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  作者: 伊藤むねお
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鳥の先生

「景色が急に古くなったんです。ええ、景色がですよ。家も疎らになりましてね。代わりに畑や原っぱがやけに目立つんです。そうだ、白い犬が一匹、草の間を跳ぶように走ってましたよ・・・おやおやおかしいぞ、どうしたのかなと思っている内に、少しづつ新しくなったと思ったらもう河瀬じゃないですか。驚きましたよ。先生もあの若い運ちゃんの顔を見たでしょう? それなのにあの助役は聞いてやろうともしないで。だいいち電車を、ああわわというあの状態の男に運転させて大丈夫なんですかね」

 なかなか冷静な人だ。

「そうですね。無理矢理自分を納得させていたみたいで。あれではまた駅を見逃しかねませんね」

「先生。信じてないんですね」

「先生って、私のことですか」

「ええ、私はさっきからそう呼んでますが。先生でしょう? どこかの大学の。学生らしい若いのがお辞儀をしているのを何度か見てますよ」

 うちの学生で穂波の駅を利用しているのが結構いて、よく挨拶される。

「先生。ま、ちょっと掛けて話をしましょうや。ほら、丁度ふたつベンチが空いているじゃないですか」

 私が迷っていると助役がやって来た。

「ちょっと失礼します。先ほど、穂波の駅のことで何かいっておられた方ですね。よろしければもうすこし詳しく話をお聞きしたいのですが」

「先生。行こうじゃないですか。聞かせてやろうじゃないですか。聞きたいといいましたからね」

 意外なことになったが、しかし駅を出るのと同じ方向なものだから連れだってという案配になってしまった。プロ氏は私も一緒に行くものだと決め込んでいるようで歩調を合わせて歩くのだ。

 歩きながらこんなことをいった。

「先生はなんの先生ですか」

「鳥です。鳥を教えているんです」

 プロ氏は驚いた顔になった。

「先生。鳥を教えるって、どうやって教えるんです?」

「は?」

「あのですね、鳥に何を教えるんですか? 先生は鳥語ができるんですか? カラス語とか・・・」

「まさか。鳥に教えるんじゃありませんよ。人間の学生に鳥のことを教えるんです」

「あ、ああ、そうですか。そうでしょうねえ。びっくりしましたよ」

 彼はよほど驚いたようだった。納得はしたものの脳神経のどこかがまだ混線しているらしく私の方をちらちらと妙な目でみたりしてた。


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