ターミナル
仙台につき、たった数時間で帰るという満喫するような旅行ではなかったが、市内観光で興味があったところは巡れたし、そこそこ満足に歩き回れた。フェリーの出航時間は午後一時前、随分早い出航だ。コンビニで軽食を買い込んで待合室で食べようと思い、おにぎり2つとお茶を一本買ってフェリーターミナルへ向かった。
待ち合わせ時間の10分前に仙台港のフェリーターミナルへ到着した。フェリーターミナルの前には、バス停があり、二階建ての白い鉄筋コンクリートの建物があり、そこから長い通路がカーフェリーに向けて伸びている。すでに花乃は待合室のベンチに座っていた。彼女はいつも早い。どこに行くにしても私が10分前に待ち合わせ場所に着いているにも関わらずさらに早く待ち合わせ場所で待っている。一体彼女はどのくらい早く待っているのだろうか。
「お待たせ。」
「全然待ってないよ。待ち合わせ時間よりも早いし。」
花乃はいつものように応えた。
「僕たちこれがいつもの挨拶になっているよね。」
「すごくなつかしい。」
花乃は思い出したかのように言った。
そのあと、私たちは、どんな仕事をして、どこで暮らしてるか、それぞれの近況について話していた。
そうしていると乗船のアナウンスが流れた。
「じゃあ、いきましょう。」
「そうだね。」
私は花乃の後についていった。
そのとき、軽食するために買ったおにぎりの存在を思い出した。しかし、取り出そうという気もしなかったので、そこまま乗船した。