プロローグ~時の夢~
「ひるむなっ!一匹たりともこの先へ進ませてはならないぞ!この先には姫様たちがいるのだからなっ!全力で守りきれ!」
そう叫んだのは、1人の女剣士。束ねた黒髪が強くなびくほどの強風の中、少女は戦う。剣士というにはまだ幼すぎる、せいぜい14,5と思われるその容姿。甲冑に包まれたその体は、思った以上に華奢だった。そんな体からどうしてそのような力が出るのか不思議なくらい、少女は必死に剣を振り回した。そしてその威厳の溢れた声に、誰もがついていく。目の前に、倒すべき敵が十数対。後ろには、天高く聳え立つ塔。左手には先ほどできた、大きな崖。堕ちたらひとたまりも無いとされる。彼女たちは、どうしてもここを守らねばならない理由があった。
「おいっ。こっちが突破されそうだ!援護頼むっ!」
「わかった!」
少女はさっと踵を返し、剣を振り上げた。
「もう少しだ!押し込めっ!」
少女の言葉に、再度完成が上がり、戦う兵士たちに魂が戻る。それに一安心した少女がもう一度、危険とされている崖のほうを見つめて――――。
「・・・え?」
思わずこぼれだした声。崖の近くには、見慣れた容姿の青年。薄紫の髪が強くなびいたかと思われたその瞬間―――。
青年の体がぐらりと傾いた。その先に待っているものは、真っ暗な空洞―――。
「やっ!ダメっ!」
少女は戦いも忘れて、届くはずの無い手を伸ばした。驚愕の表情で埋め尽くされたその表情がこちらを向いた途端、少女は叫んだ。
「いやあああああああぁぁぁっ!!」