8/10
8.死神の覚悟
看取りが誰もいない孤独な死に付き合っていると、死神が現れた。
「こんにちは、死神さん。今日はスコーンを焼いてきたんですよ。一緒に食べませんか?」
「お前、死人に悪いとは思わないのか?」
死神はあきれた表情を浮かべている。
「時々うらやましくはなりますね。すべてから解放されるのはどんな気持ちなのでしょうか?」
「さあな」
私は、もうすぐ命が尽きる目の前の病人を見て言った。
「死は、運命ですから。私が悲しんでも、笑っていても、この方には関係ありませんし」
「ずいぶんドライだな」
ふっと笑った死神は、黒い宝石を取り出し死者にかざした。
「先に仕事を終わらせる」
黒い宝石がもやを吸い込み淡く発光すると、死神は「はい、終了」と言った。
死神は宝石をしまい、入口の近くにあるテーブルを見て奥の席に着いた。
「さあ、お茶も持ってきています。一息つきましょう」
死神と向い合せに座ると、私はテーブルの上にスコーンとお茶を並べた。
「お前、良い奴だな」
死神は皮肉な笑みを浮かべている。
「そんなことを言うなんて、具合でも悪いんですか?」
私はすました顔で紅茶を一口飲む。
死神は楽しそうに笑って言った。
「違いないね。俺はいかれちまってるんだろうな」




