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  作者: 伊藤むねお
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パラドックス

 助役が苦しそうに下を向いている間、暫くがやがやと私語が続いたが、それをさえぎるように、えへん、と咳ばらいひとつして狭山がこういった。

「ここまでわかったのでしたら、今更、助役さんを責めても解決にはなりませんでしょう? 私は覚悟を決めました。どなたでも結構です。そこの扉を開けてみて下さい。周りはすっかり原っぱで低く夕霧が広がっていても、私は決して驚きませんから」

 ええ? とかいいながらも、みんな、同じように感じてる。原っぱ張本人大岩氏も立ち上がらないし誰も扉を開けてみようとはしない。私も怖かった。扉に一番近い所にいた助役なんかは、後ろを振り返ることすらできない有り様だった。

「いやよお。どうなっちゃうのよ。じゃあ、私たち家まで歩いて帰らなくちゃならないわけ? タクシーだって来ないんでしょう? ああ、そうだわ。電話をして、お父さんに車で迎えに来てもらえばいいんだわ」

「バレーのおねえさん、ずいぶん脳天気なことをいうじゃないか。電話どころか、家そのものが無いかもしれないんだよ。有っても、あんたの親父さんか爺さんが、まだ鼻たらしの子供でさ。”おばちゃんは誰だあ”なんて言われるんだ。するとあんたが”あんたこそだあれ。ホーラ鼻をチンとして”なんて、ふたりの体が触れた途端に、ぱっと消滅してしまってさ。ほら、何とかパドックというやつで。ね、先生」

 誰か、競馬じゃないよ、と呟いた。

 須賀さんは可愛そうにすっかりおびえてしまい、隣の先輩にしがみついた。

 私の人生経験からいわせてもらうと、こういう状況時には不思議なほど役割を心得えている人がいる。思ってもみなかったところに道が開くのだ。人も鳥も進化の大樹から分かれる時というのは意外とこういう場面が必要なのかもしれない。

 まずは友人の小野寺君だった。


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