年明け2015年短編小説「時間バクダン」
2015年ということで新年の特別編を書きました。
本当は0時に投稿するつもりだったのですが少し遅れてしまってごめんなさい。
「時間バクダン」
それは、時を止める恐ろしい兵器。
そんな兵器が作られてしまったのだ。
しかし、そんなことを公に発表できるはずがない。
今までずっと隠されてきた。
パンドラの箱のなかにしまわれてきた。
だが、そんなパンドラの箱を誰かが開けてしまったら・・・
2014年12月31日正午
「お昼よ~。一旦大掃除は中断しなさ~い。」
母の声が聞こえる。
この時期はどこの家も大掃除で忙しい。
自分の家も例外ではない。
俺の名前は未来望。
高校3年生だ。そう、受験生だ。
3年前も同じく受験生だったのにまた受験生をやるなんて。
大掃除だって本当はやりたくない。この時間を勉強に使いたい。
だからと言って、自分の部屋は掃除されたくない。
別にいかがわしいものがあるわけではなく、ただそういう年頃だからだ。
仕方なく自分の部屋の掃除をしている。
「ふう~、やっと終わった~。」
時計を見ると17時00分。
紅白まではまだ時間はある。
少し勉強でもするか。
「あけまして・・・おめ・・・でとう・・・。」
はっ!
まずい。
今何時だ。
12月31日20時00分
しまった。紅白もう始まってる。
てか、誰か起こしに来いよ。
ぶつぶつ言いながら階段を下りる。
「あら、あんた遅かったわね。いくら呼んでも降りてこなっ方から先に食べちゃったわよ。」
「寝ちゃったんだよ。」
「そうだったの。全然気づかなかったわ。」
「勉強のほうはどうだ。うまくいきそうか。」
「まあ、ぼちぼち。」
「なんだその自信があるのかないのかはっきりしない返事は。」
こんな他愛のない会話が続き、2015年を迎えると思っていた。
12月31日23時45分
「あぁー、今年ももう終わりか―。いろんなことあったなー。
来年は大学生か。そして気づいたら社会に出て結婚して仕事引退して死ぬのかなー。
人生ってあっという間だよなー。」
そんなことを考えていたら、
「速報です。謎の男が東京のどこかに爆弾を仕掛けた模様。
男は高校3年生という情報が入ってきています。」
「ん?あいつどこかで見たことが・・・
あっ!あいつは同じクラスの丹羽石也じゃねーか。
なんであんなところに?しかも爆弾仕掛けったて。」
「男が何かを話しています」
「みなさん。ごきげんよう。
2014年もあとわずかですね。この年は本当にいろいろなことがありました。
みなさんが集めてくれた負の力がたくさんたまりました。
そのおかげでパンドラの箱を開けることに成功しました。
それは「時間バクダン」です。」
「はぁ?あいつ何言ってんだ。何が時間バクダンだ。
なんか暗い奴だと思ってたけどあんな変な奴だったとわな。」
「みなさんは時間バクダンをご存じではないでしょう。
それは最も恐れられた兵器です。しかし、危険すぎたため発表されなかった。
この兵器は爆発すると時間が止まります。
時間が止まるといっても、本当に時間が止まるだけであって、皆さんは動けます。
つまり、永遠に2014年12月31日であり続けるということです。
そしてそのバクダンは5分後の23時59分に爆発します。
そう、2015年は来ません。アンハッピーニューイヤー。」
2014年12月31日23時54分
今の話が本当なら・・・
何がまずいんだ?
別に2015年が来なくともいいんじゃないのか?
「こりゃーまいったな。まさか盗まれてるとは。」
「父さん、何か知ってるの?」
「知ってるも何もあれを作ったのは俺のグループだからな。」
マジか。父親がそんなすごい人だったとは。
「父さん、もし2015年が来なかったらどうなるの?」
「もし時間バクダンが爆発したら、この世の進化は止まる。
技術、生物、地球、宇宙、ありとあらゆるものの進化が止まる。
そうなったら人生は楽しいか?
終わりがないものの何が楽しいんだ。
終わりがあるからこそ楽しいんだろ。」
そうか、そうだよな。一生このままだなんて嫌だ。
「俺戦うよ。何か止める方法はないの?」
「あるさ。危険な兵器には常に対抗できるものを作っておくのがプロだからな。
ほらよ。これが時間バクダンの場所がわかるレーダーでこっちがそれを止めるスイッチだ。」
「ありがとう。じゃあ、いってくるよ。」
2014年12月31日23時58分
「あった。これが時間バクダンか。」
チッチッチッチッチッチッチ・・・
「残り30秒、何とか間に合ったか。」
スイッチを差し込んで押そうとした瞬間、何かが頬にあたった。
いや、殴られた。
「何やってんだ、お前。確か同じクラスの・・・未来か。」
「お前こそ何やってんだ。こんなもの持ち込んで。」
「2014年を振り返ってみろよ。ろくな年じゃなかっただろ。
だがなそのおかげで俺が生まれたんだ。
俺はブラック14、2014年が生んだ悪魔だ。」
「ブラック14?とうとう頭のねじが外れたか。」
「この姿を見たらわかるだろう。」
「な、なんだよ。その姿。まるで悪魔じゃねーか。」
「言っただろう。俺は2014年が生んだ悪魔だって。
そうこうしているうちに時が来たようだ。」
2014年12月31日23時59分
「父さん、ごめん。あいつを、バクダンを止めれなかった。」
「ふっふっふ、はっはっは、あーっはっはっはっはっはっはっはっは。
これからは俺の時代だ。2015年はもう来ない。この世の進歩はもうない。
この世界に未来はなくなった。俺が最強になったんだ。」
もうだめか。
「のぞむー。」
父さんの声だ。
「やっと追いついた。お前足速いんだな。」
「父さんどうしてここに?」
「お前がバクダンを止めに行ったのに自分は待ってるだけなんて、プロのすることじゃないからな。」
「でも、もうバクダンは爆発しちゃったんだ。もう時は止まった。手遅れだよ。」
「止まったら動かせばいい。あのスイッチを押せば時間は再び動くぞ。」
「そうなの!?
えっ・・・スイッチがない。」
「スイッチならここにあるぞ。」
「お前いつの間に。」
「お前らが仲良く話しているうちに取ってしまったよ。
この計画は誰にも邪魔はさせない。時間を動かしたければ、俺を捕まえてみな。」
2014年12月31日23時59分
「どうしよう。あんな悪魔みたいなやつどうやって捕まえるんだよ。」
「未来パワーだ。」
「未来パワー?何それ。」
「我々未来家に代々伝わる特殊な力だ。時間バクダンもその力を使っている。
望、お前は特にその力がある。それを使って未来を取り戻せ。」
「どうやって使うかもわからないのに無理だよ。」
「それもそうか。じゃあ、教えるからよく聞いておけ。」
2014年12月31日23時59分
「なにやら、負のパワーとは違う嫌な力を感じるな。」
「待たせたな、丹羽。いや、ブラック14.」
「なんだお前。さっきとはまるで別人だな。」
2つのビルの天辺には2つのヒトが。
一人はとても冷たく、この世のすべてを包み込むような闇に覆われている。
もう一人はとても温かく、みんなに希望を与えるような光に包まれている。
「これが、未来パワーか。なんかすっげー安心する。」
「お前がいまさら何をしようと無駄だ。」
「それはやってみないとわからないぜ。」
2014年12月31日23時59分
2つのビルは半壊状態だった。
それほど激しいバトルをしていた。
「お前、なかなかやるな。ただの人間だとは思えないぜ。」
「お前だって人間だろ。」
「俺は本当の悪魔だ。
2014年、それは負のオーラがたくさん出た年だ。
その負のオーラが集まりこの俺、ブラック14という存在ができた。
だが、俺は負で作られたからこの世に居場所はなかった。
俺みたいなやつをもう生み出したくないんだよ。
だから俺は2014年で終わらせるんだ。止めるんだよ、進化を。」
「ふざけるな。確かに今年は負が多かった。
だけどよ、過去を引きずるなよ。未来を見ろよ。
俺が使っている未来パワーは、いわゆる正のパワー。
お前と真逆の存在だ。だが、このパワーは負のパワーにもなりゆる。
未来ってのは正と負があわさったもんだ。いや、未来だけじゃない。
すべてに対してそれは言える。すべてが正しいわけではない。
だけどよ、それが楽しいんじゃないのか?お前もこの世を楽しめよ。」
「楽しむ?ふざけるな。そんな軽い気持ちで俺を止めれるわけがないだろぉぉぉぉ―――――」
2つのビルが崩壊した。
「俺だって、未来は不安だ。来年は大学生だし、このまま時が止まればいいのにって思うことはある。
でもよ、時間は止まっちゃいけないんだ。常に動き続けるものなんだよ。」
「だから、俺が止めてやったんだろ。」
「なぁ、もう止めにしないか。こんなこと。」
「やめない。俺はもうあんな思いを誰かにさせたくない。」
「だったら、俺がもう誰も悲しまなくて済むような未来を作ってみせる。」
「そんなの無理だ。」
「やってみなくちゃわからない。時間はかかるが必ず世界を変えてみせる。
もし無理だったら、その時は時間を止めていい。次は抵抗しない。」
「ほ・・・本当にか?信じても・・・いいのか?」
「ああ、必ずだ。」
ビルの瓦礫の上で1人の男の涙と一緒に闇が流れた。
2015年1月1日00時30分
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」
少し遅れた新年のあいさつ。
家族3人+1人
いつもとは違う1年に、いや未来になりそうだ。
初めて特別編を書きましたが、結構楽しかったです。
これからも短編を書いていきたいなと思っています。




