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四獣の主  作者: 猫月
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意地の一撃

本編スタートです!

 竜の襲撃から一夜明けて日が昇り始める頃、アキトは1人、ライゼンや集落の同胞たちの弔いを行っていた。弔いといっても、竜たちに全て焼き尽くされ、遺体や遺品も殆ど残っていなかった…。


 弔いが終わった頃、1人の猫獣人の少年がやって来た。歳はアキトの少し上ぐらいで、白髪に白い猫耳、白い尻尾を揺らし、細眼でアキトを見据えながら声をかけた。


「よう。俺はクロムや。ライゼンの爺さんから手紙をもろて来たんやけど…。お前がアキトか?」

「爺ちゃんの手紙?誰だか知らないけど、今は人と話す気分にはならねぇんだが?」

「うわぁ…。めっちゃ荒んでるやん…。聞いてたのと全然別人やんけ…。」


 やはり面倒事を押し付けられたとうんざりとひとりごちながら、クロムはアキトの言い分をさっくり無視して話しを進めた。


「まぁ話しぐらい聞いてや。遺言を無視するのも寝覚めが悪いやろ?」


 そう前置きしてから自分の目的を話し出した。


「俺が頼まれたんわ、お前を鍛えてくれってことだけや。まぁ要するにお前の師匠って訳やな。と言っても俺は刀はさっぱりやから、体術と魔力の使い方だけやけどな。」


「俺を鍛える…?お前の方が強いって言うのか?」


「せやなぁ〜、今のお前なら、こっちから手を出さんでも勝てるで?」


「馬鹿にするなよ?これでも毎日鍛練して来たんだぞ?」


「おっ?やっと少しは眼に力が戻って来たやんか。さっきまでは死んだ魚みたいな眼ぇしてたで?ほんなら俺に有効打を当てられたら、このまま帰ってやるわ。ただし、俺が勝ったら大人しく鍛えられるんやで?」


「面白ぇ!丁度モヤモヤしてたんだよ。てめぇに全部ぶつけさせてもらうぜ!」


 見事なまでの三下発言をしながらアキトはクロムに殴りかかった。


「こりゃ〜あかんわ…。真正面から馬鹿正直に突っ込んで来るとか、カウンター入れてくださいって言ってるようなもんやぞ…。まぁ今回は手は出さん約束やから見逃したるけどな。」


 そう言いながら紙一重で次々と繰り出される攻撃を回避していく。


「くそっ!わざわざギリギリで避けやがって!」


「おっ?相手との力量の差はわかるみたいやな。ならさっさと諦めてくれるとこっちとしても楽なんやけどな?」


「ふざけんな!絶対に一撃ぶち込んでやる!」


「その一撃を喰らったら、俺の敗けになってまうからなぁ。精々頑張ってくれや。絶対に当たらんけどな。」


 そんな攻防?が1時間程続いたが、ついにアキトの体力が限界に達してきた。


「くそっ!これでも駄目かよ!」


 ここまで攻撃が擦りもしないが、クロムはアキトの成長ぶりに内心驚いていた。


(こりゃあ驚いたわ。今までは実戦なんてして無かったみたいやから、最初は話しにならんかったけど、この短時間で大分マシになってきたやん。こいつの鍛え方は単純で助かるわ。)


 戦いながらアキトの鍛え方を考えていると、クロムは何だか楽しくなって来ている自分に気が付いて、案外退屈しないで済みそうだと内心ワクワクしていた。


(くそっ!今のままじゃ全然当たる気がしねぇ!もっと速く、もっと鋭い攻撃じゃねぇと!)


 ギラギラとした鋭い視線でクロムを観察するが、全く隙が見つからない。


 しばらく膠着状態が続いていたが、辺りが黒雲で暗くなってきた。


「何だか雲行きが怪しなってきたな…。落雷とか洒落にならないんやけど…。おい!いい加減諦めてくれへんか!早よここから移動したいんやけど!ほら!雷鳴っとるし!マジでこれ以上は勘弁してぇな!」


 クロムが割と本気で嫌がっているが、アキトは御構い無しに集中し続けている。


(速くて鋭い攻撃…。それこそ雷みたいに、気が付いたら落ちているぐらいのイメージで…。ん?今何かピンときたというか一瞬できそうな気がしたんだが…?何だ?この感覚は?駄目元でやってみるか?流石に体力がもう限界だしな。)


 そう決めるとアキトは最後の勝負に出た。


「次の攻撃で最後だ!これで決めてやる!」


 そう言いながらアキトが目を瞑り集中し始めると、アキトの雰囲気が変わり、体の周りを青白いスパークが迸り始めた。


「おいおい…ほんまかいな?こりゃ本気でヤバいんとちゃうか…?」


 次の瞬間、アキトが視界から突然消え、目の前に拳が迫っていた。


 ヤバいと思った時にはもう遅く、ダメージを覚悟したが中々衝撃が来ないことを疑問に思いながら眼を開けるとアキトが気絶して倒れていた。


「はぁ〜。ほんまに焦ったで…。体力が限界の状態で、いきなり慣れへん魔力を使ったからやな…。流石に体がもたへんかったか?」


 そう呟きながら冷や汗を拭い、先程の最後の攻撃を思い返す。


「こりゃあ、とんでもない奴を押し付けられたもんやな!中々に鍛え甲斐がありそうやんか!」


 最初とは打って変わって、楽しそうなクロムはアキト担ぎながら移動を始めるのだった。

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