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P220

すべの処理が終わり、五島へと帰ってきた。後から荷物は来るということでバイクで俺は、帰ってきた。

フェリーの中で、不思議な女性に会い。その眼に宿る意味を知った。

いずれ、出会うであろう流れの中で、今はやるべきことをするだけだった。


幸の母親と妹弟は、既に借家に入っていた。俺の両親はほんとによくしてくれていた。幸の妹弟は、いつの間にか、俺の両親になついていた。

孫みたいになっていた。弟は親父と一緒に釣りに行っていたし、妹は母親と買い物に仲良く行っていた。幸の母親は、申し訳なさそうにしていた。島の中なので、すぐ仕事は見つかるわけではなかった。車の免許も持たないので、まずは免許を取ることから始めなければ、この島では大変なのだ。

中村と小林はよくしてくれていた。

俺は、とても感謝した。


家に帰ると、ちょうど幸の妹が来ていた。俺の母親と買い物にでも行ってきたらしい。


「お兄ちゃんお帰り」


「ただいま」


空港で見送ってから、1週間前しか経っていないのにもう、日に焼けていた。

とても、元気そうだった。


「お義母さんは」


「自動車学校に行っているよ」


と俺の母親が答えた。


「美紗ちゃんも雄大ちゃんもとってもいい子ね」


「ああ、いい子だよ」


と俺はしみじみと言った。俺の母親は、そう多くを尋ねなかった。

さすが、長年子供相手をしてきた人間だ。だたし、自分の子供の育て方は間違っていたが。


幸の義父は、その後保釈となる予定だったが、そのまま起訴されて現在も収監中だ。

俺の告訴状が効いたらしい。

しばらくは、出で来ないだろう。


「親父は、どこに行ったの」


「雄大とアジ釣りに行ったよ」


とやれやれという顔で母親は言った。


「車空いてる」


「買い物に行ったから空いてはいるよ」


「借りていい」


「いいよ」


「ありがとう」


「かえってきて、そうそう忙しい子供だね」


といって、母親は車のカギを渡してくれた。


俺は、今時珍しいミッションの軽自動車に乗り込んだ。


空港道路から、冨江のほうに出ってそのまま、玉ノ浦まで走った。旧玉之浦の中心部に入るところから、大瀬崎灯台を目指した。


たぶん、ここに居ると読んでいた。


駐車場には、白いレンタカーのアイミーブの電気自動車が止まっていた。

後は、地元のナンバーの自家用車が何台か止まっていた。


大瀬崎灯台までの山道を歩いていくと、しばらくして視界が開け、海が広がると同時に強い風が吹き付けてきた。

岩に砕ける波の音が、あたりに響いていた。

俺は、黒のワンピース姿を探した。

灯台の白のコントラストに黒い服が浮かんでいた。

やはりいた。

俺の勘に間違いはなかった。

俺は、急いでその女性のもとに向かった。


「また、会いましたね。偶然ですかね」


と俺が声をかけると、女性は返事もせずはるか沖を見ていた。


「ここで、飛び降りると2日目くらい、浮かび上がってきてその後は、海流で鹿児島方面に流されますよ」


と俺は何気なく言った。


女性は、俺をにらみつけた。初対面でそんな話をするような奴に、敵意を抱かない奴なんていない。

でも、俺はあえてそういった。


1Mも無い柵を乗り越えればいつでも確実に死ねる。

死ぬことを覚悟した人間は、必ず死に場所の下見をする。

女性も下見をしているのだ、思ったからすぐにここに来た。

風光明媚な、この場所は映画の撮影に使われると同時に、眼下に広がる海の色は鈍色で海の色をしていない。人をは阻むというか寄せ付けない雰囲気がある。

波濤が岩に砕ける音だと風の音が響いていた。

何人かの観光客がいたが、俺と女性の異様な雰囲気を遠まわしに眺めているようだった。


「関係ないでしょ、あなたには。馬鹿げているは、私が自殺でもしにここに来たと思うの」


「ああ、そう確信している。」


「知ったような口をきかないでよ、身も知らずの人間に言われたくないわ」


女性の目が泳いでいた。言葉は少し震えていた。


「あんたの目は、死人の目だ。この世に未練などない人間の目だ」


「ひとの事情も知らないで、知ったような口はきかないでほしいわ」


女性は吐き捨てるように言うと、俺を残すと灯台から降りて行った。

俺は、すこし距離をおいて女性の後を追った。

やはり、白のアイミーブに乗り込んだ。

電気自動車は、音も無く発進した。俺もその後を追った。

アイミーブは、そのまま旧福江市街まで寄り道せずに戻りそのまま、リゾートホテルのパーキングに止まった。車を降りてきた女性は、そのまま止まっている俺のところまでくると


「いいかげんに、ストカーするのはやめてくれませんか」


とかなりイラついた声で、車の窓を開けた俺に向かっていった。


「とにかく、落ち着てほしいだけ、何を考えているかはしらないけれども少し頭を冷やして考えてほしい、あんたには、大切な人がいないかどうか、自分のために泣いてくれる人がいないかどうか,それだけだから」


と俺は言った。女性は俺の言葉にはっとなったのか、俯いていたが、やがてとぼとぼとホテルの中に入っていった。

俺もホッとて、家までの道のりを車を走らせた。


家に帰ると、親父と弟の雄大がバケツ一杯のアジを釣ってきていた。

雄大もすっかり日に焼けて黒くなっていた。

幸の母親も帰ってきていて、俺の母親と一緒になって外で、アジを捌いていた。

なんとなく、昔からの知り合いのように見えた。

親父はすでにピールを飲んで、顔を真っ赤にしていた。

雄大はすぐに、俺に向かっていかに自分が多くのアジを釣りあげたかを自慢した。

親父が俺に向かってビールを差し出したので受け取ると親父の横に座った。


「いろいろと、幸の家族の件では迷惑をかけた。本当にありがとう。感謝している。」


「いいさ、俺たちも家族が増えて喜んでいる。孫みたいなもんだ。美紗も雄大も。敏樹これがお前が守りたいものなんだろう」


と親父は、美紗と雄大を見ていった。


「ああ、これはさ、幸が残してくれたもの、幸が大切していた家族なんだ」


「そっか、家族か。いい言葉だな、こうやって家族になっていくのならみんなが幸せになれるな」


親父は目を細めていった。

俺は、胸のポケットから携帯型のフォトケースを出して、横に置いた。


「親父、幸も喜んでくれていると思う」


「そうだな、お前にはもったいない嫁だ」


「俺もそう思う」


といってビールを飲んだ。

携帯の呼び出し音が響いて、デイスプレイを見ると中村だった。


「こっち帰ってきてるんだろ」


「ああ、今日ついたよ」


「幸さんお義母さんとかの件で話かあるんで会えないか」


「俺、飲んじまったから車だせない」


「いいよ、迎えに来るから」


「ああ、頼む」


といって電話を切った。しばらくすると中村が車で来たので、俺の両親に出てくると言って中村の車に乗って、近くの喫茶店に入った。


「さっそくだけども、DV保護の手続きは取ってある。住民票を取られても移転先については保護される。」


「いろいろと迷惑かけたな」


と俺は中村に礼を言った。


「それから、仕事な臨職の仕事があったんで何とか確保しておいた。しかし、お前次から次に大胆なことするよな」


と中村は、俺の行動に皮肉をいい、笑った。

その後、いろいろと打ち合わせと決め事を確認したころには、夜の8時を過ぎていた。


「車置いてくるから一杯やるか」


「いいね、俺がおごるから車置いてきなよ」


「港の近くの公園の横に新しい店が出来たから、そこ行ってみないか」


「わかった」


俺は、中村の車で店の近くまで送ってもらって車を降りた時に、何気なく道路の向こう側を見ると、あの女性が、二人の男に両脇を抱えられて車に乗せられるのが見えた。


俺はすぐにまた、中村の車に乗り込み。


「中村、向かいの銀色のセダンを尾行してくれ」


中村は最初訳がわからないようにしていたが、俺が真剣だと気付くと、既に先行している銀色のセダンを距離を置いて尾行した。


セダンは、空港線を走り、鬼岳のふもとにあるリゾートホテルに入っていった。

俺たちも、続けて入るとフロントのある建物から一番遠いコテージの前に車が止まっていた。

俺は、やばい気がして


「中村、後で電話するから、今は帰れ。なんかやばい気がする」


「どうしたんだ。何かあるのか」


「いまはよくわからないがやばい気がする。」


「大丈夫か、お前」


「とにかく、今は帰れ、後で電話するから」


と俺は強く中村にいって帰らせた。

中村は腑に落ちないようだったが、俺の言葉に押されてしぶしぶ帰った。


俺は、しばらくコテージを見張った。


独りの男が出てきた。肩幅の広い体躯のいい男だった。明らかに普通の雰囲気をもっていない男だ。

おそらく、あの女性は拉致られたと思った。

理由は分からなかったが、死にたがるくらい精神の持ち主だ。なにがあってもおかしくはない。

中の様子は、カーテンを下ろされているのでわからなかった。

少なくとも、さっきの拉致の状況から3人以上人間がいて二人は男だと判断できた。


男は、ホテルのフロントある建物から、何か食料のようなものが入った袋両手に持って出てきた。知らないふりを男に近づき、すれ違いざまに後ろに回り背後から首に腕を回し、同時に足を払って倒した。両手に袋を持っていた男は、不意を突かれて倒れた。すぐさま口を塞ぎ、首に回したて腕に力を入れて締め上げ自分頭で相手の頭を押し込み10数えた。男は大人しくなった。

すぐに男を引きずって他のコテージ陰に隠した。

男の持ち物を探ると、信じられないものが出できた。脇のフオルスターには、消音機(サイレンサー)の付いた拳銃が出てきた。ただし、身分を示すものは出てこなかった。プロだと思った。

その辺の人間が持つものじゃない拳銃だった。ずっしりと重い銃把のオートマチックの感覚は、不思議な感覚を俺に思い出させていた。昔 P220を握っていた感覚がよみがえった。

男を男のベルトで手足を締め上げて、口にはハンカチを丸めて詰め込んだ。


しばらくすると、もう一人男が出てきた。俺は後ろから近づくと背中に銃身を当てて、


「後ろ向くなよ、セイフテイは解除してある、撃鉄は起こしているからシングルで打てるぞ」


男は何も言わなかった。男の右手を捩じ上げて左手で脇のけん銃を捨てさせた。俺はそれを拾い上げて背中のベルトに挟んだ。

男にベルトを外させて、自分で両手を縛ら後で、確認に俺はベルトを締め上げて抵抗できないようにした。そして、ドアを開けて中に入った。


部屋の中には、あの女性ともう一人初老の女性がいた。


「あんた 誰」


「べつに、それより その女に何か用」


「あんたには、関係ないし、こんなことして素人が後で困るよ」


と銃を構える俺を見てすこしも怯えずに言い放った。


「その女、どうすんの」


「さあ、この女しだいだよ」


女性は、座り込んでいた。


「あんたなんか、やらかしたん」


女性は答えなった。


「あんた、素人じゃないね」


初老の女は俺に銃を突きつけられている男の姿を見ていった。


「さあね、銃は当たり前に扱えるぜ、ところでその女、どうしたら開放してもらえる」


初老の女は、少し考えて


「こいつの死んだ男が、残したものを貰えば用はない」


俺は


「あんた、何やったんかは、わからないが、渡したほうがいいと思う、この人たちは本気だ」


「分かんないのよ、なにも知らないし預かったのもなんてないのよ。」


と泣き叫んだ。


「あんたに、預けたことは調べがついている」


「ほんとに、預かったものはないわ、だってあの人の本当の名前も知らなかったんだから」


おかしな展開だ。その場の状況からみて、荒事にするつもりはないようで、初老の女は冷静に喋っていた。


「時間をくれないか、俺がそいつから聞き出すから」


と俺は提案した。ほんとに、おかしな提案だ、荒事専門の人間にとっては馬鹿げた取引だ。


「あんたを信じる根拠は」


「この女は、死にたがっている。ついさっきも死に場所の下見をしていたぞ、そっちも死んだら困るだろう。俺も死なれちゃ困る理由か別にある。あんたたちの物が何なのかわからないが、女が死なないようにすれば出てくると思うが」


初老の女は、少し考えて


「分かったわ、でも時間を切らせてもらうわ」


「何時間」


「明日の9時までにない場合は、実力行使にでるわ。明日には応援が来るからあなたも覚悟することね」


「わかった、明日の9時までにはここに持ってくる」


といって、放心している女性の手を取った。


「すまないが、表の車は明日まで貸してもらうよ」


初老の女はやれやれといった風に手を振って、スマートキイを投げて寄越した。


「もう独ひとりの男は、隣のコテージの裏にいるから、気絶しているだけ」


俺は、そう言って女性に車のドアを開けさせて乗り込むと車を走らせた。


タイムリミット10時間の幕開けだった。




ハチャメチャな展開ですが、予定通りです。


ちなみに、P220とは、けん銃の名称です。

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