5、老獪な猫
なんでエーテルとモエギがここに?
猫の老爺は二人を……私を知っていた?
「なんか動物種族が増えましたねー」
「気が散る。邪魔」
「気にしない気にしない。ルルは晶霊石に力を込め続けます!」
「負けない」
ルルディもリバディも羨ましいわ。こっちの気も知らないで……。当たり前だけれどね。
「ネロ? 本当に、ネロ?」
「私以外の誰に見えるというのよ」
「え、エーテルさぁん……」
「モエギ、怯えなくても彼女達は貴女達如きに微塵も興味なんてないわよ」
自分でもなんて酷い言い方だろうと思うわ。でも、それが事実。
「にしても、精霊種族が嫌いな貴女がよく裏の商人の場所に来たわね。エーテルかしら?」
「あ、ああ。情報を集めるなら、裏の商人が一番だって……。アンタが、ネロが言ったんじゃん」
「そうね。でも、良く見つけられたわね」
「ははっ。気合い、さ。執念とも言うかな? あんな形で別れたんじゃ、納得なんてできやしないからね」
「も、モエギだって……! ルゥくんと、ネロちゃんと、もっと話したいことがあるです!」
「はいはい。エーテルの後ろで怯えながら言われても説得力ないわよ」
それでもここまで来たのだから、立派なものよね。
「これでお前達の望みは叶ったわけだ……」
「ブラン、助けてくれてありがとう。見ず知らずでなんの力もない、大した情報もなければ金もない、そんなアタシ達を助けてくれて、本当にありがとう」
「なに、年寄りの暇つぶしだよ。お前さんの作る料理は美味かったし、家のことを色々やってもらったんだ。むしろこっちが助かったよ」
「最初から、私が来ることを狙って……?」
「この嬢ちゃん達から水の精霊種族を探していると言われてね。年恰好も聞いてたし、足止めするために色々仕掛けたんだが、まさかあの晶霊石全てに力を注いでもまだ元気だった時は驚いたよ」
この老爺……。
「さて、そっちの二人の嬢ちゃんも良い感じに力を込められてきたようだし、再開した記念にお茶でもどうだい?」
「そう、だね……。ネロに、久しぶりにアタシの手料理食べさせてあげるよ」
「……それは素直に助かるわ」
「モ、モエギも、手伝うです……」
「モエギはネロとゆっくり話でもしたら良いじゃないか?」
「酷いです! モエギが精霊種族が嫌いなの知ってるですよね!?」
「はっはっは! リスの嬢ちゃんは相変わらずだね」
「気が散るからちょっと黙ってもらえますか!」
「風に力を──」
「リバディやめなさい!」
結局、誰かと旅をするとこういうことになるのよね……。
でも、疲れるとか面倒とかよりも、懐かしくて、少し楽しいと思ってしまう私は変わったのかしら?
こういう癖のある老人を書くのは結構好きです。