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  作者: 伊藤むねお
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会議室

 階段を昇り駅の事務室に導かれた。ロッカーが並んでいる通路の間を通ると奥にクリーム色のパネルの扉があった。助役はそこを開けると、

「中で少しお待ち下さい」といった。

 その部屋は立派な部屋だった。ざっと二十畳くらいの洋室で、ビア樽形の大きな会議用のテーブルと椅子が置いてあり、すでに六、七人ほどの先客がいた。

 入った扉と反対側の壁にもう一つ扉があった。彫刻入りのそのマホガニー色の扉は白い壁や天井とよく似合う。ただ惜しむらくは窓がない。その圧迫感を緩和するためか両側の壁に大きな絵が一枚ずつ掛けられていた。驚いた。

 駅の中に立派な会議室があるのか。大きなターミナル駅ならともかく。

 成り行きもあって入口に近い左側にプロ氏と私が座った。つづいて二人づれの女性が入ってきた。年はよくわからなかったがどちらも姿勢がいい。二人はとてもよく似ていた。正確にはとてもよく似たお化粧をしていた。先に入ってきた女性が顎を上げるようにして室内を見回し、一番奥の椅子があいているのを見つけた。

「お姉さんたち、バレーの公演の帰りかい」

 彼女たちが私の背後を通る時、プロ氏が首を回して声をかけた。

「どうして?」

「メーキャップがさ。誰が見たってバレリーナみたいじゃないか。でもなんだってそのままで電車に乗ってるんだ。ははあ、落とせないわけがあるんだな」

 うしろに従う少し背の高い方が立ち止まって言った。

「いうわね。わけはあるのよ。でも、おじさん、バレーなんか観たことある」

「俺の姪っこが小さい時に舞台に出たのを一度だけみたよ。皆、おんなじように見えて、どれが姪っこなんだか最後までわからなかった。それより、おじさんはないよ。俺はゴルファーなんだ。大岩だよ、プロの。知ってるだろう?」

 女性は知っているふうに、ふうんとうなずいた。私は知らなかったが、これからは大岩と呼ぼう。

 その女性たちで全員が揃ったらしく助役が入って後ろ手に扉を閉めた。助役はなぜか鼻の頭まで白くなっていた。その顔で素早く部屋の中を見回すとひとつ大きく息を吸った。

「皆さん。私は当駅の助役で山辺といいます。早速ですが少し質問をさせて下さい。先を急がれる方を優先させたいと思いますので、そういう方は手を挙げていただけますか? ・・・大丈夫なようですね。それでは」

 山辺助役は立ったままで、黒い表紙の帳簿のようなものを開いた。


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