偶然の出会い
俺は昔から、人の中にいるのが苦痛だった。、そのくせ独りでいることに耐えられない子供だった。いつも自分が注目を浴びていたい。目立ちたがりや。
今、思い出すと きっと両親との絆が薄かったんだろうと思う。普通の家庭とはいわないが、両親はそろっていたし、別に貧乏というわけではなかった。只、両親とは疎遠だった。子供のころから夫婦喧嘩が絶えなかった。父親はいつも午前様だった。母親は、フルタイムで働いていた。気が付けば保育園の迎はいつも最後。幼稚園では喧嘩だかりやってしょっちゅう母親はバナナを持って謝りにいっていた。小学校もごたぶんもれずに喧嘩ばかりして、勉強なんてしなかった。中学は、ご想像のとおり、3年の2学期には、いける高校なんてなかった。
そんなときに、家に少年自衛隊の勧誘がきた。俺は、此処をでて行きたかったもう2度と戻りたくなかった。閉鎖的で、保守的な此処が大嫌いだった。
俺は、親の反対を押し切って、試験をうけて奇跡的に受かった。
陸自に入隊して、4年間の課程修了後に、北とか南とかの普通科連隊で、なんとくなく仕事をしてた。そして、10年をして除隊した。
自衛隊が嫌いわけではなく、どうしようもない、抗えないことが起きて除隊せざるをえなくなってしまった。思えば、あの場所を出れて、両親の支配から逃れればどこでもよかったのかもしれない。
独りなら、なにがしかの仕事で食えた。まっ食えるだけの資格と根性は自衛隊で教えてもらった。決して自衛隊を嫌いになったわけではない。
口で戦争反対だとかいうが、「見知らぬ他人がも、自分に殴りかかったときに手でかばう、そのかばっている手が自衛隊だ」といっている言葉があったが、そうだと思う
自衛隊を除隊してから、俺はただ何となく仕事をして生きていた。相変わらず人とと深く付き合うことはないが、それなのにコミュニケーションは取れていた。
そして、偶然と必然の中で 彼女に幸に出会った。
3月下旬のあの日は、夜勤明けで、天気が良かったが少し肌寒かった。
俺は、通勤用に使っているバイクに乗って、山道を上った。頂上に上ると肌寒く平日の午前中早い時間だったので、人はいなかった。ここからは<今住んでいる町が一望できる。工業地帯である、この街にはいくつもの煙突がたち、ほかの街とは違った景色を見せる。住んでいる人たちは、あまり周りに干渉しないので、俺は助かっている。只 情は熱い。時々ほろっと来ることがある。よそ者に優しい街なのだ。
展望台のベンチに、おれは寝ころんだ。夜勤明けなんで少し眠気がしてうとうとしてきたころ。
「風邪ひきますよ」
という、声が聞こえた
うっすらと目を開けると、目の前に俺をのぞき込んでいる女の子がいた。
長い栗毛色というのだろうか、黒髪ではない長い髪をかき上げながら俺を除きこんでいた。たぶんまだ10代だろう、化粧けがなく少し疲れた顔をしていた。
「ああ そうだね」
俺は体をベンチに起こすと、女子に向かってそういった。
女の子は、俺の隣のベンチに腰掛けて
「すみません 起こしてしまいました。ただ少し寒くなってきたので風邪をひくと大変だと思って起こしました。」
と申し訳なさそうに言った。
俺は、??と思った。初対面でよま喋るなと思った。どう見てもおれは20代後半の老け顔で、イケメンでもない。そんなに背が高いわけでもない。身なりがよく金持ちに見えるわけでもない。
何よりも、女とまともに口をきいたことなどない。
俺は落ち着こうと、ライダージャケットから、たばこを出して口にくわえた。
「ここ 禁煙ですよ」
「えっ!!」
とぃって、俺はたばこを慌ててパッケージに戻した。
「嘘です」
女の子は、笑った
俺はポカーンとしていた。なぜだか、女の子の笑いに違和感を覚えた。
「じや 帰ります。邪魔してすみません」
といって、展望台のスロープを降りて行った。
俺はボーとして、その後ろ姿を見送っていた。