無理矢理転生させたのは変態スライムだった
「ようこそ!異世界へ」
目の前のスライムはニコニコして私を見ていた。
「あれ?私さっきまで友達とお喋りを」
「あー、すいませんね勝手に転生させてしまって。おっと、自己紹介が遅くなりました。私はスライムのクルスです!どうぞよろしく!」
「えっ?どういうことですか」
「端的に言いますと、私は貴方に恋をしたのですよ!森星羅さん」
「はぁ?よくわからないですけど」
星羅は困惑した表情を浮かべる。
「えーえー無理もありません。貴方は無理矢理転生させられたのですから」
「あなたが私を無理矢理転生させたってこと?」
「まぁ正確には、ここのお店のシステムで2時間、貴方をこちらに転生してもらったんですよー」
「転生してもらった?」
「はい!ここの店の店員さんに、この中なら誰が良い?って写真を見せられて、そしたらその写真の中に貴方がいたってわけです。一目惚れでしたね。うんうん」
「いや、うんうんじゃなくて!どうしてくれるんですか!せっかく友達と楽しくアイスパーティーしてたのに」
「大丈夫です。そちらの世界の時間は止まってますから」
星羅はむすっとする。
「でここは何ですか?」
星羅は辺りを見回す。
ピンク色の部屋に大きいベッドが一つ置いてある。
「ここはモンスターが人間と触れ合えるお店の一部屋です」
「それで、ここで何をするですか?」
「ここでとりあえず私と一緒にお喋りしましょうよ!さあ、こちらに座って下さい」
星羅は無言でベッドに座る。
何この雰囲気、超嫌なんですけどー!と心の中で星羅は叫んだ。
そして星羅がベッドに座った事を確認するとスライムもベッドに飛び乗ってくる。
「私は貴方と喋ることなんてありません」
「そんな冷たくしないで下さいよー」
ふん!と星羅はそっぽを向く。
「星羅さんはいつも何をしてるんですかー」
「別に、普通の学生ですけど」
「へぇー学生さんなんですね!ちなみに彼氏さんとかいらっしゃるんですかー?」
「いませんよ!」
「そうなんですか!こんなに可愛いのに、そちらの世界の男どもはもったいないことしますねー、もし私がそちらの世界にいたら即行告白しますよ!」
星羅はいくら相手がスライムだからと言っても何だかそう言われると恥ずかしくなる。
「そちらの学校ってどう言う感じなんですー?こっちには魔法学校しかないので知りたいなー」
「普通の学校です。数学とか文学とか色々」
「数学?文学?私にはさらさら分かりませんね。私にも理解できますかー?」
「さぁーどうですかね」
そうして、星羅がベッドから立ちあがろうとした時だった。
「じゃ、そろそろお話はやめてっと、本番に入りましょうか!」
するとスライムは一気に液状になり、星羅の方に飛び付いてくる。
「きゃー!!何すんのよ!」
「いい匂いですねー」
スライムは星羅の胸の辺りにへばり付き、そして時間が経つにつれ、どんどん中に入り込んでくる。
星羅は必死にスライムを剥がそうとするが、スライムの表面が伸びて剥がれない。やがて。
はぁっ、ひんやりとした感覚が星羅を襲う。
やめて!と叫ぶがスライムは離れてくれない。
どうするか迷っているとベッドの脇に線が切れたケーブルが伸びており、星羅はそれを掴みに行く。
切れたケーブルの先端からはパルスが弾けていた。
あっ!やばっと甘い声が漏れる。
スライムはどんどん胸から下へ侵食してく。
星羅は自分も感電する事を覚悟で、スライムに直接、ケーブルを当てる。
そうして、スライムと星羅に高電圧がかかり、二人とも異世界で死亡した。
しかし星羅は無事に現実世界に帰還するのだった。
はぁー、星羅はため息を吐く。
「どうしたの星羅?そんな疲れた顔して」
さっきのは何だったのだろうか。星羅はまだ体に痺れてる感覚と体のゾクゾクが残る。
「いや何でもないよ!それよりアイス食べよ」
そうねーと女子3人でしばらくアイスパーティーが続いた。
次の日。
キーンコーンカーンコーン。学校の朝のチャイムが鳴る。
「えー皆さんに今日は転校生を紹介します。さぁー、入ってきてー」
現れたのは、顔が整った美男子だった。
「初めまして!私クルスと言います!今後とも仲良くしてくれると嬉しいです!」
えっ!星羅は固まる。まさか!
「えーと、君はあそこね。森さんの隣の席」
「はい!わかりました!」
クルスは星羅の隣の席に座る。
そしてニコッと星羅の方に微笑みかけて来て言う。
「やぁー、また会えましたねー」
星羅はまた心の中で叫ぶ。
誰か助けてー!!!
こうして星羅とクルスの青春はスタートするのだった。
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