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不死身の私と死神  作者: 茜カナコ


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1/10

1.悪魔との契約

 私には不死身の呪いがかけられている。


***


 母さんの寝室のベッドの脇に、父さんと私は立っていた。

「あなた、坊やをお願いします。……私はもう」

 やつれはてた母さんが、ベッドの中で力なく微笑む。

「お前は助かる! そのために俺は……契約を交わしたんだ!」

 父さんが母さんの手を握り、母さんに訴えた。

「契約? ……何を言っているの?」


 母さんは訝し気に父さんを見つめた。

 私も父さんを見上げる。

 父さんは母さんの手を放し、私の方を向いた。

「お前だって、母さんのためなら何でもするだろう?」

 父さんは片膝をついて私の目を覗き込んだ。

 私は何も言わず、素直に頷く。


 その時、足元が震えるような低い声が部屋に響いた。


「よろしい、契約は成立した」

 父の背から黒い影が立ち上がる。黒い影は人のような姿をしていた。ぎらりと光る赤い目が、私を見て三日月形に細められる。黒い影から低い声が発せられると空気が震えた。

「では、その女の命を助けよう。代わりに息子には不死の呪いをかける。永遠の命にとらわれた絶望は、さぞ甘美であろう」

 黒い影は父の背から離れ、私の前にふわりと漂った。一瞬、血の香りがした。


「お前、起き上がってごらん」

 父さんが母さんに言う。

「え? 起き上がれるわけが……」

 母さんはベッドで上体を起こすと、目を瞬かせた。

「体が軽いわ? それに、息苦しさが消えたみたい……?」

 父は母に抱きつくと、深く息を吐いた。

「これでもう、大丈夫だ」

「どういうこと? 貴方、契約って……?」

 父さんは、母さんの問いかけには答えず涙を浮かべたままの表情で私を見た。

「母さんを助けられたんだから、永遠に生きるくらいなんでもないだろう?」

私は微笑んだ。

「母さん、元気になったの? よかった!」


 幼い私は、何もわかっていなかった。



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