第一話 魔術同好会の人達
この物語はフィクションです。
登場する名称は実際の団体などとは全く関係はないはずです。
えぇ、無いったらないんです。
私立蓮邦学園と呼ばれる学園がある。PTAからも受けが良く、世間的に見ても問題は無い学園だ。
しかし、ただ一つだけ問題があるとすれば……、
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「さぁ、今日も楽しい同好会を始めようか!!」
俺の声に反応し、2人がこちらを見た。
1人は男でちょっと気弱そうな雰囲気のある"男"だ。たとえ女っぽい容姿だろうと、彼は男なので注意。
もう1人は女で、とてつもなくお嬢様雰囲気がムンムンとした女の子。気品があるが、わがままで扱いの困るお嬢様だ。
2人はこちらを見た後に、発言をした。
「で、でも薫君……」
「どうした、裕也? もしかして俺に抱かれたくなったか?」
「そういう話じゃないよ!? ぼ、僕らしかいないのに勝手に会議を始めちゃって大丈夫なのかなって……」
「そうですわね。私達だけで会議を始めてしまっては、恵理菜も蜜柑も怒ってしまうのではなくて?」
「いや、とりあえず会議だけでもしておこうとおもってな」
俺の名前は一堂 薫、三年生だ。ちなみに自分で言うのもなんだが、イケメンである。
小学校の頃から告白された回数は数知れず……まったく、嘆かわしいことである。俺は女には興味ないのだ!!
俺の対面の席でオドオドしているのは幼馴染の双葉 裕也。俺の好きな男の子である。
何度も俺のこの気持ちを伝えたというのに、未だにYESはもらえない。イケメンなのに、俺……。
あ、その隣でウェーブかかった髪をかき上げたお嬢様は三枝 弓。高飛車お嬢様である。
後、この同好会には2人女の子がいるが、男が他にいないってどういうことなんだ!?まったく……。
「ところで、薫はこれからどういった会議をなさるつもりだったのですか?」
「フム、我らも三年生となり、生徒会も今年のメンバーが決定している……。そろそろ向こうも行動を起こすのではないかと思ってな」
「つまり、その生徒会の動きを予測しておこうとおっしゃるのですね?」
「うぅ……結局今年も生徒会と争うんだね……」
「当たり前だ。俺達の目標はこの学園をより良くする事であり、その為には生徒会が邪魔となるのだ」
「学園のことは生徒会に任せれば良いって僕は思うんだけど……」
俺はそんな裕也の言葉に歎息をもらした。
「やれやれ、去年一年で分かっていたはずだが、俺達の行動はすべて生徒会に阻止されているんだ!! だからこそ先に生徒会を倒してしまうべきだと考えているんだよ。さらには今年の会長はアイツだしな。用心しておくに越した事はない」
「……サバトや悪魔召喚はさすがに阻止されると思うよ。しかも、今年の生徒会会長は凛ちゃんだろ?」
「その名を私の前で言わないでいただけますか?」
「あ、ご、ごめん……」
「気にするな。全ては学園の平和のための行動だ。この動きを成功させなければ明るい未来は見えない」
「僕には既に明るい未来ってモノが想像出来ないよ」
「見ていればいいさ。そうすれば裕也にも明るい未来と言うものが分かるだろう」
「はぁ…………やっぱり軌道修正は無駄なんだね……」
「何だ? 声が小さくてちょっと聞き取れなかったんだが……何か言ったか?」
「なんでもないよ」
「なんでもないという感じではなかったと思うんだが……まぁ、良い。ソレよりも今は奴らの動きを予測する事が大切だ」
「良いですわ、こういうのは私の出番です」
「よっし、頼んだ」
弓は鞄からノートパソコンを取り出し、早速生徒会の行動を予測する。
俺と裕也はそんな弓を見つめ、ゴクリと喉を鳴らした。やがて数分後……
「できましたわ!!」
「やけに速いな……どれ、ちょっと確認させてもらおうか」
「僕もちょっとだけ心配だから……」
「ふふん、これは中々の出来ですわ!! 存分に見るとよろしいです!」
と言うわけで彼女の作った生徒会の行動予測内容を確認してゆくのだった……。
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「今年も俺達生徒会が発足されたわけだが……俺達はどのような行動を取るべきだと思う?」
生徒会副会長で序列2位、"流血のカイト"が円卓に座りし周りの者達に対してそう聞いた。
それに一番最初に反応したのは生徒会会計で序列4位の"正夢のショーコ"であった。
「ふふふ、去年通りで良いんじゃないかしら? 去年と同様に生徒に良い顔をして、魔術同好会を潰して……」
そんな"正夢のショーコ"に噛み付いたのはもう1人の会計、序列5位の"煉獄のトウマ"であった。
「ケッ!! おれたちゃ生徒会だぜ? そんなに魔術同好会にビびる必要はあるのかねぇ……?」
「あら? 去年のあたし達の魔術同好会との戦いを知らないなんてね……やっぱり新入生に生徒会はおろかな事なのかしら?」
「んだとぉ!?」
「ショーコ、トウマ。すこし黙れ」
「はいはい」「ちっ、分かったよ……」
カイトの一言によって2人はしぶしぶながらも言葉を慎む。この生徒会では序列が上の者の方が権限が強いのだから仕方ない。
次にカイトは書記である序列3位である"寡黙のリョウ"に視線を合わせた。
「さて、リョウはどう思う?」
「…………さてな…………」
特に何かをかたることはせず、リョウは眠るように瞳を閉じた。
「……魔術同好会にだけ……気をつけろ……」
そして助言をするかのようにそう呟いたのだった。
「ふむ……まぁ、お前達の意見は大体分かった。どうされますか? 会長」
と、その一言で全員の視線が会長である1人の少女へと向く。
美しく、その二つ名と同じように凛とした少女……彼女こそが序列1位で生徒会会長である"恐怖のリン"である。
みんなのその視線は恐怖などさまざまな感情が伺える。
円卓という存在は全員が平等であるという事を示しているはずだ。しかし、この生徒会では別の意味を持つ。
それは円卓にいる限りは全員が全員、その位を奪い合う事が出来るという事だ。
つまり、チャンスは全員にあるということがこの円卓の机の意味。
しかし、生徒会長の座を狙っていた全員が彼女には叶わないと、そう痛感させた1人の少女――それこそがリンであった。
「私達から打って出る事はしないわ。しかし、向こうが行動を起こすなら、こちらも容赦はしない……そんな感じで良いと思うよ」
凛とした喋り方、あふれ出る才気、彼女こそが生徒会長にふさわしいと誰もが思わずにはいられない。そんな女の子。
リンがそう自分の意見を言い、全員は円卓を後にした。まだ仕事をするには発足されてから時間が経っていない。あと少しするまでは仕事もなく、簡単な顔合わせで一日が終了するだろう。
そして円卓に最後まで残ったのはリンであった。
「フフ、お兄様……必ずあなたは私が倒します……えぇ、必ずですよ……」
殆どの人が帰った円卓に1人、リンの笑い声が響いていた……。
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「こ、これは…………」
「良い話しだ。さすが中々の出来と言うだけの事はある」
「そうですわよね」
「え、ええええぇぇぇぇぇ?」
俺は素直に感動したというのに、どうやら裕也はそうでもないようだ。
顔を引きつらせて1人悶々としていた。なんだ?裕也はこの物語の一体何が気に食わないというのだろうか。
「何所が気に喰わないというんだ?」
「しいて言えば全部だと思うよ」
「なんですって!? 全部って……ハッ!? 分かりましたわ……貴方は私の溢れんばかりの才気に嫉妬して……!!!」
「いえ、あんまり弓さんに物書きとしての才気は無いかと」
「な、なんですって――――!!!!????」
あー弓さんがなんかどこかの劇画っぽくなってる……。真っ白で瞳が失われたあの感じだ。
どうやら裕也に物書きとしての才能が無いといわれて普通にショックだったようだ。
「まず、生徒会に序列無いし、二つ名がやたら物騒だし、凛ちゃんは薫君の事を"お兄様"なんて呼ばないよ」
「そこはアレですわ。私の特別な力って奴ですわ」
そんなわけないだろ。
「面白そうな事……してるね……」
「おっ、恵理菜じゃないか。今日はいつもよりも少し速いんだな」
「昨日、本を読み終えたから……読む本が無いだけ…………」
と言いながらここ最近読んでいた分厚そうな本が彼女の手元にはある。どうやらココで読み直す気らしい。
いつもの事なのであまり気にする事もない。
「……………………」
っと、自分の席に座って本を読み始めてしまう。彼女、四宝 恵理菜はとにかく読書好きであった。
セミロングの髪に眼鏡をかけた少女。しかし、どこか神秘的で、ページをめくる彼女の姿は何処かのアニメキャラに良く似ていた。
しかし、言っておくと宇宙人ではないのであしからず。
「ふぅ、相変わらず恵理菜さんはマイペースだね……それよりも、恵理菜さんが来てるのに蜜柑ちゃんが来ないなんて珍しいね」
「そうですわね……。いつも恵理菜さんよりも先に来ていますものね」
「…………。……………………。まぁ、きっとHRが長引いているんだろう」
ちょっとしてしまった想像を打ち消すかのように俺は3人(2人?)に向かってそう呟いた。
まさか、アレから数日が経っているのに未だにそんな事……。しかし、とてつもなく不吉な声と軽い悲鳴が隣から聞こえてきた……。
『あ、すいませーん……遅れまし……あ、』
『う、うわぁぁぁぁ!? ちょっ、魔術同好会の1年じゃないのか!?』
『またか!! 魔術同好会の教室は隣!! 俺達にかかわらないでくれぇ!!!』
『ご、ごめんなさい、また間違えちゃいました……(シュン↓』
『いいからさっさと出て行ってくれー!!!』
「「「………………またか……」」」
「……ん、蜜柑が来たようね……」
恵理菜はどうしてそんなに落ち着いていられるのだろうか。
――ガチャリ――
「よ、よかったです……ようやく同好会の教室までこれました……」
「蜜柑、もう入会して数日も経っているというのに未だにこの教室の場所を覚えていないのか」
「はぅぅ!! だ、だってこの場所覚えにくいじゃないですか……」
「そうでもないわよ」
入ってきた小さなツインテールの少女は五街道 蜜柑。
俺達魔術同好会の最後の一人である。ただしかなりドジッ子気質があるようで、数日前から毎回部屋を間違えて怒られている。
ちなみに、本当にこの場所は分かりにくいという事はない。階段の隣だと覚えておけば一発で来れる筈だ。
「ふぅ……もう何も言わん。さっさと席に座ってくれ」
「あのぅ、怒ってます?」
「いや、怒ってなどいないから、そんなに心配そうな顔をするな。早く会議を始めるぞ」
「はいっ、すぐ座ります!!」
っと元気良く席に座った蜜柑。
気がつけば恵理菜も本に栞を挟み、こちらの話しに耳を傾けているようだ。
これでようやく同好会を始める事が出来る。
「さぁ、では魔術同好会を始めようか」
「いつもその一言から始めるんだね」
「私の実力を見せ付けてやりますわ」
「……サーイエッサー!!」
「あ、あれ? 恵理菜先輩のテンションがやたら高くないですか……?」
「……蜜柑、余計なことは気にしなくて良い……」
コレが俺達、魔術同好会である。
風邪ひいて辛いです……。
頭はガンガンするし、吐き気がやばいです。でも、書きます。
そこに物語があるから……グハッ!! バタリ