野崎氏
メンバーは助役を含めて十二人となった。椅子もテーブル同様にとても上等なもので座り心地がよいし、空調も申し分がない。とにかくホームの暑さは酷かった。
「皆さん。お名前と何番目の車両に乗っていたかをいっていただきたいのですが」
「名前までいう必要があるんですか?」
声は助役からは一番遠い席から聞こえてきた。首を左にひねって見ると、眼鏡をかけた男で黄色い半袖シャツにネクタイをきちんと締めていた。
「あなたに質問することが有ったときの都合です。ですから番号でも偽名でもいいんですよ」
「偽名?」
その言葉に鋭く反応をした男がいた。向いの列のまん中辺りの男だった。銀色の髪をまん中できれいに分け、私よりも年配の人で暑いのにきちんとダークのスーツを来ている。
「ええ、そうでもいいんです」
助役はもっと続きがくるのかと思ったが銀髪氏がそれっきり何もいわないのをみると、最初に発言した男に顔をもどした。
「名乗って悪いことはないよ。私は野崎といいます。年は二十八でスーパーの店員です。一番前の車両です」
「野崎さん。一番前っていうのは間違いないんですね」
「間違いないですよ」
「穂波で降りる予定だったんですね」
「予定? へんな事を聞くじゃないですか」
「へんですか」
「へんですよ。他の人にも聞いてみたらどうです。自分の家がある駅で降りるのに予定なんていいますか」
「なるほど、わかりました。では、野崎さん、あなたは穂波の駅を見ましたか」
「いや、気がつきませんでした。と、いっても私はずうっと窓の外を見ていたわけじゃないですから」
「野崎さん。ひとまずそれで結構です。ありがとうございました」
山辺助役はノートに少し書き込んだ。




