第十章 必殺千年篭り崩し
りさが二人のビー玉を交互に眺める。
(困ったわね、真琴は穴に篭っているし、弘のビー玉は狙って外したらまずいし)
「あっ、そうだ!」
りさはビー玉をゆっくりと弾いて奥の穴に入れた。
「あっ、りさも千年篭り作戦やん!」
「ふふふ、弘、君子危うきに近寄らずでしょう」
「りさも固いな」
「あたり前田のクラッカーよ!」
「よし、じゃあ俺もや! よっしゃ、入ったし!」
弘もビー玉をゆっくりと弾いて手前の穴に入れた。
奥の穴にりさ、真中の穴に真琴、手前の穴に弘の順でみんなのビー玉が一直線上に並ぶ。
「こらっ! みんな穴に入れたら勝負にならんやないか! 勝負せんかい!」
「ははは、これは面白い展開じゃな」
竜の神様がみんなに野次を飛ばすと、山の神様は愉快げに笑った。
(あれっ、俺の番か、これはまずいな……)
真琴が次の一手に困って、二人のビー玉を交互に眺める。
「よっしゃ! 勝負!」
「えっ、勝負? みんな穴に入って千年篭りなのに、どうやって勝負するの?」
「こうやって勝負するねん。 まずは弘! 覚悟!」
真琴が手前の穴を狙ってビー玉を弾くと、ビー玉は一発で手前の穴に入った。そして、弘のビー玉にカチッと当たった。
「よっしゃー! 成功やし!」
「あっ、まずいかも?」
弘が両手の拳をぎゅっと握って、真琴のビー玉を見つめる。
「何なの? 弘のビー玉に当たっても穴の中じゃん、死なないわよ」
「そうや、だから弘のビー玉を穴の外に出すねん」
真琴はりさにそう答えると、穴からビー玉を取り出して、シャツの裾でビー玉を軽く拭いた。そして、「必殺! 千年篭もり崩し! おりゃー!」と雄叫びを上げて穴の中にビー玉を投げ込んだ。すると、二人のビー玉は激突して真上に跳ね上がり、放物線を描いて穴の近くに落下した。
真琴がビー玉を弾くと、弘のビー玉は勢い良く線の外に弾け飛んだ。
「はい、弘、アウト!」
「わっちゃ! やられた!」
弘がビー玉を見つめてガクッと肩を落とす。
「へぇー、そんな戦法があったんだ」
りさが腕を組んで真琴の戦法に感心する。
「ええぞ、真琴! その調子じゃ!」
「見事な奇襲戦法じゃ、恐れ入った!」
山の神様と竜の神様も真琴の戦法に感心してパチパチと手を叩いた。