良いですかー? 良いですよねー?」

「風に力を──」

「リバディ、流石にそれはやめておきなさい」


 祝詞(いのり)を唱え始めてしまったリバディを制して、断られただけではなく罵詈雑言(ばりぞうごん)を吐かれてもなお笑顔でいる狐の男に、無感情で冷水の如く冷たい声音ではっきりと拒絶を口にした。


「貴方の飛空挺には目を向ける価値もないわ。乗る、なんて言語道断よ。これ以上何か不快な言葉を話してみなさい。精霊種族の総力を以って貴方の一族を抹消するわよ?」

「……ボクは脅しには屈しない」

「はぁ……。なんで精霊種族と動物種族ってこう……関係が悪くなっちゃったのかしら?」


 旅を続けてから何度精霊種族だからと馬鹿にされ、排他され、暴力を加えられたか分からない。逆に場所によっては(おが)まれ、(たてまつ)られて永住を希望されたこともあった。


 ──共存共栄とまではいかずとも、互いの存在をきちんと認めなければ世界は回らないのに……。


 暗くなりつつあった思考を切り替え、言葉を続けた。


「モエギも良く聞きなさい。確かに種族の違いは越えられない壁でもあるわ。でも、同じ種族でも個性がある。それが種族が違うだけで差別するのは違うと思わない? 強大な力を持っていても絶対数の少ない精霊種族。私達は誰かを傷つけることを良しとしない。そうさせないように神が作ったのよ? 使えば恐ろしい力であることは認めるわ。それでも、全ての精霊種族が、第三種族(サード)がそうだと決め付けないで欲しいわね」

「……わかってる、です。モエギの大好きなルゥ君も、優しい第三種族(サード)ですから」

「貴方も、動物種族が優れている種族だなんて思わないで。精霊種族を使役するなんて考えないで。私達の力は個人のために使うものじゃない。世界を守るために使われるべき力なの。それを覚えておきなさい」

「フンッ。説教は聞きたくないね。ボクが優れているのはわかり切っている事実だからね」


  珍しく大真面目にした説得を聞いても改心の欠片もない男に見切りをつけ、私は拳を握りしめる三人を無理やり引っ張って今度こそ本当にライファを後にした。

 楽しかった、狐書くの……。最後までクズだったけれど……。

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