第六章 待ち伏せ大作戦
弘がビー玉を次々と穴に入れてりさに追いつく。
「弘、やるわね!」
「あたり前やん! よっしゃ、逆転すんぞ! 真琴!」
「あほ、余裕のよっちゃんじゃあ! させるか!」
「よし、りさのビー玉を狙ろたろ」
弘がりさのビー玉を狙って、片目をつぶりながらビー玉を弾く。
「あっ、もうちょっとで当たったのに、くそう、りさの餌食や! 次、真琴やし」
「よっしゃ、次で決めるしな、殺し屋じゃ!」
真琴が最後の穴を狙ってビー玉を弾くと、ビー玉は一直線に転がって最後の穴に入った。
「うわっ、弘、真琴のビー玉が最後の穴に入ったわ」
「真琴、殺し屋やし!」
「よっしゃー!」
真琴は右手の拳を高く突き上げて喜ぶと、左手で穴に入ったビー玉を拾い上げて、穴の近くにビー玉を落とした。
「あっ、待ち伏せ大作戦や!」
「弘、何それ?」
「りさ、気をつけなあかんぞ、最後の穴を狙って外したら真琴の餌食やし」
「えっ、そうなの?」
「そうやん、悪魔の待ち伏せ大作戦や!」
「おいで~おいで~早く地獄にいらっしゃーい!」
真琴が前髪を右手でひょいと掻き上げて、桂三枝の真似をする。
「ちくしょう、悪魔め! エロエロエッサイム! エロエロエッサイム! 我は求め訴えたり!」
弘が左手の人差し指を立てて呪文を唱える。
「なんやねんそれ、悪魔君は『エロイムエッサイム!』やんけ」
「なんでもええねん、悪魔封じの呪文やし、メフィースト出てこうへんな」
「呪文が、あかんのとちゃうか」
「そやな、英語やし、あかんのかも知れへんわ」
「何処が英語やねん。『エロイムエッサイム』はイスラエル語や」
「ほんまかいな。よっしゃ、ほな、今度は日本語や! なんまんだぶ! なんまんだぶ!」
「あほちゃう、弘、それ坊さんやん、ここ神社やし! ほんで、よう考えたら、メフィースト召喚してるし、悪魔封じの呪文と違うやん」
「あっそうか!」
真琴が目を細めて弘の顔を見ると、弘は白目をむいて顔をしかめた。
――突然、ギギギィ~と不気味な音がして、山の神様の祠が勝手に開いた。
「うわっ! なんや?」
弘が振り返ると、山の神様の祠から変な爺さんが現れた。
爺さんは仙人姿で、手に杖を持っている。
「弘、逃げろ! ほんまもんの悪魔や!」
二人が「ほんまに出た!」と叫び声を上げて境内を走り回る。
「悪魔じゃ! 悪魔が来たりてホラを吹く!」
爺さんが杖で地面を叩きながら物凄いスピードで二人に近寄って来ると、弘はマジに腰を抜かして立てなくなってしまった。
――突然、ギギギィ~と不気味な音がして、今度は竜の神様の祠が勝手に開いた。
「うわっ、弘! また、なんか出たぞ!」
真琴が竜の神様の祠を指差すと、竜の神様の祠から変なおっさんが現れた。おっさんは着物姿でナマズ髭を生やしていて、四つ足で地面をくねくねと這っている。
「はぁーい、りさ!」
地を這うナマズ髭のおっさんは、いきなり直角に立ち上がると、右手を軽く上げてりさに挨拶をした。
真琴と弘が両手を上げて固まる。
「もう! 山の神様! 竜の神様! 趣味が悪いわね!」
りさが腕を組んで神様達を叱る。
「すまん、すまん、ちょっと脅かしたろうと思ってな」
山の神様はりさに謝ると、竜の神様と顔を見合わせて楽しそうに笑った。




